秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

赤い靴

2695/私の音楽ライブラリー㉖—日本の唱歌。

 私の音楽ライブラリー㉖—日本の唱歌。
 日本の「唱歌」類は、日本古来の伝統的音楽ではない。明治維新以降に「西洋音楽」を(当時の文部省を先頭にして)積極的に学び吸収して学校教育の場に提供した楽曲類だと思われる。日本的風味を導入したり、(七五調などの)日本語文に適応したりするなどの努力がなされている。しかし、明治改元以降の30年〜50余年のあいだに(下の081まで)、「西洋音楽」を吸収した作曲家たちが育っていたことに、むしろ感心すべきだろう。基礎となる「音律」はすでに、全て〈十二平均律〉だったと見られる。
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 076 →荒城の月、1901、小林一男ら. 〔hinanohi〕
     土井晩翠/作詞、滝廉太郎/作曲。
 076-02 →Andre Rieu, Kojo No Tsuki. 〔adam4jp〕

 077  →青葉の笛、1906、小鳩くるみ. 〔sumomonga9〕
     大和田建樹/作詞、田村虎蔵/作曲。

 078 →冬景色、1914、NHK東京放送児童合唱団. 〔eisin555〕

 079  →ふるさと(故郷)、1915、八千代少年少女合唱団. 〔KAZEKOZOU6〕
     高野辰之/作詞、岡野貞一/作曲。

 080  →赤い靴、1922、ひまわり. 〔ひまわり〕
     野口雨情/作詞、本居長世/作曲。

 081 →赤とんぼ、1927、合唱団TOKIO. 〔長井道延〕
     三木露風/作詞、山田耕筰/作曲。

 082  →牧場の朝、1932、NHK東京放送児童合唱団. 〔童謡・唱歌〕
     杉村楚人冠/作詞、船橋栄吉/作曲。

 083  →この土、1959、三浦洸一.〔rocky8 懐メロチャンネル〕
     丸野セキ/歌詞、團伊玖磨/作曲。
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2309/Itzhak Perlman plays ‘A Jewish Mother’.

 Violin の曲をたくさん聴きたくてItzhak Perlman(イツァーク・パールマン、1945-)の箱ものを入手した。素人の感想ながら、さすがに著名な演奏家らしくソツなくふつうに力強く弾いている。そして途中までは特に惹かれることもなかったのだが、CD番号が後半に入って、(私には)思わぬ<掘り出しもの>を見つけた。
 Traditional Jewish Melodies と冠されているうちの曲のいくつかだ。
 無知だったが、Perlman はイスラエル出身でユダヤ系の人のようだ。Israel PO(Dov Seltzer指揮)を背後に弾くKlezmer(東欧等に残るユダヤ人民謡のジャンルらしい)の諸曲・旋律は、この人個人の情感もかなり込められているようで、かなり心惹かれる。
 表題にした‘A Jewish Mother’('A Yuddishe Momma' )はとくにそうだ。
 <ユダヤの母親>は「教育ママ」という隠意を持つこともあるようだ。そんなこととは関係なく、母親を想い出しているような、哀切感溢れる旋律と弾き方になっている。
 毎日のように何度か聴いているうちに、この旋律は、どこかで聴いたことがあるような気がしてきた。懐かしいとすら思えるのは、何故だろうか。
 そして、ふと「横浜の港から」という歌詞が出てきた。
 正しくは「横浜の波止場から」で、またこれは二番の初めだった。
 その曲は、童謡・唱歌の<赤い靴>だ。4x2 の計8小節しかなく、下を一番の歌詞とする短い歌だ。丸数字は歌詞ではない。
 「①赤い靴はいてた ②女の子 ③異人さんに連れられて ④行っちゃった」 
 ‘A Jewish Mother’は、ただちにひらめいたのでは全くないものの、この唱歌を思い出させる。一部がとてもよく似ている。
 ①部分の後半・第二小節の「はいてた」はEEFDE--(相対音階)で、ユダヤ民謡での前奏後の主題部分と全く同じ。その前の①部分の前半・第一小節は、日本のではABCDE--で、ユダヤ民謡のその部分は、(前小節の最後の音符のEから始まる—こういう始まり方を専門用語では何と言うのだろう—)細かく区切ってAABBCCDDだ。よく似ていて、①の第一・第二小節を合わせると、ほぼ同じという感がある。 
 ‘A Jewish Mother’ には上の②の高く上がる部分はないようだ。しかし、③〜④によく似た旋律が、少し後にやはりある(但し、最後の音は、Aに下がって終わるのではなく、Eに上がってつづいていく)。
 ‘A Jewish Mother’は8小節どころではない長い曲で、複雑とも見える伴奏をオーケストラ(イスラエル交響楽団)が奏でている。
 しかし、上の冒頭・前半部分に限って言うと、<赤い靴>とよく似ている。
 <赤い靴>は1921年の野口雨情の詩に、1922年に本居長世が曲を付けて発表された。私に遠い記憶があるくらいだから、戦後も歌われ続けたに違いない。
 1921年は(広義の)ロシアで<新経済政策(ネップ)>導入共産党大会があり、不作と飢饉が継続した年。1922年に日本共産党(コミンテルン日本支部)が設立された。 
 本居長世は音楽大学の学生だったこともあるようだ。
 そこで、思い切り空想・妄想が広がる。
 伝統的旋律というからには、ユダヤ民謡は19世紀中には発生・成立していたのではないか。
 そして、盗作・剽窃とは言わないが、本居は何かでこのユダヤ民謡を知っていて、そこから「ひらめき」・インスピレーションを得たのではないか。そう思いたいほど、部分的にはよく似ている。
 付け加えると、同じCDに収録されている曲はみな同様に切ない、郷愁を誘うような旋律を多く持っていて、とくに、Rozhinkes mit Mandelen、Vi ahin soll ich geyn? などは、日本の大正時代あたりの<唱歌>の雰囲気を持っている。
 ユダヤ民族歌謡と日本のかつての唱歌・童謡曲、どうしてこんなに似ているのだろう。不思議だ。
 併せて、<音楽>の今日に至るまでの<伝搬>の仕方にも関心がつながる。<言葉>の分野とは異なる。明治改元より前にすでに今にいうClassicの世界があり(Mendelssohn も江戸時代の人)、また例えばGustav Mahler は<おぞましい ロシア革命>を知ることなく亡くなっている。この(時期的な)古さには驚く。筒美京平(1940年生〜2020年没)は<洋楽>を参照しつつ、日本の歌謡曲またはJ.Pops を作曲したらしい。
 なお、この欄では元々は、ヒト・人間にほとんど一定の聴細胞・聴覚から現在の「音響工学」(または音楽とAI・人工知能)まで、JBpress に書いている伊東乾のような専門家ではない全くの素人として、新鮮に感じ、考えたことを記すつもりだった。たんなる楽曲感想文の列挙にするつもりはないのだが…。
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 perlman 711

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