秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

RNA

2752/生命・細胞・遺伝—16。

 重要なことなので、再記(復習)から始めよう。
 DNAの最小単位はヌクレオチドで、これは「リン酸」・「五炭」・「塩基」の三つで成り、「リン酸」を<のり>のような接着体として上下(または左右)のヌクレオチドとつながる。「塩基」は、別のDNA分体(別の一本の「鎖」糸)の「塩基」(「相補塩基」)と結合して「塩基対」になる。この塩基対が、<縄ばしご>の足を乗せる<踏み板(縄)>だ。
 「塩基」には4種があり(A,T,G,C)、各塩基は一つの種類しか持たない。「塩基対」になる別の塩基の種類は、最初の塩基の種類に応じて、特定のものに決まっている。すなわち、A-T、G-C(T-A、C-G)の組合せしかない。
 ヌクレオチドが上下(左右)につながって、「塩基配列」ができる。2個つながると2個の「塩基配列」、3個つながると3個の「塩基配列」だ。
 「塩基配列」の並び方によって、特定の種類の「アミノ酸」の作成(・生成)が指示される。
 アミノ酸には、20種類がある。3個の「塩基配列」によって、アミノ酸の種類が特定できる。2個だけだと、(塩基の)4種×4種で、16種(のアミノ酸)しか特定できないからだ。3個だと、4種×4種×4種で、64種のアミノ酸を特定することができる。一定の配列の3個の塩基の組合せを、「コドン」と言う。
 「コドン」が上下(左右)に多数つながって、多様なアミノ酸の複雑な結合体としての一定の「タンパク質」の作成(・生成)が指示される。
 指示をする(仕様書・設計図を書く)、多数のコドン(>ヌクレオチド)の始まりと終わりは決まっている(始まりはA-T-G、終わりはT-A-A、T-A-G、T-G-Aのいずれか)。コドンの数は多様で、特定されていない。
 一定のタンパク質の生成を指示する(または「タンパク質をコードする」)、多数のコドンから成る一つの単位を「遺伝子」と称してよい。但し、この「遺伝子」という概念には、多数のコドンを形成する塩基に対応する、それの「相補塩基」も含められる、と見られる。2本めの「鎖」糸の「塩基」(相補塩基)は、もともとの「塩基」の<予備>だと考えられている。「鎖」糸が2本あってこそ、<縄ばしご>の左右の、手で握る部分ができる。
 なお、一つの「塩基」とその「相補塩基」、ひいては二本の「鎖」糸について、一方は父親由来、片方は母親由来と<堂々と活字に>している情報がネット上にあるが、誤り。父親と母親由来をそれぞれについて語ってよいのは、一つの「染色体」とその「相同染色体」だ。
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 「コドン」は塩基(配列)に着目しているので、厳密には、「リン酸」、「五炭糖」という、塩基を支えて保護するヌクレオチドのその他の要素を含まない。
 2本の「鎖」糸(ビーズがつながった糸)の中には多数のヌクレオチド全体が含まれており、それは「ヒストン」と称されるタンパク質の周りに、左回りの<らせん状に>巻きついている。1.7回〜2回巻きついた一つの単位を「ヌクレオソーム」と言う。正確に言うと、いわば接着剤である「リン酸」は含まれないようだ。
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 DNAとは、大まかには、上の「ヌクレオソーム」の総体だと言える。したがって、「コドン」、多数の塩基(塩基対)を含んでいる。(これは、細胞「分裂」時には、「染色体」として顕現する。)
 しかし、「遺伝子」をあくまで(これが現在も支配的だが)一定の「タンパク質をコードする」情報をもつものと理解すると、DNA=「遺伝子」の総体、ではない。
 それどころか、2000年代以降、DNAの98パーセント(ときに98.5%)は「遺伝子」たる情報を持たない、とされている。「非コードDNA(領域)」とも言われる。より正確にはつぎのとおり。
 DNAの約80パーセントは「遺伝子」を含まない領域が占める。「遺伝子」の「外」または「間」がある。
 さらに、いちおうは「遺伝子」たる情報を含む領域であっても、「タンパク質をコード」している部分とそうでない部分とがある。前者を「エクソン」(構造配列)、後者を「イントロン」(介在配列)と呼ぶ。イントロンの存在は1980年以降に明らかになった、とされる。これは、遺伝子の「内部」にある、<タンパク質非コード領域>だ。全生物ではないが、ほとんどの生物、「核」を持つ全ての生物の「遺伝子」に、この部分がある。
 「エクソン」部分に限ると、これはDNA全体の2パーセント(あるいは1.5%)を占めるにすぎない。
