秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

鳩山内閣

0957/佐伯啓思・日本という「価値」(2010)第9章「今、保守は何を考えるべきなのか」。

 一 佐伯啓思・日本という「価値」(NTT出版、2010.08)の第9章「今、保守は何を考えるべきなのか」は、月刊正論2010年6月号(産経新聞社)の「『保守』が『戦後』を超克するすべはあるのか」に「多少の加筆修正」をしたもの。

 月刊正論の原論考ついては、この欄の5/07、5/17、5/18の三回ですでに紹介・言及している。不十分なコメントしかできていないが、単行本の一部となって読み直しても、<保守派>志向の者にとって、無視できない、重要な論点・問題を提起しているようだ。

 日本の「国民精神」は「西欧的なもの」と「日本的なもの」の間の、「もはや深刻なディレンマとして受け止めることができなくなってしまった」ディレンマとして表象されてきた。この「葛藤を引きうけること」によるしか「精神の活力もバランスもえることはできない」ので、「保守の立場とは、まずはこのディレンマを自覚的に引き受けるということから始めるほかない」(p.202-3)。

 日本の保守派(志向者)ははたして、「このディレンマを自覚的に引き受けるということから始める」ことをしているのだろうか? そしてまた、なぜ、この佐伯啓思論考を手がかりにしたような議論や論争が<保守論壇>で起きないのか?

 二 あらためて、この論考を最初から、メモをしながら読み直す。なお、今年2010年の4月頃に初出論文は執筆されたと見られることは留意されてよいかもしれない(まだ鳩山由紀夫首相で、まだ2010参院選民主党敗北も明らかでなかった。むろん尖閣問題も起きていない)。

 ・鳩山政権の支持率は下がっているが、自民党への期待が高まってもいない。その理由は「この政党の依って立つ軸のありかが全くもって不明な点」にある。但し、民主党も「同じ」で、「経済政策や外交政策の基本的な立場が見えない」(p.178)。

 ・民主党=リベラル、自民党=保守との図式ぱありうるが、「リベラル」・「保守」の意味自体が明快ではない。福祉重視=リベラル、市場競争重視=保守という「何とも大ざっぱで、しかも誤った通念」が流通した。これによると、「構造改革」をした自民党は保守、民主党は「その反動でリベラル」ということになる。だが、「構造改革」という「急進的改革」者を保守と称するのは奇妙で、それに「抑制をかける」ものこそを「保守」というべきだ。また、「過度にならない福祉」は「保守」の理念に含まれているはずだ(p.179-180)。

 ・下野した自民党の一部で「保守の原点」、「保守の再定義」、「真正の保守」等が語られているのは結構なことだ。では、「保守の原点に立ち戻る」とはどういうことなのか?(p.180)

 ・「保守」の立場の困難さの一つは、「改革」・「チェインジ」の風潮と現実のもとにあることだ。だが、現在の「変化が望ましい方向のものだという理由はどこにもない」。「変化」の意味を見極め、「変転著しい」「変化」に「振り回されない軸を設定する」ことこそが今日の政治の課題=「保守」という立場、だ(p.180-1)。

 とりあえず、以上(つづく)。

0872/鳩山由紀夫「ルーピー」首相はやはり鈍感。ついでに朝日新聞。

 1.鳩山由紀夫首相は4/28に、東京検察審査会での小沢一郎「起訴相当」議決のあと、こう言ったらしい。

 政府としては「検察の判断に予断を与えることになるから、私は何もいうべきではない」。(したがって?)小沢氏は幹事長として「引き続き(このまま)頑張っていただきたい」。

 首相が小沢につき「このまま頑張って…」と言うこと自体が、小沢一郎にかかわる刑事問題について何らかのコメントを発している、少なくともそのように受け止められる可能性がある、ということを、この「現実から遊離した(ルーピー)」首相・鳩山由紀夫は分かっているのだろうか。

 もともとその発言ぶり等から、首相としての資質が疑問視されるている人物だが、上の簡単な言葉にもそれは表れているだろう。
 政府としては「検察の判断に予断を与えることになるから」余計なことは言えない(言わない)というつもりならば、同じ会見・コメントの場でつづけて、小沢氏は幹事長として「引き続き(このまま)頑張っていただきたい」ということも言うべきではないのだ。
 この程度のことが分からない人物が首相を務めているのだから、怖ろしい。
 鳩山由紀夫については「病気ではないか」とか「ビョーキ」とかの論評も出てき、また「現実から遊離した」とのまことに適切な形容も出てきた。
 その資質・基本的素養・能力への疑問は昨秋からすでに感じていたことだ。何だったか特定できないが、記者への受け答えを見聞きしていて、この人はどこかおかしいのではないか?、自分の地位・責任をきちんと理解しているのか?と感じてきた。
 だが、それでも、次のように昨秋11月初旬には書かざるを得なかった。

