秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

鈴木正四

0152/朝鮮戦争に関するマルクス主義歴史家の「哀れ」。

 朝鮮戦争は南北どちらが先に攻撃を仕掛けて開始したかという問題につき、松本清張・日本の黒い霧「謀略朝鮮戦争」(松本清張全集30のp.386以下、初出、1962?)は曖昧にしつつ、南による北侵説の余地を多分に残している。
 だが、中国共産党の影響を受けている可能性を否定できない、朱建栄・毛沢東の朝鮮戦争(原著1991、岩波現代文庫、2004.07)すら、p.22で、朝鮮戦争は「北朝鮮が発動したことについて、もはや疑問を挟む余地はなくなった。そして金日成が スターリンの支持を取り付けて、その軍事的援助を得て、…開戦計画を練っていたことも明らかになった」と記すに至っている。
 また、児島襄・朝鮮戦争1(文春文庫、1984。初出1977)は明瞭に「北」による「南侵」説だったが、元赤旗平壌特派員で2005年に共産党を除籍された萩原遼・朝鮮戦争(1993、文藝春秋)刊行の頃までには、この戦争が、朱建栄の言うように、米国・韓国軍の北侵によってでなくスターリンと毛沢東の了解のもとで北朝鮮軍の南侵により始まったことは関係史料から明らかになっていたと思われる。
 しかるに、第一に、マルクス主義歴史学者の井上清・昭和の50年 -新書日本史8(講談社現代新書、1976.09)p.139-140は、「米軍が、日本を基地として朝鮮戦争をおこした」、「6月25日、李承晩軍は38度線で北側を攻撃し、北は大反撃に出た。こうして朝鮮戦争がはじまった」と述べ、著者と講談社は1992.12の第9刷になってもこれをそのまま発売している(私の所持している範囲で指摘する)。
 第二に、亀井勝一郎との間で<昭和史論争>を引き起こした遠山茂樹=今井浩一=藤原彰・昭和史(新版、岩波新書、1959)の56刷は1995.05に出ているのだが、同p.276も「6月22日」アメリカは「極東において積極的行動に出ることを決定した」、「25日、北朝鮮軍が攻撃してきたという理由で、韓国軍は38度線をこえて進撃を開始した」と記述している。
 上述のように、1990年代初頭には(旧ソ連の関係史料が公開されたことにより)朝鮮戦争は<北朝鮮による侵略>により始まったことは明らかになっていたのに、上の二つの本の著者たちと講談社、岩波書店という日本有数の?出版社は、歴史の真実を歪曲した、端的には「ウソ」を書いている歴史本を90年代の前半以降も販売し続けたのだ(ひょっとして2007年の現在でも?)。執筆者は勿論だが、出版社にも「良心」又は(大多数の研究者等が承認する又は史料により疑いがなくなった)歴史的事実への「謙虚さ」が必要だろう。名誉毀損等の具体的な被害者はいないとしても、歴史の「偽造」は、長期的には、又は国家的観点からは、遙かに<罪深い>ものだ、と考えられる。
 ところで、出版元や内容から日本共産党員だろうと推測される鈴木正四・戦後日本の史的分析(青木書店、1969)を古書で持っているが、その「まえがき」は「もっとも全面的な、もっとも客観的な学問の立場であり方法であると思うから」、「労働者階級の立場、マルクス主義の方法と観点にもとづいて書かれている」と勇ましく宣言している。そして、p.114で朝鮮戦争について次のように言う。-「絶対」と言いたいところを学問的な表現で「少なくともいわば1万中の9999まで、アメリカが戦争をおこした疑いがきわめてこいという結論にたっした」。
 同じく古書で買った、藤原彰・日本帝国主義(1968、日本評論社)も結論は同じだ。
 出版された時期、当時は旧ソ連の史料を知ることは困難だったことを考慮しても、今から見るとこれらマルクス主義歴史家の叙述は、何やら<哀れ>を誘う。<取り憑かれ>とは怖ろしいものだ。

-0010/61年めの記念日に二度めの日記でつぶやく。

 睡眠を経て、午後4時すぎ。終戦記念日の読売社説を読んで、朝日の13日の社説は読売の一部のパクリのごとくだと感じた。読売のように1年以上の検証を社内ですることなく、朝日は社説で唐突に、「責任」の有無や程度を一部の個人についてのみ言及したのだ。といって、読売社説に全部納得しているわけではない。朝日の世論調査報道のごとく、100%「侵略」戦争だったと100%の現国民が考えているわけではない。プラス面又は「自衛」面がかりにあったとすれば、論理的には「責任」者でなく「功労」者を検証すべきことになる。読売は「侵略」戦争一色史観なのか。
 小泉首相、午前早くに靖国参拝。昨年に比して方式がより本格的なのは、今年、靖国参拝違憲損害賠償請求訴訟につき最高裁が(合憲としたわけではないが)不法行為法(国賠法)上保護されるべき損害なしとして棄却したことが大きいと推測される。
 新聞社、半藤・秦・保阪等々が戦中史・戦後史について積極的に発言しているが、肝心のわが日本史学界(近現代史学界)=アカデミズムの人たちはいったい何をしているのか。かつて亀井勝一郎氏が批判して論争が生じた岩波新書・昭和史(1959、1995.05-56版)は1995年の増刷だが、依然として朝鮮戦争は南が北侵の旨記述する(p.276)。
 ソ連の同意と中国の了知のもとでの北の南侵が明瞭になっているのに、岩波と遠山茂樹・藤原彰等には「学問」的良心がなく、「知的退廃」がある。名誉毀損損害賠償訴訟を起こされなければ「嘘」の記述でも垂れ流して売るのだろう。このような人たちを指導教授とする親マルクス主義的研究者が多く育っていると思われ、「正常」化にはあと何世代か要するようで未来はただちには明るくない。
 松本健一は経済学部出身、故坂本多加雄氏は法学部出身。もっとも、非マルクス主義の通史シリーズもいくつかあるようで状況は少しは変わった。かつてヒットした中公の日本の歴史シリーズは直木孝次郎・黒田俊雄・井上清など「左翼」の多さが歴然としていたように思う。
 鈴木正四・戦後日本の史的分析(青木書店、1969)は「労働者階級の立場、マルクス主義の方法と観点」で書くと「まえがき」で宣言しつつ朝鮮戦争につき「少なくともいわば一万中の九九九九まで、アメリカが戦争をおこした疑いがきわめてこいという結論にたっした」と述べていた(p.114)。日本共産党員らしき研究者の体たらくを、今や嗤い、憐れむのみだ。

ギャラリー
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