 なお、「遺伝子」につき、以下の叙述がある。「機能発現」の「調節」・「制御」にすでに論及があるが、代表的だろうと思うので、引用する。
 「遺伝子とは、一つの機能を持った遺伝情報の単位である、と定義することができる。
 ここに言う一つの機能とは、一般的にタンパク質またはRNAの構造を決めることである。
 遺伝子はエクソンとイントロンとから成り立っている…。
 この他に遺伝子の転写や翻訳の機能発現を調節する制御配列が、エクソンの上流(転写のスタートする位置)、下流(転写が終了する位置)、またはイントロンの中に存在する。
 制御配列は、この遺伝子が、いつどこで発現されるべきかについて、他の遺伝子からの指令を伝える調節物質が認識する領域である。〔一文、略〕
 このような制御配列、エクソンおよびイントロンを含めて、一つの遺伝情報の単位、すなわち遺伝子が作られているのである。」
 本庶佑・ゲノムが語る生命像—現代人のための最新·生命科学入門(2013)
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 <DNA→(転写)→mRNA→(翻訳)→タンパク質>が「セントラル·ドグマ」と称されるのは、ヒトあるいは哺乳類あるいは脊椎動物等の多くの生物に共通する「遺伝」情報の伝搬方法だからではない。「細菌」(バクテリア)を含む「原核細胞」あるいは「単細胞」生物にも共通する、生命体の「中心原理」であるからだ。ヒトも細菌も本質的には変わりがない、とも言える。どちらも「生命」だからだ。
 「真核生物」と細菌等の「原核細胞」が異なるのは、「核」あるいは「核膜」の有無、DNAの形状等だ。
 ヒトが持つとされる38兆個(または60兆個)の全細胞に「核」があって、上のシステムが配備されている。その「核」内にそれぞれ、約2万1000個〜2万4000個の「遺伝子」がある。その各「遺伝子」が含む塩基配列・塩基対の数は、…。これらの掛け算の結果=一個体・人体内での総数を計算してみる気にもなれない。
 さて、DNAが持つ情報等の全てがmRNAに「転写」(transcription)されるのだろうか。かつてはほとんど全てがコピーされるのだろうと推測されていた。つまり、DNAのほとんどは直接に「タンパク質」形成に関与しているのだろうと見られていた。
 2003年のヒトゲノム計画終了後には、ごく簡単には、つぎのように考えられているようだ。
 「転写」されるのは、まずは、エクソンの他にイントロン部分も含む、「遺伝子」領域だけだ。これによって生まれるものを「mRNA前駆体」(pre-mRNA)と呼ぶ。
 ついで、「mRNA前駆体」が核内から細胞質に出ていく過程で、「タンパク質になるのに無関係な」イントロン部分が除去され、エクソンのみの純粋な「mRNA」になる。これが、細胞質内にある「リボソーム」によって「翻訳」(translation)されることになる。これは、塩基配列という「暗号」の「解読」によって行われる、一定のタンパク質の生成のことだ。
 上にいう、イントロン部分の除去のことを、「スプライシング」(splicing)と言う。これによって、内部で「分断」されていた一つの遺伝子は一つづきになる。「分断」されていたエクソンが「連結」される、とも言い得る。このような過程は、全ての真核生物で生じる、ともされている。
 「遺伝」にとって必要な部分だけの、無駄のないかつ「正確」なコピーを目的としていることは明らかだろう。もっとも、いくつかの例外等の留意点に関する付言が必要であるようなのだが、立ち入らない。
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 さらに、なぜ、「必要」ではない部分をDNAは抱え込んでいるのか、も不思議なことだ。この点についての回答は、上に引用した本庶の叙述の中にある。すなわち、「遺伝子の転写や翻訳の機能発現を調節する制御配列」が、エクソンの末端部分以外に、イントロンの中にもある。これは、遺伝子が「いつどこで」発現すべきかを「調節」する機能を持つ。
 このような機能は、決して「不必要」でも「無駄」でもない。むしろ決定的に重要だとも言える。エクソンが示すのは「設計図」・「仕様書」あるいは「レシピ」なので、実際にいつどのように「実行する」かの指令は別に必要だと考えられるからだ。
 もう一つ、エクソン部分以外の領域の意味を「遺伝子」の「外」・「間」の(DNAの約80%を占めるという)部分も含めて考えると、つぎの可能性があるだろう。
 すなわち、現在はあるいはホモ・サピエンス誕生の時点ですでに「無駄」になっている、生物の<進化>の「名残り」または「痕跡」が、現在でもあるいはホモ・サピエンスになって以降も、DNAの中にとどめられている。