 「だからこそ、鳩山由紀夫のブレ等々にもかかわらず、少なくとも来年の参院選挙くらいまでは、鳩山政権が続きそうだとの予想が出てくる」(注-「だから」とは自民党のだらしなさを指す)。
 これを書いたとき、「来年の参院選挙くらいまで」とすることに、かなりの勇気または思い切りが必要だった。
 鳩山政権が発足して一年くらいは政権(内閣)がつづくだろうことは当時はまだ当然視されていて、衆議院での民主党の多数派ぶりからして3~4年間の継続を想定していた人たちも多かっただろう。したがって、<来年の参院選挙くらいまでは、鳩山政権が続きそうだとの予想>というのは随分と思い切って、少なめに見積もって書いたのだった。個人的には、本当にこの人物が2~4年も首相の任に耐えられるのだろうか、と感じていたからこそ、あえて<来年の参院選挙くらいまでは>という表現を使った。

 ところが現在では、5月末・6月初めまたは遅くとも7月参院選以前での鳩山退陣がかなりの現実性をもって語られている。

 実際にどうなるのか分からないが、昨年の10月・11月頃に比べれば政治状況・世論は大きく変化している(ようだ)。

 2.「無党派層」とは「日和見層」・「流動層」であって、マスメディアによる評価・ムード作りによって、どうにでも転ぶ(または「転びそうな」)人たちのことだ。
 「無党派」などという体裁のよい(?)、または「支持政党なし」層などという中立的な(?)言葉は使わない方がよいと思われる。
 この「日和見層」・「流動層」・<マスメディアによる評価・ムード作りによって、どうにでも転ぶ(転びそうな)人たち>に対して、これから参院選(の投票日)までマスメディアはどういうメッセージを発するだろうか。
 とくに朝日新聞はどういう<政治的戦略>のもとで報道し、記事を書き、紙面を編集するだろうか。「左翼」活動家集団・朝日新聞は、そろそろ基本的な<政治的戦略>を決定しているだろう。

