秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

Y染色体

2755/生命・細胞・遺伝—17。

 生命・細胞・遺伝—17。
 ————
 ヒトの精子と卵子は「生殖細胞」と呼ばれ、「体細胞」と区別される。前者の「生殖細胞」は「減数分裂」によって生まれ、後者の「体細胞」は通常の(二倍化を経る)細胞分裂によって生まれる(「紡錘糸」が出現する「有糸分裂」とも言う)。
 だが、以上のことを、つぎのこととを混同して、あるいは混乱させて、理解してはならない。
 「生殖細胞」である精子または卵子も、それぞれ22本の「常染色体」と1本の「性染色体」をもつ。両者が結合した受精卵は22対44本の「常染色体」と、1対2本の「性染色体」をもつ(その2本がX型とX型の場合は女子、X型とY型の場合は男子に、通常はなる(決定的なのは染色体の型ではなく、「Sry遺伝子」の有無だ))。
 そして、「常染色体」内の遺伝子群と「性染色体」内の遺伝子群の一部は、「体細胞」の形成に関与し、「性染色体」内の遺伝子の一部は「生殖細胞」の形成に関与する。
 --------
 受精卵は1個の細胞だが、新生児として出生するとき、1個の細胞は約38兆個に近い数の細胞へと増殖・分化している。出生直前にはほぼ同数の細胞群が形成されているに違いない。
 また、出生までの種々の段階を区切って、一定時期以降の胎児は(生物学的には)一個の「生物」・「生命体」に準じたものだと理解することは十分に可能だと見られる。
 しかし、学者により、または国家・社会により、この点についての一致はない。これは、<堕胎>・<人工中絶>と言われる行為の許容性の問題に関係する。
 なお、日本の民法3条1項は「私権の享有は、出生に始まる」と規定し、胎児には「自然人」としての権利を認めない(「相続」権にもかかわる)。「出生」の意味・時期について、民法(学)と刑法(学)とで理解が異なる。意味・時期の詳細はともあれ、出生前の胎児は、憲法(学)上も「基本的人権」の享有主体性が否認されるだろう。さらについでに、日本の母体保護法(法律)は妊娠22週未満での「人工妊娠中絶」を一定の条件のもとで認めている(以降は、「犯罪」になる)。
 --------
 <染色体>というのは今日では一種の歴史的・経過的概念であるかもしれず、定説を知らないが、それは「クロマチン」の、細胞分裂期に特化した形状の呼称と言った方がよいようにも見える。「クロマチン」を「染色質」と称する文献もある。
 ここで「クロマチン」とは「ヒストン」と称されるタンパク質とDNAの結合体だ。そして、DNAの2本の「鎖」系がヒストンの周りに約1.7回巻きついてた単位を、「ヌクレオソーム」と言う。
 --------
 各「染色体」が包み込む(くるむ)遺伝子の数は一定していない。2本から成る1番〜22番染色体、そして性染色体で、遺伝子の数は異なる。
 1番〜22番染色体の各「相同染色体」は全くかほとんど同じ形状をしていて、1対2本が向かい合って、アルファベットの「X」のような形になっている。性染色体の「X X型」の場合も同様だ。しかし、「XY型」の場合は左右(上下)2本の不均衡が著しい。従って、2つが向き合ってもアルファベットの「X」文字になり難い。
 いわゆる「Y染色体」は、最も小さい(=短い)染色体だ。したがってまた、内包する遺伝子数も、染色体の中で最も少ない
 確定的な情報ではないが、「Y染色体」がもつ遺伝子数は約100、「X染色体」のそれは約1000程度ともされる。また、「染色体」の大きさ(長さ)は前者は後者の20分の1程度だともされる。「Y染色体」は小さくて、かつ貧弱だと言えなくもない。
 上の大まかな数字を、一つの「核」内の遺伝子数と比較してみよう。
 ヒトゲノム計画終了後の2003年の「公的」な(ラフな)報告書にもとづくと、上の数字は21,000〜25,000だとされる(論者や文献により概数も異なる)。
 染色体23対46本で計算しやすいようにかりに23,000だとしておくと、1対当たりは1000遺伝子、1本当たりは500遺伝子になる。「Y染色体」1本で約100というのは、平均の5分の1にすぎない。それだけ<遺伝子数の少ない>のが「Y染色体」だ。
 --------