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2738/生命・細胞・遺伝—10。

 細胞核内のDNAの最小単位のヌクレオチドは、リン酸、糖(五炭糖)、塩基で成る。
 五角形をしている五炭糖に5つある炭糖には、1‘〜5’の番号が振られている。
 数字の順はあくまで便宜的になのだろうが、リン酸(H3PO4)とまず結合するのは、五炭糖(の炭素)のうちの「5‘」だ。
 一方で、五炭糖(の炭素)のうちの「1’」が、塩基と結合する。
 したがって、ヌクレオチドは、五炭糖を真ん中にして、 <リン酸—糖(五炭糖)—塩基>という結合の仕方をしている、
 なお、五炭糖のうちの「2‘」だけがDNAとRNAで異なり、前者は水酸基(O)を持たないが(全体として→「デオキシリボース」)、後者は持つ(全体として→「リボース」)。日本語では「デオキシリボ核酸」等の語になって「核酸」が付いているのは、リン酸が「核」内にある「酸」だからだ。英語は、deoxiribonucleic acid。
 塩基(base)には4種がある。Adenine(アデニン、A)、Thymine(チミン、T)、Guanine(グアニン、G)、Cytosine(シトシン、C)だ。簡単にA、T、G、Cと称され、塩基(配列)の「文字情報」と言われたりされるが、むろん、塩基の表面にこれらの文字が刻印されているのではない。
 なお、RNAでは、上のうちTだけはUrasil(ウラシル、U)に代わる。
 DNA内の塩基にはプリン塩基とピリミジン塩基の二つがある。上のAとGはプリン塩基で、上のCとT(そしてRNAの場合のU)はピリミジン塩基だ。
 この塩基部分は、生物や細胞にとって必要不可欠の「情報」・「設計図」の作成に関係する<本体>だと言える。
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 一個のヌクレオチドだけでは「縄ばしご」、遺伝子あるいはDNAにならない。
 第一に、便宜的な言い方をすると、「下」へ延びなければならない。タテの「握り縄」を長くしなければならない。
 この場合、上のヌクレオチドの五炭糖(の炭素現象)のうちの「3‘」が「下」にある別のヌクレオチドの「リン酸」と結合し、さらに「下」のヌクレオチドへと繋がっていく。
 それぞれの「リン酸」には最初のものとは異なるそれぞれの五炭糖が結合している。また、その五炭糖の「1’」にそれぞれの「塩基」が接合している。
 大まかに言えば、ヌクレオチドが鎖のように上から下へと繋がっている。「リン酸」を介して接合しているのだが、二つの「リン酸」を繋ぐのは五炭糖の「5‘」または「3’」で、この二つだけを上から順に見ると、「5‘」→「3’」→「5‘」→「3’」→「5‘」…という順になる。また、それぞれのヌクレオチドに「塩基」を接合するのは、つねに、それぞれの五炭糖の「1’」だ。
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 第二に、「横」へと、広がらなければならない。
 この場合、「踏み板」(踏み縄)にあたる「塩基」を、<隣>にあるヌクレオチドの「塩基」と結合させることになる。あるいは、<噛み合わせる>ことになる。
 ここで重要なこと、不思議なことがある。
 塩基には上記のとおり4種類があるが、「隣」のヌクレオチドの塩基ののうち、接合する、あるいは「噛み合う」種類があらかじめ(不思議なことに)決まっている。
 すなわち、A-T、T-A、G-C、C-G、という4種の対応関係のみがある(4文字のあり得る組み合わせは4の4乗だが)。左右のセットで考えると、2種類しかない。
 なぜこうなっているかというと、A-T、G-Cの組み合せが必要なエネルギーが少なくて済む、という理由らしい。また、別の塩基と接合するに際してに必要な「水素結合」の個数(本数)がAとTの場合は2、GとCの場合は3と違っている、と指摘されている。
 こうして「隣の」ヌクレオチドの塩基との接合・結合(あるいは「対合」)によって、一つの「塩基」は一つの「塩基対」になる。「対合」する塩基のことを、「相補塩基」とも言う。
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 一つのヌクレオチドが「鎖」状になって「下」に繋がっていくと、塩基もまた、種類を変えながら、ずっと続いていく。
 この塩基の並び方を「塩基配列」という。片方だけではなく双方があって塩基対が出来上がっているとした場合も、やはり「塩基配列」と言ってよいのかもしれない。
 重要でかつ不思議なことは、「相補」関係にある、向かい合った、または隣り合ったヌクレオチドの塩基の配列の仕方には、一定の<法則>があることだ。