0809/鳩山由紀夫新内閣における「東アジア共同体」。

 9/16新内閣発足。美辞麗句(だけ?)の「お坊ちゃん」首班内閣。
 鳩山由紀夫、1947年生まれ。初の「団塊」世代首相。「団塊」世代生まれはけっこうなことだが、「団塊」世代の中の優等生らしく、<(戦後)平和と民主主義>教育をきちんと受けて、そこから基礎的理念も得ているようだ。
 <東アジア共同体>の構築を、中国共産党の一党独裁、中国の他民族弾圧、同国の対台湾姿勢、尖閣諸島・ガス田問題、朝鮮労働党の一党独裁、同国による日本人拉致問題に一言も言及することなく、「目標」として掲げるとは<狂っている>としか思えない。
 三党連立合意文書の中にも「東アジア共同体(仮称)の構築…」が出てくる。最長で4年間しかないこの内閣で、「東アジア共同体(仮称)の実現」に向けていったい何をしようというのか。
 以下、主として資料。
 一 鳩山由紀夫「私の政治哲学」月刊ボイス9月号(PHP、2009)より
 「友愛」が導く大きな「国家目標」の二つのうちなんと一つとして「『東アジア共同体』の創造」を挙げ、「ナショナリズムを抑える東アジア共同体」との見出しを掲げる(p.139)。以下、抜粋的引用。
 「新たな時代認識に立つとき、われわれは、新たな国際協力の枠組みの構築をめざすなかで、各国の過剰なナショナリズムを克服し、経済協力と安全保障のルールを創り上げていく道を進むべきであろう。…この地域〔東アジア〕に、経済的な統合を実現することは一朝一夕にできることではない。しかし、…延長線上には、やはり地域的な通貨統合、『アジア共通通貨』の実現を目標としておくべきであり、その背景となる東アジア地域での恒久的な安全保障の枠組みを創出する努力を惜しんではならない」。
 「軍事力増強問題、領土問題など地域的統合を阻害している諸問題は、それ自体を日中、日韓などの二国間で交渉しても不可能なものであり、二国間で話し合おうとすればするほど双方の国民感情を刺激し、ナショナリズムの激化を招きかねないものなのである。地域的統合を阻害している問題は、じつは地域的統合の度合いを進める中でしか解決しないという逆説に立っている。たとえば地域的統合が領土問題を風化させるのはEUの経験で明かなところだ」。
 私は「世界、とりわけアジア太平洋地域に恒久的で普遍的な経済社会協力及び集団的安全保障制度」の確立に向けて努力することが「日本国憲法の理想とした平和主義、国際協調主義を実践していく道であるとともに、米中両大国のあいだで、わが国の政治的経済的自立を守り、国益に資する道である、と信じる。またそれは、かつてカレルギーが主張した『友愛革命』の現代的展開でもあるのだ」。
 「こうした方向感覚からは、たとえば今回の世界金融危機後の…、…将来のアジア共通通貨の実現を視野に入れた対応が導かれるはずだ」。
 「アジア共通通貨の実現には今後十年以上の歳月を要するだろう。それが政治的統合をもたらすまでには、さらなる歳月が必要であろう。…迂遠な議論と思う人もいるかもしれない。しかし、…政治は、高く大きな目標を掲げて国民を導いていかなければならない」。
 「『EUの父』…カレルギーは、…言った。/『すべての偉大な歴史的出来事はユートピアとして始まり、現実として終わった』、『…ユートピアにとどまるか、現実となるかは、それを信じる人間の数と実行力にかかっている』」。
 ・そもそもが、「EU」という発想を東アジアに持ち込むこと、カレルギーの「理想」を東アジアにも適用しようとすることに、思考上の方法論的疑問がある。(「欧州」と同様の歴史的・文化的基盤は東アジアにはない、と私は思っている。)
 ・鳩山は遠い将来の東アジア地域の「政治的統合」を構想し、その前の「アジア共通通貨の実現」を構想するが、これらが、とくに前者が望ましい国家「目標」なのか自体を吟味しなければならない。中国共産党・朝鮮労働党の解体に一言も触れない東アジア地域の「政治的統合」とはいったい何なのか?!
 ・「軍事力増強問題、領土問題など地域的統合を阻害している諸問題は、それ自体を日中、日韓などの二国間で交渉しても不可能」だとの断言は、尖閣・ガス田や竹島問題を、対中・対韓では持ち出さない、外交の場で言及しない(しても無駄)、外務省にも何も言わせない、という趣旨なのか? そうだとすれば、ひどい<土下座>外交ではないか。
 「地域的統合を阻害している問題は、…地域的統合の度合いを進める中でしか解決しないという逆説」とはいったいどういう趣旨か。「地域的統合の度合いを進める」とはいったい何の意だろう。
 ・鳩山由紀夫の頭の中には常人には理解できない(=狂った)「夢想」が宿っているようだ。主観的な<善意>が好ましい現実的効果・結果を生み出すとは、全く限らない。<ファシズム>は美辞麗句・ユートピア的言辞とともにやって来うる(ナチスは正確には国家「社会主義」「労働者」党だった)。
 ・16日に鳩山は「東アジア共同体」に関する質問に対して、「米国を除外するつもりはない。その先にアジア太平洋共同体を構想すべき…」などと述べたらしい。米国が「東アジア」に入るはずはなく、前者はその場かぎりでのウソか、せいぜい<大ブレ>。「先にアジア太平洋共同体を構想すべき」と主張するなら、この論考で述べておくべきだし、そもそも、<アジア太平洋共同体>とはいったい何か? 訳のわからないことを言う新首相。
 二 民主党の政権政策マニフェスト(2009年7月27日)
 「政策各論/7外交/
 52.東アジア共同体の構築をめざし、アジア外交を強化する
 ○中国、韓国をはじめ、アジア諸国との信頼関係の構築に全力を挙げる。
 ○通商、金融、エネルギー、環境、災害救援、感染症対策等の分野において、アジア・太平洋地域の域内協力体制を確立する。
 ○アジア・太平洋諸国をはじめとして、世界の国々との投資・労働や知的財産など広い分野を含む経済連携協定(EPA)、自由貿易協定(FTA)の交渉を積極的に推進する。その際、食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内農業・農村の振興などを損なうことは行わない。」
 三 
「連立政権樹立に当たっての政策合意」(民主党・社会民主党・国民新党、2009年9月9日)
 「9、自立した外交で、世界に貢献/

 ○中国、韓国をはじめ、アジア・太平洋地域の信頼関係と協力体制を確立し、東アジア共同体(仮称)の構築をめざす。」

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