一 この項の前回に、<ピタゴラス音律>の場合の、1オクターブ間の各音階の周波数の比を以下のように記した。C〜(1オクターブ上の)Cの各音階の周波数比だ。
これが、①一本の長さの弦あるいは竹筒のようなものを2倍、…、1/2倍、…にすると音の高さ(周波数)が1/2倍、…、2倍、…となって、同じ(と感じる)音が重なり合うという「発見」と、②上の長さを1.5倍=3/2倍、または2/3倍=0.66666…倍(その2倍は1.333333…=4/3倍)にすることを試して生じた音を加えた高さ(周波数)を重要な基礎にしているらしい、ということも書いた。
先走れば、基音を一度として、②の前者は今日では<完全五度>、後者は<完全四度>と一般に称されている。Cに対するGとFだ(ドレミを使うと、ドに対するソとファ)。
その下に、<純正律>とされる場合の、音階ごとの同様の比を示す。
・ピタゴラス音律
1、9/8、81/64、4/3、3/2、27/16、243/128、2。
・純正律
1、9/8、5/4、4/3、3/2、5/3、15/8、2。
一見して分かるように、①ピタゴラス音律に比べて、出てくる整数の数が小さい。最大でも15で、前者には243、128、81、64、27、16が出てくる。
数字の単純さ、その意味での「美しさ」は純正律の方が上回る。
②ピタゴラス音律と純正律とで、同じ比になっている音階がある。
基音の2倍の2は当然として、3/2、4/3、9/8の3者だ。基音をCとすると、G、F、Dの三つだ。ドに対していうと、ソ、ファ、レの三つとなる。
今日、現代における<完全五度>と<完全四度>の基音対比周波数は、上の二つの音律においては、同じで変わらない。
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二 同じく前回に、こう記した。
「なぜ、1オクターブを12で(再来する元の音階を含めると13だが、間の音階は12)で区切るのか。そう問われて、誰も『正しく』は回答できないのではないか。
それに、ピアノに特有のことだが、なぜ全て白鍵ではなく5つだけ黒鍵なのか、なぜEF間、BC間だけ半音なのか、という素朴な疑問も湧く」。
こう書いてしまったが、素人頭であれこれと思い浮かべていると、つぎの「仮説」が生まれた。
ほんの少しは「音楽理論」に関する書物を捲ったり、文章を読んでみたが、上のような簡単または幼稚な好奇心・知識欲に応えてくれているものを発見できない。
①基音とその2倍音を含めて、8音で1オクターブを構成するのは、古来からのほとんど絶対的な要請だった。
「オクターブ」(octave)という言葉自体、「十月(October)」もそうであるように(8を基礎に、ある理由で2を足した)、「8」を語源としている。 8本足の「タコ」は、英語でOctopus という。
②なぜか。「8」を「美しい」と感じたか否かは不明だが、上のように、基音に対する<五度上>・<四度上>は重要な音階(音程)だった。
合わせてすでに4つになるが、間隔が空きすぎていると感じた?(基音をCとすると)CとFの間、Gと上のCの間に、高さの比が同程度になるように(かつ分かりやすいように)2音ずつを加えた。
そうすると、現在と同じ<1オクターブ8音構造>(但し、いわゆる白鍵部分のみ)ができ上がる。
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三 というような空想はできるのだが、しかし、<1オクターブ8音構造>は今日まで維持されつづけているとしても、<完全五度>と<完全四度>をも含めて、現代で一般的な<十二平均律>では、基音に対する周波数比は維持されていない。
換言すると、例えばCに対してGは3/2ではなく、Fは4/3ではない。
<十二平均律>の特徴は、各音階間の周波数比が同一であることだ。
正確にいえば、旧来の上の二つですでに、(Cを基音とすると)EとFの間とBと上のCの間は、他の音階間とは違って(現在にいう)「半音」になっているので、それら以外のCD間、DE間、FG間、GA間、AB間を二つに分ける上の「半音」に似た「半音」を作ることが前提になっている。
そうすると、全体は+5で13音になり(上のCを省くと12)、この13音の間の各音の高さ(周波数)の比が、全て同一であるのが、<十二平均律>の特徴だ。そして、旧来の二つでは原則として不可能な、転調や移調が簡単に可能になる。
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四 その<十二平均律>での周波数比はどうなっているのか。
1オクターブ上(例えば上のC)の数字が2であることは絶対の不動であるので、全く同じ数字の比を12回反復すれば1→2となる、その数字を「計算」すればよいことになる。これは、「数学」の問題だ。
