秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

民族

2147/岡田英弘著作集第三巻・日本とは何か(2014)②。

 岡田英弘著作集第三巻・日本とは何か(藤原書店、2014)。
 以下、第Ⅴ部・発言集より。
 <日本の神話の起源
 ・「日本の神話の起源を論じるときには、二つの点から考えなければならない。
 一つは、神話というのは「現実を説明する方途」の一つだ、という点である。
 これは歴史と同じ機能なので、神話と古代史は混同されやすいのである。」
 ・日本の神話も「実際に行われていた祭りや宗教儀式の説明として、『日本書記』が編纂される過程で、新たにつくりだされていったのであろう」。
 ・「日本の神話は、時系列に沿って物語が進行する特異な構造になっている。それがギリシア神話などと大きく違うところである。
 『日本書記』を書いた人々は、『史記』、とくに「五帝本紀」の叙述の仕方を、明らかに意識していたと思われる。
 「五帝本紀」の「帝」というのは、天の神であり、また大地母神の夫であり、「五帝本紀」は、五人の帝が交代で天下を統治する、という筋書きである。
 『日本書記』を歴史に組み替えるとき、「五帝本紀」を意識して、同じようなパターンで神々の行動を時系列に並べた、ということであろう」。
 ・「もう一つの点は、神々の中心をなす神格が、アマテラスオホミカミになっていることである。…。それなのに中心の神格となっているのは、壬申の乱はアマテラスオホミカミの庇護によって成功した、という当時の人たちの認識が働いているからである。
 アマテラスオホミカミが中心に据えられていること一つをとっても、日本神話が今のような形をとった年代がわかる。」
 以上、p.505-p.506。初出、シンポジウム「古代史最前線からの眺望」月刊正論(産経)1998年5月号p.319-p.320。
 <古代から大和民族は存在したか
 ・「民族というのは、20世紀になって発生した観念である。19世紀に興った国民国家という体制が生んだ観念だと言っていい。
 現実に、大東亜戦争のあと、…独立した諸国を見ると、初めはそこに民族などない。独立してから民族をつくり始めている。」
 ・「大和民族はどうか。じつは日本人のあいだで民族という観念が共有されるようになったのも、20世紀に入ってからのことである。そもそも「民族」という言葉には外国語の用語がない。
 20世紀になって、日本で発明された純粋の日本語なのである。」
 ・「7世紀の日本天皇の出現で大和民族が生まれたのではないか、と疑問を持つ人がいるに違いない。じつは、そのときできたのは、民族ではなく、いわば日本というアイデンティティなのである。」
 ・「当時の日本列島には倭人のほかに、新羅人も百済人も高句麗人もいた。韓半島を見ても、新羅には高句麗人も百済人も漢人もいたし、百済には倭人も新羅人も高句麗人も漢人もいた。…。
 つまり、日本列島も韓半島も、さまざまな人たち、異質の者たちの雑居状態だった。」
 ・「こうした状況を変えたのは、シナにおける唐の勃興である。
 唐の皇帝に対して独立を保つために、日本という政治的アイデンティティが急遽発明された。
 白村江の敗戦以前にも倭王はいたが、日本列島全体を支配していたわけではなかった。日本はいわば連合組織だったのだが、唐という脅威を前に、その連合組織が団結した。
 3世紀、倭人の諸国が寄り集まって選挙で卑弥呼を女王に立て、後漢王朝が滅びた大混乱に対処したのと同じようなことが、このとき繰り返されたのである。
 天皇という王権に人々が結集した。そこから新たに日本文明が発達をし始めるのである。」
 以上、p.511ーp.513。初出、、シンポジウム「古代史最前線からの眺望」月刊正論(産経)1998年5月号p.327ーp.330。
 *** 

0446/佐伯啓思・日本の愛国心(NTT出版、2008.03)を半分近く読了。

 佐伯啓思・日本の愛国心-序論的考察(NTT出版、2008.03)をたぶん4/01から読み始めて、p.152まで、数回に分けて一気に読んだ。「あとがき」も読了しているので、すでに半分近い。
 佐伯の本には読み残しが多いが、「愛国心」は今日的テーマでもあり、最新の彼の本でもあるので、これを次に片付ける。
 内容をフォローしないが、1.「ナショナリズム」、「国民」および「愛国心」に関する概念の分析は、シェーマ的すぎると感じるほどに、かつ唖然とするほどに、見事という他はない(p.92、93、p.107参照)。
 朝日新聞コラムニストの若宮啓文は「ナショナリズム」概念について、きちんと何かを理解した上で<ジャーナリズムはナショナリズムの道具ではない>と書いたのだろうか。佐伯著をじっくり読んで理解できる能力が若宮啓文にあるかどうか。
 2.佐伯は日本人の固有名詞を出して批判することが全くか殆どなかったように思うが、この本の第一章のうち30頁くらいは明確に丸山真男の名を出してのその論理・概念・理論の批判だ。その内容にも納得がいく。
 あらためてこんな学者=丸山真男に「呪縛」された「知識人」たちを罪深いと感じるし、こんな学者の全集や書簡集等が今だに刊行されていることを異様だとも思う。
 3.ホッブズ、ルソー、フランス革命、アメリカ革命等に関する話が(私には再び)出てくる。何度も読んだような、しかし新しい別のことも教えてくれているようだ。
 余裕があればいつか、内容の一部を紹介・要約する。疑問点もある。

ギャラリー
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