4/05のNHKスペシャル「JAPANデビュー第一回」につき、林建良という「台湾団結連盟日本代表」が、サピオ5/13号(小学館)の巻頭(p.3)でこう語っている。以下、一部抜粋。
・上の番組は「日本の台湾統治の苛酷さを強調し、大きな波紋を呼んだ」。「衝撃は日本人以上に台湾人の方が大きかった」。「…NHKが、なぜ事実歪曲したのかが理解できない」。「一番多く歴史証言で登場した柯徳三氏(87)は『NHKに騙された』と語っている」。「負の面の証言だけが取り上げられ、プラス評価の部分がすべて削られたからだ」。
・台湾(人)が「今回『反日』に仕立てられたことには強い怒りを覚え」る。「親父の世代を『反日偽造工作』に加担させたNHKの手口は、侮辱である」。「NHKのディレクターに『日本精神』はなく、台湾人に欺瞞的な手法を使った。…精神の砦は、無残にもこの若い日本人によってぶち壊された」。
・NHKの2007年の「青海チベット鉄道」特別番組は「チベット人への弾圧や略奪に使うあの鉄道を美化している」。今回の番組には「日台分断を図る」NHKの意図があり、さらに「中国の意向」があるのではないか。
・「日台さえ分断させれば中国の台湾侵略に弾みがつく。そして台湾併合後は日本も中国の勢力圏に組み込まれる。そのような侵略国家に加担するNHKは、今や銃口を自国民に向ける洗脳軍隊に化けた」。
上の「若い」「NHKのディレクター」とは誰かは書かれていないが、この番組の<ディレクター>は、浜崎憲一、島田雄介、<制作統括>は、田辺雅泰、河野伸洋だった。
このような林建良の批判は「一部」(の例外?)のものだとしてNHKは無視するのかもしれないが、かなり強い批判・非難だ。NHKを実質的に中国(共産党)の<手先>と、そして明示的にNHKを「侵略国家に加担する…今や銃口を自国民に向ける洗脳軍隊」と形容しているのだ。
心あるNHK職員は、こんな番組が作られたことを憂い、嘆くべきだ。また、多くの心ある国会議員・政治家も、放送法の観点から、NHKのこの番組をもっと問題視すべきだ。
同じようなトーンの<反日・自虐>番組が今後月に一度放送されたのでは、たまったものではない。今からでも遅くはない。第2回以降の番組内容が「公平・公正」なものかどうかも放送総局長・日向英実らのNHKの権限・職責ある立場の者はチェックすべきだろう。
なお、放送法第三の二は「放送事業者」による「国内放送の放送番組」の「編集」につき、「次の各号の定めるところ」によるべき旨を定める。各号のうち一号以外は次のとおりだ。
「二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」
NHKの上の番組は、これらに正面から抵触してはいないか!? 雑誌・週刊誌や新聞社のうち産経は別として、NHK以外の放送会社や他の新聞社は、なぜこのNHKの番組に強い批判が寄せられているという事実すら報道しないのか。
反朝日新聞と反日本共産党のみならず「反NHK」をも一般的には掲げたくないのだが。
田辺雅泰
〇 4/05のNHK「プロジェクトJAPAN-JAPANデビュー第一回」が、その「プロローグ」の内容からして奇矯なものになることは予想できた。そしてそのとおり、とくに日本の「台湾統治」に関して、少なくとも<一面的>といえる番組(・報道)内容だった。
<ディレクター>は、浜崎憲一、島田雄介。
<制作統括>は、田辺雅泰、河野伸洋。
NHKエンタープライズ、同グローバルメディアサービスの名はなかった。
内容の具体的なことに立ち入らない。日本李登輝友の会という団体の、つぎの抗議内容は至極もっともだと思える。以下、全文(下線・太字は秋月)。
「NHKスペシャル シリーズ JAPANデビュー 第一回 アジアの〝一等国〟」に対する抗議声明
貴日本放送協会(以下、NHK)は、去る四月五日午後九時から「NHKスペシャル シリーズ JAPANデビュー 第一回 アジアの〝一等国〟」という番組を放送した。
私どもは台湾を「日本の生命線」と位置づけ、日本と台湾の交流のシンボルである李登輝元総統の名を冠し、平成十四年に台湾との文化交流を目的に設立した団体であり、台湾の日本統治時代にも深い関心を抱いてこれまで活動してきている。そこで今回の放送は多大の関心を持って観た。
