慰安婦問題・河野談話については、この欄でも何度も触れたはずだ。
今年ではなく昨年の8/19、産経の花形記者・阿比留瑠比は「やはり河野談話は破棄すべし」という大見出しを立てて、産経新聞紙上でつぎのようなことを書いていた。
・①「慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」。②慰安婦の「募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」。これらが河野談話の要点(番号は秋月)。
・「関与」、「甘言、強圧」の意味は曖昧で主語も不明確だが、この談話は<日本政府が慰安婦強制連行を公式に認めた>と独り歩きし、日本は<性奴隷の国>との印象を与えた。
・「日本軍・官憲が強制的に女性を集めたことを示す行政文書などの資料は、いっさいない」。談話作成に関与した石原信雄によるとこの談話は「事実判断ではなく、政治判断だった」。
・この談話によって慰安婦問題は解決するどころか、「事態を複雑化して世界に誤解をまき散らし、問題をさらにこじらせ長引かせただけではないか」。
以上はとくに目新しいことはないが、最後にこう付記しているのが目につく。安倍晋三は、「今年」、つまり今からいうと昨年2012年の5月のインタビューでこう述べた、という。
「政権復帰したらそんなしがらみ〔歴代政府の政府答弁や法解釈など〕を捨てて再スタートできる。もう村山談話や河野談話に縛られることもない」。
この発言がかつての事実だとすると、第二次安倍政権ができた今、「もう村山談話や河野談話に縛られることもない」はずだ。
安倍晋三第二次内閣は「生活が第一」を含む経済政策・経済成長戦略や財政健全化政策の他に、いったい何をしようとしているのだろうか。初心を忘れれば、結局は靖国参拝もできず、村山談話・河野談話の見直し・否定もできず、支持率を気にしながら<安全運転>をしているうちに、第一次内閣の二の舞を踏むことになりはしないか。「黄金の三年」(読売新聞)は、簡単にすぎてしまうだろう。
さらに、橋下徹が慰安婦問題について発言した今年5月、自民党議員、安倍内閣、そしてついでに産経新聞は、いったいいかなる反応をしたのだっただろうか。