答えは、<2の12乗根>、2の右肩に乗数として1/12を記述した数となる。
それは、分かりやすい分数にならず、小数点以下6桁までで、1.059463…になる。正確には、これ以下の数字もずっとつづく。
1を起点として大まかに言えば、1.06ずつ乗していけば、C#、D、D#と少しずつ高くなって、12回めには2になる、ということだ。
注目してよいのは、旧来の二つの音律ではいずれでも(Cを基音として)、F=1.333…=4/3、G=1.5=3/2だったが、<平均律>ではこうはならない、ということだ。
すなわち、下5桁までに限定して、<完全四度>=1.33484。4/3に近いが、やや高い、
<完全五度>=1.49831。3/2に近いが、やや低い。
だが、このように厳密には旧来の高さ(周波数)は維持されていないが、現在にいう<完全五度>、<完全四度>にほぼあたるものを、音発生道具の長さに着目して、例えば60cm のものだと90cm(3/2)に変えたり、80cm(4/3)に変えたりして試行錯誤しながら、古代の人々が、これら二つにほぼ該当するものをすでに「発見」していた、ということなのだろう。
そこから、<1オクターブ8音構造>や今日でいう半音を含めての1オクターブ内12音(両端の1つを含めて13)という音階構成も生まれてきた。
ということは、現在に標準的な<平均律>もまた、音とその響きに関する人間の感覚についての古代からの蓄積を基礎にしている、ということだろう。
<ピタゴラス音律>が本当にピタゴラスによるものかは知らないが(西欧ではおそらくそのように言われ、書かれてきた)、言うまでもなく紀元前の哲学者とされる人で、その影響は数千年後まで残っていることになる。
以上、社会、とくに日本社会の変動とは何ら関係のない、趣味的な「好奇心」・個人的な関心が主題の記述だ。なおも続ける。
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Amazon music HD 等に遅れをとっていたApple Music は、「ロスレス」(Lossless)という、大部分は「ハイレゾ」(Hi-Rez)音質の音楽を6月から配信し始めた。上の「」は行政的または法的概念・術語ではなく、事業者やその団体(全てが加入しているのでもない)が作っている用語。
「音響」も表題の一つにしているように、音質・音の「解像度」にも秋月瑛二は個人的な関心をもっている。ヒト・人間の聴感覚には大きな違いはないらしいようであることは、すこぶる面白い。
これが、①一本の長さの弦あるいは竹筒のようなものを2倍、…、1/2倍、…にすると音の高さ(周波数)が1/2倍、…、2倍、…となって、同じ(と感じる)音が重なり合うという「発見」と、②上の長さを1.5倍=3/2倍、または2/3倍=0.66666…倍(その2倍は1.333333…=4/3倍)にすることを試して生じた音を加えた高さ(周波数)を重要な基礎にしているらしい、ということも書いた。
先走れば、基音を一度として、②の前者は今日では<完全五度>、後者は<完全四度>と一般に称されている。Cに対するGとFだ(ドレミを使うと、ドに対するソとファ)。
その下に、<純正律>とされる場合の、音階ごとの同様の比を示す。
・ピタゴラス音律
1、9/8、81/64、4/3、3/2、27/16、243/128、2。
・純正律
1、9/8、5/4、4/3、3/2、5/3、15/8、2。
一見して分かるように、①ピタゴラス音律に比べて、出てくる整数の数が小さい。最大でも15で、前者には243、128、81、64、27、16が出てくる。
数字の単純さ、その意味での「美しさ」は純正律の方が上回る。
②ピタゴラス音律と純正律とで、同じ比になっている音階がある。
基音の2倍の2は当然として、3/2、4/3、9/8の3者だ。基音をCとすると、G、F、Dの三つだ。ドに対していうと、ソ、ファ、レの三つとなる。
今日、現代における<完全五度>と<完全四度>の基音対比周波数は、上の二つの音律においては、同じで変わらない。
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二 同じく前回に、こう記した。
「なぜ、1オクターブを12で(再来する元の音階を含めると13だが、間の音階は12)で区切るのか。そう問われて、誰も『正しく』は回答できないのではないか。
それに、ピアノに特有のことだが、なぜ全て白鍵ではなく5つだけ黒鍵なのか、なぜEF間、BC間だけ半音なのか、という素朴な疑問も湧く」。
こう書いてしまったが、素人頭であれこれと思い浮かべていると、つぎの「仮説」が生まれた。
ほんの少しは「音楽理論」に関する書物を捲ったり、文章を読んでみたが、上のような簡単または幼稚な好奇心・知識欲に応えてくれているものを発見できない。