 すなわち、片方の塩基配列6個分がかりに「CATTGA」だったとすると、「相補塩基」の塩基配列は必ず「GTAACT」になっている。
 これは上記の、A-T、G-Cの対応関係しかない、ということの延長の説明になるだろう。6個はつぎのような相補塩基と対の配列に変わる。
 C→G、A→T、T→A、T→A、G→C、A→T。こうして、「GTAACT」になる。
 また、別の話題になるが、「相補」関係にあるヌクレオチド、つまり、リン酸・糖・塩基の繋がり方は、五炭糖(の炭素)の位置について上に述べた片方のそれとは逆、すなわち、「3‘」→「5’」→「3‘」→「5’」→「3‘」…になっている、という。不思議で、絶妙なことだ。
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 さて、生命に関する「情報」・「設計図」はリン酸や糖(五炭糖)の部分ではなく、A・T・G・Cという「塩基」(または塩基対)に記載されている。正確には、これらの塩基の独特で複雑な「配列」関係によって示されている。
 それらの<情報>は、DNAからRNAへ「転写」され、そのRNAが細胞質内のリボソームにより「翻訳・読解」されて、その指示情報に従って新たに「タンパク質」が作られる(ホモ・サピエンスのみならず、細菌・バクテリアを含む全ての生物に共通する、セントラル・ドグマ)。
 従って、生命に関する「情報」はタンパク質作りのための「設計図」であり、「レシピ」である、と言って差し支えない。
 そのタンパク質は多様なもので、諸種の「アミノ酸」がつながり合ったものだ。
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 アミノ酸は、20種類がある、とされる。それらが組み合わさって、一定のタンパク質が生まれる。
 塩基には4種類があるが、そのうち2種類を使っただけでは、正確には2列の塩基配列を使っただけでは、16種の異なるアミノ酸しか指定することができない。AA、AG、AC、…と、4×4=16が限界だ。
 そこで、塩基は、3種のそれで、一つの性格のアミノ酸を指定している、とされている。
 GGA、CTT等々の組み合わせ、または配列の違いで、4の3乗の64とおりの異なるアミノ酸を指定することができる。しかも、64と20の間には相当の余裕がまだあるので、複数の三「文字」の組み合わせを一つのアミノ酸のために利用することができる。
 4種の塩基のうち3つの配列はアミノ酸の、ひいてはタンパク質の生成のための「暗号」のようなもので、塩基3個の配列は「コドン」(codon)と称される。
 64種類の「コドン」がいかなるアミノ酸に対応しているかを一覧できる表は、<コドンの暗号表>とも呼ばれる。
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 塩基配列はしかしDNAの長さの範囲内で長々と続く可能性があるので、生命の維持または狭義の「遺伝」に関する「情報」として、何らかの一かたまりの区別が必要になってくるものと思われる。「複製」と「分化」を繰り返して維持されたり生成されたりする器官や臓器等々には違いがあるからだ。またそもそも、塩基配列の始めと終わりが明確でないと、作成が指示されるアミノ酸の並び方、ひいてはタンパク質を特定することができない。
 そこで、ATG(メチオニンというアミノ酸のためのコドン)を始まりと見なすことになっている、とされる。一方で、終わりを指定する「コドン」には、TAA、TAG、TGAの3つがある、とされる。
 以上の「コドン」以下は、主として森和俊・細胞の中の分子生物学—最新·生物科学入門(講談社ブルーバックス、2016)による。
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 上の一区切りまたは一かたまりは、秋月には一個の「遺伝子」に該当するように見える。当然に、この点でも、一個の遺伝子はDNA全体の一部にすぎない。
 「ヌクレオチドが多数つながりあったものは、化学的にはDNA(デオキシリボ核酸)と呼ばれる」としたあと、続けてこう書く文献もある。
 「したがって、一つの遺伝子は、ある長さをもったDNA(あるいはDNAの一断片)と言ってもよい」。
 小林朋道・利己的遺伝子から見た人間(PHP研究所、2012)
 また、「非コードDNA」という概念があるように、DNAが全て「遺伝」情報を保持しているわけではない。「DNAの98%が謎」という書名の文献もある。もっとも、正確には、DNAの全ての部分が「情報」・「設計図」を〈直接に〉示しているわけではない、〈間接的に〉、つまり設計図どおりの作成に移るべきか否か、いつ始めるのか、いわゆる遺伝子の<発現>をさせるか否か、といった重要問題に関与している可能性が高い、と言うべきだろう。むろん、〈無駄な〉部分もある。さらに、のちに触れる。