 「Y染色体」に対する「X染色体」は、「相同染色体」ではない。父親由来の「性染色体」が「X染色体」の場合は、母親由来の「X染色体」という仲間がいる。この意味で、「Y染色体」は(その上にあるDNAやそのDNAがくるむ遺伝子も)孤立していて、脆弱性を持つ、と言い得るだろう。
 この点を(まだ触れたことのない論点も書かれているが)、S·ムカジー〔訳-田中文〕・遺伝子/下(2018)は、つぎのように叙述している。男として身につまされるので?、長いが引用しておく。
 ++++
 「他のどの染色体ともちがって、Y染色体は『対をなしておらず』、妹染色体も、コピーも持たないため、その染色体上のすべての遺伝子が自力でがんばるしかなかったのだ。
 他のどの染色体でも、突然変異が起きた場合には、対をなす染色体の正常な遺伝子がコピーされることによって修復される。
 だがY染色体の遺伝子は修理したり、修復したり、他の染色体からリコピーしたりすることができない
 バックアップもガイドも存在しないのだ(実際には、Y染色体の遺伝子を修復する独特の内部システムは存在する)。
 Y染色体に突然変異が起きても、情報を回復するメカニズムがないために、Y染色体には、長年のあいだに受けた攻撃による瘢痕がいくつも残っている。
 Y染色体はヒトゲノムの中の最も脆弱な部分なのだ。<改行>
 絶え間ない遺伝的攻撃を受けた結果、Y染色体は何百万年も前に、自らの上に載っている情報を投げ捨てはじめた。
 生存にとって真に価値のある遺伝子はゲノムの別の場所へと移り、そこで安全に保持されるようになった。
 たいして価値のない遺伝子は使われなくなり、引退させられ、取り替えられ、最も基本的な遺伝子だけが残った(…〈略〉…)。
 情報が失われるにつれ、Y染色体自体が縮んでいった。
 突然変異と遺伝子喪失という陰気なサイクルによって少しずつ削られていったのだ。
 Y染色体が全染色体の中でいちばん小さいのは、偶然ではない。
 Y染色体は計画的な退化の犠牲者なのだ(…〈略〉…)。<改行>
 遺伝子という観点からは、この事実は奇妙なパラドックスを示唆している。
 すなわち、ヒトの最も複雑な形質のひとつである性別は複数の遺伝子によってコードされているわけではなく、むしろ、Y染色体上にかなり危なっかしく埋め込まれているひとつの遺伝子が『男性化』の主要な調節因子である可能性が高いということだ。
 この最後の段落を読んだ男性の読者は、どうか心に留めてほしい。
 われわれはかろうじて、今ここにいるのだ。」
 ++++
 ————

2754/八木秀次の<Y染色体論>③。

 八木秀次の<Y染色体>論は、さしあたり結局は、①男子の天皇であれば「Y染色体」を持っている、②「Y染色体」を持っていてこそ天皇であり得る、という二つのことの「堂々めぐり」の議論だ。「男子」だけが天皇になれる、という結論を、「染色体」という科学的?概念で粉飾したものにすぎない。
 しかも、男女の生物的区別にとって決定的であるのは、「染色体」ではなく、「遺伝子」の種別の一つだ(Sry遺伝子と称される)。八木は、染色体、DNA、遺伝子の三つの違いをおそらくは全く知らないし、気にかけてもいないようだ(2005年の書であっても)。
 だが八木も、女性天皇が存在したことを無視できないようで、その理由・背景を「男性天皇」へ中継ぎするための一時的・例外的な存在だった等々と述べている。この主張に対しては、持統から孝謙・称徳までの女性天皇について、秋月瑛二でも十分に反論することができる。
 しかし、<Y染色体>論との関係に限って言うと、女性天皇であれば「Y染色体」を持たなかっただろうから、八木の元来の主張からすると彼女たちは天皇になる資格がなかったはずなのであり、八木の議論はここですでに破綻している。
 そこで八木は、皇位は「男子」ではなく「男系」で継承されてきた、と主張して、論点を少しずらしている。歴史上の女性天皇は全て「男系」だ、つまり「男性天皇」の「血」を引いている、というわけだ。この主張についてもいろいろと書きたいことはある。既述のことだが、皇族であって初めて天皇になれると圧倒的に考えられていた時代(推古まで遡ってよい)に、女性天皇の「血」をたどればいずれかの男性天皇につながる(=「男系」になる)ことは当然ではないか。
 --------
 あらためて、八木秀次の主張を引用しておく。平成年間に書かれているので、天皇は「125代」になっている。
 「125代の皇統は一筋に男系で継承されてきたという事実の重みは強調しても強調しすぎることはあるまい」。