①基音とその2倍音を含めて、8音で1オクターブを構成するのは、古来からのほとんど絶対的な要請だった。
「オクターブ」(octave)という言葉自体、「十月(October)」もそうであるように(8を基礎に、ある理由で2を足した)、「8」を語源としている。 8本足の「タコ」は、英語でOctopus という。
②なぜか。「8」を「美しい」と感じたか否かは不明だが、上のように、基音に対する<五度上>・<四度上>は重要な音階(音程)だった。
合わせてすでに4つになるが、間隔が空きすぎていると感じた?(基音をCとすると)CとFの間、Gと上のCの間に、高さの比が同程度になるように(かつ分かりやすいように)2音ずつを加えた。
そうすると、現在と同じ<1オクターブ8音構造>(但し、いわゆる白鍵部分のみ)ができ上がる。
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三 というような空想はできるのだが、しかし、<1オクターブ8音構造>は今日まで維持されつづけているとしても、<完全五度>と<完全四度>をも含めて、現代で一般的な<十二平均律>では、基音に対する周波数比は維持されていない。
換言すると、例えばCに対してGは3/2ではなく、Fは4/3ではない。
<十二平均律>の特徴は、各音階間の周波数比が同一であることだ。
正確にいえば、旧来の上の二つですでに、(Cを基音とすると)EとFの間とBと上のCの間は、他の音階間とは違って(現在にいう)「半音」になっているので、それら以外のCD間、DE間、FG間、GA間、AB間を二つに分ける上の「半音」に似た「半音」を作ることが前提になっている。
そうすると、全体は+5で13音になり(上のCを省くと12)、この13音の間の各音の高さ(周波数)の比が、全て同一であるのが、<十二平均律>の特徴だ。そして、旧来の二つでは原則として不可能な、転調や移調が簡単に可能になる。
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四 その<十二平均律>での周波数比はどうなっているのか。
1オクターブ上(例えば上のC)の数字が2であることは絶対の不動であるので、全く同じ数字の比を12回反復すれば1→2となる、その数字を「計算」すればよいことになる。これは、「数学」の問題だ。
答えは、<2の12乗根>、2の右肩に乗数として1/12を記述した数となる。
それは、分かりやすい分数にならず、小数点以下6桁までで、1.059463…になる。正確には、これ以下の数字もずっとつづく。
1を起点として大まかに言えば、1.06ずつ乗していけば、C#、D、D#と少しずつ高くなって、12回めには2になる、ということだ。
注目してよいのは、旧来の二つの音律ではいずれでも(Cを基音として)、F=1.333…=4/3、G=1.5=3/2だったが、<平均律>ではこうはならない、ということだ。
すなわち、下5桁までに限定して、<完全四度>=1.33484。4/3に近いが、やや高い、
<完全五度>=1.49831。3/2に近いが、やや低い。
だが、このように厳密には旧来の高さ(周波数)は維持されていないが、現在にいう<完全五度>、<完全四度>にほぼあたるものを、音発生道具の長さに着目して、例えば60cm のものだと90cm(3/2)に変えたり、80cm(4/3)に変えたりして試行錯誤しながら、古代の人々が、これら二つにほぼ該当するものをすでに「発見」していた、ということなのだろう。
そこから、<1オクターブ8音構造>や今日でいう半音を含めての1オクターブ内12音(両端の1つを含めて13)という音階構成も生まれてきた。
ということは、現在に標準的な<平均律>もまた、音とその響きに関する人間の感覚についての古代からの蓄積を基礎にしている、ということだろう。
<ピタゴラス音律>が本当にピタゴラスによるものかは知らないが(西欧ではおそらくそのように言われ、書かれてきた)、言うまでもなく紀元前の哲学者とされる人で、その影響は数千年後まで残っていることになる。
以上、社会、とくに日本社会の変動とは何ら関係のない、趣味的な「好奇心」・個人的な関心が主題の記述だ。なおも続ける。
--------
Amazon music HD 等に遅れをとっていたApple Music は、「ロスレス」(Lossless)という、大部分は「ハイレゾ」(Hi-Rez)音質の音楽を6月から配信し始めた。上の「」は行政的または法的概念・術語ではなく、事業者やその団体(全てが加入しているのでもない)が作っている用語。
「音響」も表題の一つにしているように、音質・音の「解像度」にも秋月瑛二は個人的な関心をもっている。ヒト・人間の聴感覚には大きな違いはないらしいようであることは、すこぶる面白い。