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 以上のDNAの構造に関する叙述またはノートに、「染色体」という言葉・概念は全く必要がない。
 染色体は<細胞分裂>(これによって「核」も「DNA」も(遺伝子群も)「分裂」するのだが)の過程で出現する構造体にすぎない。但し、核膜の一部または内面にあらかじめ「染色質」が用意されている、とされる。
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2736/生命・細胞・遺伝—09。

 DNAの構造(・形態)を理解しようとするとき、まずは木製のハシゴを思い浮かべるとよいかもしれない。
 登り降りするために足を乗せる横棒・横板の部分が「塩基」(正確には「塩基対」)だ。左右の手で握る部分は、「糖」と「リン酸」が繋がってできている。
 だが、「木製のハシゴ」では<二重らせん>構造を想像することが難しいかもしれない。左右の握り棒部分を強く「ねじって」、<らせん>階段のようにしなければならないからだ
 だから、勝手に、<縄ばしご>の方が近い、と秋月は思っている。「縄」でできたハシゴならば、左右にあるタテの縄を容易に「ねじって」、<らせん>状にすることができるだろう。
 左右の握り縄の部分は、長い「鎖」とか、長い「糸」と表現されることが多い。
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 DNA(とRNA)の最小の構成単位は、「ヌクレオチド」(nucleotide)というらしい。この「ヌクレオチド」は、一個ずつの「リン酸」と「糖」(正確には「五炭糖」)と—4種ある「塩基」のうちの—1種の「塩基」で成る。DNAの「糖」は「デオキシリボース」だ(だから、DNA=「デオキシリボ核酸」という)。RNA(リボ核酸)は「リボース」なので、DNAと異なる。
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 ヌクレオチドは、「縄ばしご」のごく一部だ。横棒部分の全体の、半分しか持たない。したがって、これだけでは、「はしご」にならない。また、左右にある握り縄部分のうちのごく短い一部分にすぎず、上記の通り計2個のつらなった分子構造しか持たない。
 ではなぜ、横棒=横板部分がもう半分くっついて(逆の形で「相補的に」)結合して、左右に一対の握り棒(握り縄)になっているのだろうか。一対の(計2種の)塩基を「塩基対」と言う。
 もともとタテの(ヌクレオチドの)長さが短いと生命体にとって必要な「情報」を記載する(正確には「情報」を記載する「塩基」部分を保持する)ことができないから、左右いずれかの「リン酸基」・「糖」部分は長く繋がって、「鎖」状にまたは長い「糸」状になっている。
 その左右いずれかの部分を長くすれば、塩基がもつ<情報>を十分に支えることができるのではないか。
 この問題について、DNAの<情報>がRNAに「転写」されるときに「コピーミス」が生じ得るので、その場合に備えて、もう一本(もう一鎖)、元来は「同じ」はずの「予備」を用意しているのだ、との説明がある。
 田口善弘・生命はデジタルでできている—情報から見た新しい生命像—(講談社ブルーバックス、2020)
 (なお、この一対は、有性生殖生物の場合の雌雄という一対に由来するのでは全くない。後者に由来するのは一対で成る<染色体>だ。)
 なるほど、無駄になるかもしれないのに丁寧なことだ、と思う。これに比べて、RNAは、「ヌクレオチド」が最小単位であることは同じだが、「はしご」状(二本の長い鎖の「らせん」状)ではなく、一本の長い「鎖」・「糸」なのだ。
 しかし、さらに疑うと、「予備」もまた「ミス」を含んでいる可能性が全くないとは言えないだろう。そうすると、「三本め」もまた用意しておかなければならないのではないか。
 日本の神社にたいていはある鳥居には一本の柱ではなく、左右一対の二本の柱がある(それらの上に「笠木」がある)。そうであってこそ、「安定」している(また、「美しい」のかもしれない)。
 だが、ごく稀には、二本の柱の中央の奥にもう一本柱があって、三本の柱をつないでいる鳥居がある(三柱鳥居。例、京都市の木嶋坐天照御魂神社)。上から見ると、正三角形の形状をしているはずだ。二本よりも、三本の方が「安定」性が(鳥居の場合はきわめて)高いだろう。