 「125代にわたって、唯一の例外もなく、苦労に苦労を重ねながら一貫して男系で継承されたということは、…、動かしてはならない原理と言うべきものである」。
 これらはまだよい。しかし、つぎのように、125代の初代は「神武天皇」と明記され、「神武天皇の血筋」が話題にされ出すと、私はもう従いていけない。
 「そもそも天皇の天皇たるゆえんは、神武天皇の血を今日に至るまで受け継いでいるということに尽きる」。
 「天皇という存在は完全なる血統原理で成り立っているものであり、この血統原理の本質は初代・神武天皇の血筋を受け継いでいるということに他ならない」。
 以上では、(神武天皇の)「Y染色体」ではなく、その「血」・「血筋」という語が用いられる。「血」とはいったい何のことか。
 この「血」の継承(「血統」・「血筋」)は、つぎのように、より一般化されているようだ。「昔の人たち」とは、どの範囲の人々なのだろうか。
 「昔の人たち」は「科学的な根拠」を知って「男系継承」をしていたのではない。「しかし、農耕民族ゆえの経験上の知恵から種さえ確かならば血統は継承できる、言い換えれば、男系でなければ血を継承できないということを知っていたのではないかと思われる」。
 --------
 上に最後に引用した文章は、つぎのような意味で、じつに興味深く、かつ刮目されるべきものだ。
 染色体や遺伝子、DNA等に関係する生物学・生命科学の文献を素人なりに読んできて、秋月瑛二は、自分の文章で再現しようと試みてきた。
 読んだ中には当然に、「遺伝」に関するものがあった。
 逐一に根拠文献を探さないが、「遺伝」、ここでは子孫への形質等の継承に関して(おそらく欧米を中心に想定して)、つぎのような、古い「説」があった、とされていた。
 ①父親の「血」と母親の「血」が混じり合って(受精卵となって発育して)一定の「子ども」ができる
 ②父親の「種」(精子)が形質等の継承の主役であり、母親は「畑」であって、その母胎内で保護しつつ栄養を与えて発育させ、一定の「子ども」ができる
 他にもいくつかの「仮説」があったと思うが、上の二つは、せいぜい19世紀末までの、<古い>かつ<間違った>考え方として紹介されていた。
 上の最後に記した八木秀次の文章は、この①・②のような、かつての素朴な(そして間違った)理解の仕方を表明しているものではなかろうか(なお、「農耕民族ゆえの経験的知恵」というものの意味も、さっぱり分からない)。
 「種さえ確かならば血統は継承できる」とは、まさに②の考え方を表現しているのではないか。この部分には、きわめて深刻な問題があると考えられる。
 --------
 ヒト=人間の「血液」の重要性の認識が、古くから生殖や「遺伝」についての考え方にも影響を与えた、と見られる。日本に「血統」、「血筋」等の語があり、英語にも「blood line」という言葉がある。
 確かに「血液型」(ABO)のように両親からの「遺伝」の影響が決定的に大きいものある。
 だが、生命科学、ゲノム科学等の発展をふまえて、あいまいな「血」・「血筋」・「血統」・「血族」等の言葉の意味は再検討あるいは厳密化される必要があるだろう。
 遺伝子検査、さらには<ゲノム解析>でもって、遺伝子または「ゲノム」レベルでの親近性から病気・疾患の原因を探ったり、将来の可能性をある確率で予測する、といったことがすでに行われている。「遺伝」に関する科学的知見のつみ重ねは、この数十年ですら、あるいは八木が上のようの書いたこの数十年でこそ、著しいものがある。
 そういう時代に、「血」・「血統」・「血筋」といった言葉を単純幼稚に用いていると見られる、八木秀次の議論の仕方はふさわしいものだろうか。
 ————

2734/八木秀次の<Y染色体論>②。

 「細胞」は大きく「再生系」と「非再生系」に分けられる。
 上の後者は神経細胞、心筋細胞だ。おそらく、「iPS細胞」を使った再生 もあり得ない。爪も肝臓という臓器等も「再生」できるけれども。
 多数の細胞は前者の「再生系」だ。その中に、生殖細胞および生殖関連細胞も含まれる。
 この区別は、「細胞」の「分裂」があるか否かに対応している、と見られる。元の神経細胞が「分裂」によって消失してしまえば(そして新しい神経細胞に取って代わられれば)、各個体に固有の<記憶>や<自我意識>等もまた消滅してしまうのではないか。全ての細胞が「分裂」・増殖するかのような叙述は、厳密なものではない。
