10/04に、適菜収が月刊正論2013年8月号で、「反日活動家であることは明白」な橋下徹を「支持する『保守』というのが巷には存在するらしい」のは「不思議なこと」とだと書いていることを紹介し、「適菜収によれば、石原慎太郎、佐々淳行、加地伸行、西尾幹二、津川雅彦らは、かつ場合によっては安倍晋三も、『不思議』な『保守』らしい。そのように感じること自体が、自らが歪んでいることの証左だとは自覚できないのだろう、気の毒に」とコメントした。「保守」とされているのが「不思議」だ(「語義矛盾ではないか」)という言い方は、橋下徹を支持する人物の「保守」性を疑っている、ということでもあるだろう。
それから一週間後の10/11に、明確に安倍晋三の「保守」性を疑問視する適菜収の文章を読んでしまった。週刊文春10/17号p.45だ。適菜収は「連載22/今週のバカ」として何と安倍晋三を取り上げ、「安倍晋三は本当に保守なのか?」をタイトルにしている。その他にも、驚くべきというか、大嗤いするというというか、そのような奇怪な主張を適菜は行っている。
①まず、簡略して紹介するが、橋下徹と付き合う安倍晋三を以下のように批判する。
・付き合っている相手によって「その人間の正体」が明らかになりうる。橋下徹の「封じ込めを図るのが保守の役割のはず」、日本の文化伝統破壊者に対して「立ち上がるのが保守」であるにもかかわらず、「こうした連中とベタベタの関係を築いてきたのが安倍晋三ではないか」。
②また、安倍晋三個人を次のように批判する。
・組んでよい相手を判断できない人間は「バカ」。「問題は見識の欠片もないボンボンがわが国の総理大臣になってしまったこと」だ。
③ついで、安倍内閣自体をつぎのように批判する。
・「耳あたりのいい言葉を並べて『保守層』を騙しながら、時代錯誤の新自由主義を爆走中」。
④さらには、次のように自民+維新による憲法改正に反対し、「護憲」を主張する。
・「維新の会と組んで改憲するくらいなら未来永劫改憲なんかしなくてよい。真っ当な日本人、まともな保守なら、わけのわからない野合に対しては護憲に回るべきです」。
ビ-トたけしあたりの「毒舌」または一種の「諧謔」ならはまだよいのだが、適菜収はどうやら上記のことを「本気」で書いている。
出発点に橋下徹との関係がくるのが適菜の奇怪なところだ。与えられた原稿スペ-スの中にほとんどと言ってよいほど橋下徹批判の部分を加えるのが適菜の文章の特徴だが、この週刊文春の原稿も例外ではない。よく分からないが、適菜は橋下徹に対する「私怨」でも持っているのだろうか。何となく、気持ちが悪い。
それよりも、第一に、安倍晋三を明確に「バカ」呼ばわりし、第二に、安倍晋三の「保守」性を明確に疑問視し、第三者に、「野合」による憲法改正に反対し、「護憲に回るべき」と説いているのが、適菜収とはほとんど錯乱状態にある人間であることを示しているだろう。
少し冷静に思考すれば、憲法改正の内容・方向にいっさい触れることなく、「維新の会と組んで改憲するくらいなら」と憲法改正に反対し、「野合」に対して「護憲に回るべき」と主張することが、憲法改正に関するまともな議論でないことはすぐ分かる。
適菜収は論点に即して適切な文章を書ける論理力・理性を持っているのか?
適菜といえば「B層」うんぬんだが、そのいうA~D層への四象限への分類も、思想・考え方または人間の、ありうる分類の一つにすぎない。容共・反共、親米・反米(反中・親米)、国家肥大化肯定的・否定的(大きな国家か小さな国家か)、自由か平等か、変革愛好か現状維持的か、等々、四象限への分類はタテ軸・ヨコ軸に何を取り上げるかによってさまざまに語りうる。適菜のそれの特徴は「IQが高い・低い」を重要な要素に高めていることだが、少なくとも、ある程度でも普遍的な分類方法を示しているわけではない。
さらにまた、適菜のいうA~D層への四象限への分類は、適菜自身が考えたのではないことを適菜自身が語っている。適菜はある程度でも普遍的だとはまったくいえない「B層」・「C層」論等を、「借り物の」基準を前提にして論じているのだ。
そしてどうやら適菜は自らは規制改革に反対(反竹中平蔵・反堺屋太一)で「IQが高い」という「C層」に属すると考えているようなのだが、この週刊文春の文章を読むと、「D層」ではないかと思えてくる。
また、自民党・維新の会による憲法改正に反対し、「護憲」を主張しているという点では辻元清美、山口二郎等々々の「左翼」と何ら変わらないし(中島岳志とも同じ)、安倍晋三を「バカ」と明言するに至っては、かつて第一次内閣時代の安倍について「キ〇〇〇に刃物」とも称していた、程度の低い「左翼」(またはエセ保守)文筆家(山崎行太郎だったか天木直人だったか)とも類似するところがある。
この適菜が「橋下徹は保守ではない!」という論考で月刊正論(産経)の表紙をよくぞ飾れたものだ。
もう一度10/04のこの欄のタイトルを繰り返しておこうか。
<月刊正論(産経)・桑原聡は適菜収のいったい何を評価しているのか。>