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本庶佑・ゲノムが語る生命像—現代人のための最新·生命科学入門(講談社ブルーバックス、2016)。
40パーセントほど読んだ。参照文献を全ては記載してきていないところ、あえてこの文献を挙げるのは、今のところ、読みやすい文章で基礎的なことを書いてくれている貴重な書物と思われるからだ。もっとも、一年前には、あるいは二ヶ月前であっても、読んでもほとんど理解できなくて、読み続ける気にならなかっただろう。数日前から読み始めたが、他の諸々の書物を読んできたことの復習にもなって、なかなか面白い。
内容の紹介はほとんどしない。
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表現あるいは形容の仕方に、なるほどと感じさせる箇所がある。
一つは、DNAをらせん状の「鎖」とか「糸」とか表現してきたところ、この著でも多くは「鎖」が使われているようだが、「ビーズ」(に糸がついたもの)という表現もある。瑣末かもしれない言葉の問題だが、こちらの方が適切または分かりやすいようにも思われる。
つぎのように語られる。「ヒストン」という語はこれまでにこほ欄で使ったことがある。だが、「ヌクレオソーム」はない。かなり「ヌクレオチド」に似ているのだが、立ち入らない。なお、「糖」と「塩基」の結合で、三つめの「リン酸」がないものは、「ヌクレオシド」と言う。
①「DNAの糸を巻き込む糸巻きの芯」は「ヒストン」というタンパク質だ。ヒストン8分子から成る「八量体」の「周りに1.7回巻きでDNAの糸がからまったもの」が「ヌクレオソーム」という〔一染色体内の〕「基本単位」になる。「DNAは、このビーズに糸がついたようなヌクレオソーム構造を、何度もコイル状に折りたたみ、二重三重のコイルとなって、きわめて圧縮した形で核の中に折りたたまれている」。
②「DNAはヒストン八量体の周りに1.7回、約150塩基対の長さが糸巻きのような形でビーズ上に存在する」。この単位を「ヌクレオソーム」と言う。
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もう一つ。細胞の「有糸分裂」によるDNA(・遺伝子群)の「複製」の過程について、「準備」作業として染色体・DNAの「二倍化」があるとして、「神秘的」だとすでに書いた。その際に、元の一つのDNAが二本の「DNA分体」または「DNAの片割れ」に「ほどける」と書いた。また、一つのDNAが塩基対の中央で二つの塩基に「切り裂かれる」と表現したこともある。
だが、これらよりも、つぎの表現または形容—「チャックを開くように引き離」す—の方がおそらく明らかに適切だろう。
「DNAの複製は、2本の鎖をチャックを開くように引き離しながら、それぞれに自分を鋳型として、ぴったりとはまり込む相手を作る形で、2組の二重鎖DNAを作り上げる方式で行われる。できあがった2組の二重鎖は、それぞれのうちの1本の鎖が新しく作られたものである」
チャックを開く、ファスナーを開く、ジッパーを開ける、の方が実像に近いと考えられる。元の「鋳物」の片割れの一つにその「鋳型」として新しい「DNA分体」が(逆向きで)「ピタッとくっついて」一つの新しいDNAになるためには(そして二倍に「複製」されるためには)、まずは元の一つの「鋳物」がこのようにして二つに引き離されなければならないのだ。
なお、続けてこう叙述される。「複製」というこの「作業はきわめて複雑な化学反応であり、DNAの複製に関与する酵素〔「DNA合成酵素」〕は20種類以上にものぼる」。
すでにS·ムカジーの名だけ記して「酵素」に言及したが、ここでも<神秘さ>の背景がより詳しく語られている。「酵素」、「ホルモン」、「神経伝達物質」といった「細胞」と区別される、「細胞」内のまたは「細胞」を行き来する<触媒>類には、まだ触れたことがない。
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