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 こんな雑考をしていると、興味深い記述を思い出した。すなわち、DNAの「二重らせん」構造を解明したJ·ワトソンとF·クリックは(他の一研究者グループも)、当初は「二重」と想定しておらず、「三重」と予想した時期もあったという。らせん状にヒストンに巻き付くのは何本と決まっているわけではないので、三本でも四本でもあり得ることだ。なお、他にも想定違いはあった(塩基がくっつく方向等)が、それらを打ち破ったのが、ロザリンド·フランクリンによる「写真」だったという。
 S·ムカジー=田中文訳・遺伝子—親愛なる人類史—/上(2021)
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 生命体(生物)にとって最も基礎的な数字は、2、次いで4であって、3ではないような気がする。多言はしない。人間に身近な「音楽」についても。
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 そんな数字マニアックなことよりも、以下のことの方が、はるかに重要なことだろう。
 細菌(バクテリア)を含む全ての生物にDNAがあり(ウイルスの中にもDNAを持つものがある、という)、「ヌクレオチド」を(「分子」レベルでの)共通する最小単位にしている。細菌(バクテリア)もホモ・サピエンス=人類も同じだ。
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2725/生命・細胞・遺伝—02。

 ①宇宙—②地球—③生命体(生物)—④細胞—⑤遺伝子・分子—⑥素粒子
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 単細胞生物の細胞、植物の細胞、ヒト等の動物の細胞の構造図を見ていて、あらためて驚愕するのは、生物(生命体)の「細胞」は、よく似た、基本的には「同じ」構造・形態をもっている、ということだ。
 細胞膜が一重のものと二層のものとがある。植物の細胞には、「葉緑体」がある。これら等の差異はあっても、少なくとも、きわめてよく似ている。
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 ヒトには約37兆(説によると約60兆)個の細胞があるが、個々の細胞の構造は基本的に同一だ。しかし、全てが同じ役割または一定の役割の中の同じ一部、を担っている、わけではない。
 多数の細胞が「器官」や「系」を形成して、多細胞体あるいは細胞集団である一つの生命体(個体)の「生」のために働いている。心臓・肝臓といった「器官」、神経系、循環系、生殖系といった「系」だ。
 一つの細胞の中の諸要素も、細胞の中で、種々の機能をもつ。
 ヒトの「細胞」についてを前提とする。つぎの書物は最新の知見を反映しているだろうから、以下の叙述で主に参考にする。
 シッダールタ·ムカジー=田中文訳・細胞—生命と医療の本質を探る/上(早川書房、2024)。
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 「細胞」は以下のもので構成される。
 ①細胞膜。外界と分ける。ヒトの場合は二重(二層)で、脂質分子で成る。「孔」が空いていて、一定の分子が通過する。
 ②細胞質。以下以外。コロイド状から水に近い部分まで、全体として「ゼリー」状だ。
 ③細胞骨格。細胞の形態を維持する。
 ④RNA(リボ核酸)。「核」で作られるが、収まらずに外に出てくる。「塩基」で成り、「遺伝子」形成にとって不可欠。
 ⑤リボソーム。RNAの「情報」または「仕様書」を<解読>する。
 ⑥プロテアソーム。タンパク質を分解し、廃棄物として細胞質内に排出する。
 ⑦ミトコンドリア。エネルギーを生み出す。エネルギーは、第一に細胞質内で生まれ(嫌気性解糖)、最終産物は2分子のATP。第二にミトコンドリアが酸素を使って2分子ATPを燃やして高分子のATPを生み出す(好気性解糖)。第一と第二により、ブドウ糖1分子から32分子ATPができる。
 「私たちは一日のあいだに、身体の何十億個もの細胞で何十億個ものエネルギーの缶詰をつくっては、一〇億個もの小さなエンジンを燃やしている」(ムカジー=田中・上掲著)。
 ところで、ミトコンドリアは独自の遺伝子を持っていて「細胞的」だ。これは発生史的には原始細胞だったミトコンドリアを「細胞」が取り込んで<共生>し始めたかららしい。
 おまえが好きだよ、一緒になろうよ、という「意思」疎通があったのだ。
 この欄で触れたことがあるが、団まりな・細胞の意思(NHKブックス、2008)などは、細胞にも「意思」がある(あった)と表現している。
 ⑧小胞体。タンパク質の合成と輸送にかかわる。
 ⑨ゴルジ体。タンパク質が細胞外に出るときに最後に通過する部位。