 --------
 細胞の「分裂」の態様には、「有糸分裂」(有糸「核分裂」による細胞分裂)と「減数分裂」とがある。おおよそは「紡錘体」(糸)出現の有無によって区別されるとも言われるが、それはともかく、「減数分裂」で生み出されるのは、ヒトについて言うと、精子(男子)と卵子(女子)だ。
 これらを作り出す精巣や卵巣という細胞組織の個々の細胞も、「有糸分裂」(と「分化」)によって作り出される。
 上の区別に対応するのが、おそらく、「体細胞」と「生殖細胞」の区別だ。後者は正確には、精子(男子)と卵子(女子)のみを意味する。
 精子と卵子は「細胞」ではあるが、「体細胞」が23対・46本の「染色体」をもつのに対して、半分の23本の染色体しか持たない。「減数」分裂と称される理由だ。
 精子と卵子が一体となった「受精卵」は、両者から受け継いで、23対・46本の染色体をもつ。
 その受精卵は順調に分化・増殖すれば胎児になり、新生児となり、成長して再び精子(男子)または卵子(女子)を体内で(「減数分裂」によって)作り出す。
 元に戻ると、あるいは上から再出発すると、精子と卵子がもつ23本の「染色体」の中には、1本の「性染色体」がある。残りの22本の「常染色体」は少なくとも直接には生殖細胞の生成に関与しておらず、精巣・卵巣も含む、それ以外の圧倒的多数の諸「体細胞」の生成に関わっている。
 精子がもつ1本の「染色体」はいわゆる「X染色体」か「Y染色体」かのいずれかで、卵子がもつ1本の「染色体」は通常はつねに「X染色体」だ。
 「受精卵」・胎児・新生児・個々の人間がもつ23対・46本の「染色体」のうちの1対・2本の「性染色体」には、したがって、いわゆる「XY型」と「XX型」の違いがあることになる(生物上の「性」の区別)。
 --------
 「染色体」はしかし、それ自体が「体細胞」や「生殖細胞」の生成に関する<情報・設計図>をもってはいない。
 「染色体」は、「DNA」や「遺伝子」を「細胞分裂」の際に整序させて<(一時的に)包み込む>「包装物」のようなものだ。こう理解するようになった。
 子孫への狭い意味での「遺伝」、個体みずからの「存続」の両者に関する<情報・設計図>は、「染色体」にではなく、「DNA」または「遺伝子」が示している。
 さらに、上の後の二つは同義ではなく、より決定的なのは最後の「遺伝子(gene)」だと見られる。
 下の書物によるとだが、「全ゲノム」=「DNA」全体のうち98%は「非コードDNA領域」だ。つまり人間の身体の生成・維持にとって重要なタンパク質を指定する等の情報をもっていない。また、同じく80%は、「遺伝子を含まない領域」だ、とされる。
 この数字は、アメリカを中心にして行われた(日本も少しは関与した)「ヒトゲノム計画(プロジェクト)」が完了した2003年の報告書にもとづくもので、「多くの研究者の予想以上の」ものだったとされる。
 小林武彦・DNAの98%は謎(講談社ブルーバックス、2017)。
 「全ゲノム」とは(ヒト一人についての)「30億塩基対」だとされるが、「塩基」等のDNAの構成要素は、別に触れる。
 ——
 八木秀次・本当に女帝を認めてもいいのか(洋泉社新書、2005)。
 この書物で八木は、「Y染色体」としきりに書きつつ、「DNA」や「遺伝子」という言葉・概念を自らでは(たぶん)いっさい用いていない。これはなぜなのか。
 「ヒトゲノム計画」とその結果について知らなかったとしても容赦できる。しかし、2000年頃にはとっくに、「DNA」や「遺伝子」という言葉・概念があることくらいは知られていただろう。
 八木は、信じ難いことだが、「染色体」=「DNA」=「遺伝子」と単純に理解していたのだろうか。
 問題にされてよいのは、「染色体」ではなく、「遺伝子」だ。
 --------
 他にももちろん、八木の議論の問題点は、多数ある。
 ①継承されるものはもともと全て<複製(コピー)>なので、「まったく同じ」染色体も遺伝子もあり得ない。
 ②「遺伝子」レベルでの<複製(コピー)ミス>(=「変異」)がありうる。
