産経7/14佐伯啓思の「正論」によれば、「本来は、今回の参院選の中心的な争点は、安倍政権が推し進めている「戦後レジームの見直し」にあった。具体的には、すでに着手した教育行政の見直しや、イラク、北朝鮮をめぐる日本の対応、そして憲法改正にあった」。「当然のことながら、「宙に浮いた年金」は、…参院選の行方を左右するテーマではありえない」。しかし、「「宙に浮いた年金」の争点化によって、憲法改正をふくむ「戦後レジームの見直し」という真の論争点が隠蔽(いんぺい)されてしまうのは「代表者によって国の根本問題を論議する」という参議院の理念からしても問題がある」。
 そのとおり。だが、氏は次のようにも言う。「自己責任や市場主義による成長優先政策か、社会の共同生活の枠組みの安定か、という対立がある。「年金」不安はそのことを背景としている。しかし、与党も野党も問題の設定に失敗してしまった」。
 後者の対立又は争点は多くの人びとには全く又は殆ど意識されていないのではないか。あるいは、国民もマスコミもほとんど「社会の共同生活の枠組みの安定」を選択しているかの如くだ。政党がかかる争点を掲げ、かつ前者を主張し後者を軽視すれば必ずや惨敗するように見える。
 その意味で、佐伯啓思は、紙幅の制限の中で、やや難解な論点に言及してしまった感もある。