 ⑩分泌顆粒。ゴルジ体から細胞膜までタンパク質を運ぶ。RNA→リボゾーム→小胞体→分泌顆粒という「流路」がある。
 ⑪。最も重要な細胞内「器官」。二層の、孔のある「膜」=核膜がある。
 核膜内にDNA(デオキシリボ核酸)を「格納」する。RNAはこれを「鋳型に」して、あるいはこれから「転写」されて生み出され、細胞質内に送られる。
 なお、細胞、さらには生命体の発生史的に見ると、原始的にはRNAが遺伝等を担っており(RNAワールド)、のちに核内に(核膜で保護された)DNAが生まれたらしい。
 「遺伝」情報が、DNA→(「転写」)RNA→(「翻訳」)タンパク質という経路をとって伝搬されることは、1953年にDNAの「二重らせん構造」を発見したフランシス・クリックによって、1958年に<セントラルドグマ>と称された。
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 DNA、「遺伝子」、「染色体」、「ゲノム」等々の意味と差異については、別に扱わなければならない。「遺伝子」は子孫への継承(「進化」はこれに関係する)のみならず、当該細胞やその細胞を含む当該個体(生命体)の「生と死」に密接に関係していることも含めて。
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ギャラリー
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  • 2286/辻井伸行・EXILE ATSUSHI 「それでも、生きてゆく」。
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  • 2283/レフとスヴェトラーナ・序言(Orlando Figes 著)。
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  • 2277/「わたし」とは何か(10)。
  • 2230/L・コワコフスキ著第一巻第6章②・第2節①。
  • 2222/L・Engelstein, Russia in Flames(2018)第6部第2章第1節。
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  • 2203/レフとスヴェトラーナ12-第3章④。
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  • 2179/R・パイプス・ロシア革命第12章第1節。
  • 2152/新谷尚紀・神様に秘められた日本史の謎(2015)と櫻井よしこ。
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  • 2151/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史15①。
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  • 2136/京都の神社-所功・京都の三大祭(1996)。
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  • 2118/宝篋印塔・浅井氏三代の墓。
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  • 2118/宝篋印塔・浅井氏三代の墓。
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  • 2102/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史11①。
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  • 2102/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史11①。
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  • 2101/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史10。
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  • 2098/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史08。
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