 ③「男系」で継承されてきた、という「科学的」根拠がない(「継体」以降にかぎっても)。子どもの父親は本当は誰なのか、という問題は、現代でも起きる。最もよく知っているのは受胎し、出産した母親だけ、ということはあり得る。また、「神武」天皇は本当に「男性」だったのか(その前に、「実在」性自体の問題はむろんある)。「継体」は本当に「応神」天皇の「Y染色体」を継承しているのか? あくまで若干の例だが、これらを肯定できる、「科学的」・「実証的」根拠はどこにあるのか。
 ④「血」・「血統」・「血筋」といった語が、厳密な意味が不明なままで使われている。まさか、「Y染色体」=「血」、ではないだろう。等々。
 以上は、「女系」または「女性」天皇の歴史上の存在とは直接の関係がない。
 --------
 ついでながら、有性生殖生物である哺乳類の場合のオス(人の場合は男子)という「性」を決定する、正確にはたぶん「精巣」(→精子)を作り出すことのできる、そういう遺伝子は、近年の研究により、「SRY(Sex determining-region Y)遺伝子」と称されるものだと特定されている。そして、「XX型」染色体の中にも稀には、この「SRY遺伝子」をもつものがある、という。
 ——
 

2729/八木秀次の<Y染色体論>。

  生命体(生物)や「細胞」等について勉強(?)していたら、ふと、八木秀次という、かつて私が「あほ」とみなしたグループの一人による、<Y染色体論>というものがあった、と思い出した。
 これは、<神武天皇(男性)と同じY染色体をもって(継承して)いてこそ、「天皇」である資格がある>という議論であるようだ。
 この程度の議論で決着がつくなら、明治新政府下での旧皇室典範制定過程での皇位継承の仕方に関する論議はほとんど不要であり、無益だった。
 また、小林よしのりや高森明勅らがとっくに批判しているようだ。だが、きちんと読んだつもりはないが、まだ本質を衝いていないようにも感じる。
 今回のこの投稿は、予告のようなものだ。
 --------
 八木秀次は「染色体」という言葉・概念を使う。
 すでに最近にこの欄で触れたことがある。すなわち、「染色体」と「遺伝子」、「D NA」、さらに「ゲノム」は、どう違うのか。あるいは、これらの差異に拘泥しても無駄なのか。
 八木は、これらをどう区別しているのだろうか。あるいは、なぜ「染色体」だけを取り上げるのだろうかか。これらは同一のもの(こと)だ、と思っているのだろうか。
 さらに言うと、「Y染色体」なるものは、「染色体」自体の種別の一つなのか。それとも、「Y因子」を含む染色体のことを便宜的にそう称しているのか。
 ----
  これまた少し異なる主題の予告にもなるが、つぎのことにも言及してみたいものだ。
 第一に、例えば<男系を通じてでなければ、天皇・皇室の「血」が伝わらない>と言われることが、たまにではあれ、ある。その場合の「血」とは、いったい何のことか。
 「血統」・「血族」等の語はまだ生きており、「血がつながる」とか「血が濃い」とかの表現も十分に通用している。
 だが、いまだにかなり多くの人々に、世代間(親から子への)継承に関するじつは単純で幼稚な<錯覚>があるようにも、私には感じられる。
 第二に、上に関連するが、<獲得形質は遺伝しない>という、遺伝学・生物学上の「公理」となっている「事実」だ。つまり、親からの継承の意味での「遺伝」または「遺伝子」に比べて少なくとも同等に子どもにとって重要なのは、「環境」ではないだろうか。幼年期には、学校等の<社会>環境のほかに、<家庭>環境がきわめて重要になることがある。
 「血」。「(生後の)獲得形質は遺伝しない」。興味深い主題が、まだ多く存在している。
 ————
ギャラリー
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
  • 2564/O.ファイジズ・NEP/新経済政策④。
  • 2546/A.アプルボーム著(2017)-ウクライナのHolodomor③。
  • 2488/R・パイプスの自伝(2003年)④。
  • 2422/F.フュレ、うそ・熱情・幻想(英訳2014)④。
  • 2400/L·コワコフスキ・Modernity—第一章④。
  • 2385/L・コワコフスキ「退屈について」(1999)②。
  • 2354/音・音楽・音響⑤—ロシアの歌「つる(Zhuravli)」。
  • 2333/Orlando Figes·人民の悲劇(1996)・第16章第1節③。
  • 2333/Orlando Figes·人民の悲劇(1996)・第16章第1節③。