だが、期待はものの見事に打ち砕かれた。私どもが知る台湾の日本語世代の人々の常日頃の発言と大きくかけ離れており、反日的と思われる発言だけを取り上げた印象は拭えず、日本の台湾統治時代を批判するため、台湾人の証言を都合よく操作し、「反日台湾」を印象付けるためだったのかとしか思えない内容であった。光と影の影のみを強調した印象は否めない。また、日台離間を企図しているのかとさえ思われる内容でもあった。
番組を観た多くの方からも「実にひどい番組」「偏見に充ちた内容」という感想が寄せられている。台湾からも「大変不快だった」との声が寄せられ、若い世代の間では「僕のおじいちゃんは日本大好きなのに、あの番組は変だよ」「NHKはどうしてこんないい加減な番組を日本人に見せるのだろう」という疑問の声が噴出しているという。
番組内容には批判すべき点が多々あるが、聞き慣れない「日台戦争」という呼称が出てくるし、後藤新平は出てきても、それは台湾人三千人を処刑した匪徒刑罰令の実行者として出てくる。また、台湾特産の樟脳産業を立て直すために基隆港を大型化し縦貫鉄道を敷いたと説明する。
しかし、八田與一や後藤新平の事績を高く評価する李登輝氏の総統時代、一九九七年に台湾で刊行された中学校の歴史教科書の副読本『認識台湾』では、第七章に「日本植民統治時期の政治と経済」、第八章に「「日本植民統治時期の教育、学術と社会」を設け、例えば米やサトウキビの生産については「米の増産と糖業王国の確立」との見出しの下、生産量のグラフを掲載していかに生産量が上がったかを示していた。縦貫鉄道については「各地を結ぶ交通運輸を改善した」と記していた。
確かに台湾統治では同化政策を進めた。差別もあった。この差別について、特に台湾の日本語世代は日本人の前ではあまり語りたがらない一面があることを私どももよく知っている。だが、日本統治を評価していることも事実なのである。それは、八田與一を高く評価していることに如実に現れている。故に、台湾をよく知る人々には、著しくバランスに欠けた内容と映じ、統治時代の歴史に真正面から向き合っていないという印象を強く残したのである。
従って、日本が一方的に台湾人を弾圧したとするような史観で番組を制作することは、公共放送として許されるべきではない。
ついては、ここに今回の放送内容に厳重抗議する。それとともに、この番組の脚本を作成する上で参考にした書籍など全資料の開示を要求する。
平成二十一年四月九日
日本李登輝友の会
会長 小田村四郎
副会長 石井公一郎
岡崎久彦
加瀬英明
田久保忠衛
中西輝政
日本放送協会 会長 福地茂雄殿」
この抗議に対してNHK広報局は、「歴史を振り返り、未来へのヒントにしたいという番組の趣旨を説明し、理解していただきたいと考えています」と反応したという。
これでは誠実な対応に全くなっていない。
「歴史を振り返り、未来へのヒントにしたい」という、その具体的な内容・方法をこそが批判されているからだ。抗議者を嘲笑し、抗議内容を無視する、おざなりの文章としか思えない。NHK広報局には、理屈・論理・日本語文章を理解できる<ふつうの>人間はいないのか。
一点だけ付記する。日本の「台湾統治」を<悪>として一面的に描くことは、台湾が日本領土になったこと、その原因としての日清戦争の勝利の評価と無関係ではない。
NHKは日清・日ロ戦争を含む司馬遼太郎「坂の上の雲」をドラマ化しているようで、前宣伝にも熱心だが、そのことと、この「プロジェクトJAPAN-JAPANデビュー」で訴えたいことと整合性はあるのか?
司馬史観うんぬんはどうでもよい。<東京裁判史観>が<悪>と見なしているのは1930年代以降の日本の軍事行動・戦争だと思うが、いつかも触れたように、昭和の戦争=<侵略>戦争=<悪>(謝罪の対象)という<村山談話>史観=<東京裁判史観>を支持する者たち(「左翼」)は、日清・日ロ戦争をどう「歴史認識」するのか?? これはさらに明治維新の評価にも関連してくる。単純な是非論はできないだろうが、少なくともこれらとの関係も総合的に論じないと、「台湾統治」の評価も適切なものにはならないのではないか。
さらに関連して。4/04にNHK解説委員・五十嵐公利は「日本は開国によって独立を確保した」旨を語ったが、その「独立」を維持し続けることができたのは日清・日ロ戦争の勝利(少なくとも不敗)があったからで、これらのいずれかに敗戦していれば、1945年を待たずして日本の「独立」は危うかったのではないか。
五十嵐公利がまともな人間ならば、この問いにもどこかで答えてほしい。
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