  • 2320/レフとスヴェトラーナ27—第7章③。
  • 2317/J. Brahms, Hungarian Dances,No.4。
  • 2317/J. Brahms, Hungarian Dances,No.4。
  • 2309/Itzhak Perlman plays ‘A Jewish Mother’.
  • 2309/Itzhak Perlman plays ‘A Jewish Mother’.
  • 2305/レフとスヴェトラーナ24—第6章④。
  • 2305/レフとスヴェトラーナ24—第6章④。
  • 2293/レフとスヴェトラーナ18—第5章①。
  • 2293/レフとスヴェトラーナ18—第5章①。
  • 2286/辻井伸行・EXILE ATSUSHI 「それでも、生きてゆく」。
  • 2286/辻井伸行・EXILE ATSUSHI 「それでも、生きてゆく」。
  • 2283/レフとスヴェトラーナ・序言(Orlando Figes 著)。
  • 2283/レフとスヴェトラーナ・序言(Orlando Figes 著)。
  • 2277/「わたし」とは何か(10)。
  • 2230/L・コワコフスキ著第一巻第6章②・第2節①。
  • 2222/L・Engelstein, Russia in Flames(2018)第6部第2章第1節。
  • 2222/L・Engelstein, Russia in Flames(2018)第6部第2章第1節。
  • 2203/レフとスヴェトラーナ12-第3章④。
  • 2203/レフとスヴェトラーナ12-第3章④。
  • 2179/R・パイプス・ロシア革命第12章第1節。
  • 2152/新谷尚紀・神様に秘められた日本史の謎(2015)と櫻井よしこ。
  • 2152/新谷尚紀・神様に秘められた日本史の謎(2015)と櫻井よしこ。
  • 2151/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史15①。
  • 2151/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史15①。
  • 2151/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史15①。
  • 2151/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史15①。
  • 2136/京都の神社-所功・京都の三大祭(1996)。
  • 2136/京都の神社-所功・京都の三大祭(1996)。
  • 2118/宝篋印塔・浅井氏三代の墓。
  • 2118/宝篋印塔・浅井氏三代の墓。
  • 2118/宝篋印塔・浅井氏三代の墓。
  • 2118/宝篋印塔・浅井氏三代の墓。
  • 2102/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史11①。
  • 2102/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史11①。
  • 2102/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史11①。
  • 2102/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史11①。
  • 2101/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史10。
  • 2101/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史10。
  • 2098/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史08。
  • 2098/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史08。
  • 2098/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史08。
アーカイブ
記事検索
カテゴリー