かつてのこの欄での記述の(各回のうちの)一部をそのまま再掲しておく。二つのいずれも、櫻井よしこに関するものだ。 「櫻井よしこは-この欄で既述だが-昨年の2009総選挙前の8/05の集会の最後に「民主党は…。国家とは何かをわきまえていません。自民党もわきまえていないが、より悪くない方を選ぶしかないのかもしれません」とだけ述べて断固として民主党(中心)政権の誕生を阻止するという気概を示さず、また、鳩山由紀夫内閣の誕生後も、「…鳩山政権に対しては、期待と懸念が相半ばする」(産経新聞10/08付)と書いていた。文字通りには「期待と懸念」を半分ずつ持っている、と言っていたのだ!。 二 2010年12月31日
「「左翼」政権といえば、櫻井よしこは週刊新潮12/23号(新潮社)の連載コラムの中で、「三島や福田の恐れた左翼政権はいま堂々と日本に君臨するのだ」と書いている(p.138)。 この欄で言及してきたが、①櫻井よしこは週刊ダイヤモンド11/27号で「菅政権と谷垣自民党」は「同根同類」と書いた。
自民党ではなくとも、少なくとも「谷垣自民党」は<左翼>だと理解しているのでないと、それと「同根同類」のはずの「いま堂々と日本に君臨する」菅政権を「左翼政権」とは称せないはずだ。では、はたしていかなる意味で、「谷垣自民党」は「左翼」なのか? 櫻井よしこはきちんと説明すべきだろう。 ③民主党・鳩山政権発足後の産経新聞10/08付で、櫻井よしこは、「鳩山政権に対しては、期待と懸念が相半ばする」と書いた。「期待と懸念」を半分ずつ持っている、としか読めない。 ④今年に入って、月刊WiLL6月号(ワック)で、櫻井よしこは、こう書いていた。-「「自民党はなすべきことをなし得ずに、何十年間も過ごしてきました。……そこに登場した民主党でしたが、期待の裏切り方は驚くばかりです」。期待を持っていたからこそ裏切られるのであり、櫻井よしこは、やはり民主党政権に「期待」を持っていたことを明らかにしているのだ。→ <略> それが半年ほどたっての、「三島や福田の恐れた左翼政権はいま堂々と日本に君臨するのだ」という櫻井よしこ自身の言葉は、上の①~④とどのように整合的なのだろうか。 さて、櫻井よしこに2010年の「正論大賞」が付与されたのは、櫻井よしこの「ぶれない姿と切れ味鋭い論調が正論大賞にふさわしいと評価された」かららしい(月刊正論2月号p.140)。 櫻井よしこは、「ぶれて」いないのか? あるいは、今頃になってようやく民主党政権の「左翼」性を明言するとは、政治思想的感覚がいささか鈍いか、いささか誤っているのではないか?」 なお、屋山太郎については再掲しないでおく。この人物が靖国神社の総代会か崇敬奉賛会の役員に名を出している筈であるのは異様であると、靖国神社のためにも言っておきたい。
以上は、先月の<民主党政権成立を許したことについての保守派の責任をきちんと総括すべきだ>旨のエントリーの続きの意味ももっている。
一 2010年5月14日
鳩山由紀夫の月刊ヴォイス上の論考を読んでいたこともあって、私は民主党と鳩山由紀夫に対しては微塵も<幻想>を持たなかった、と言っておいてよい。<総合的によりましな>政党を選択して投票せざるをえず、民主党(中心)政権になれば決して良くはならない、ということは明らかだったように思えた。外交・安保はともあれ<政治手法>では良い面が…と夢想した屋山太郎のような愚者もいただろうが、基本的発想において<国家>意識のない、またはより正確には<反国家>意識を持っている首相に、内政面や<政治手法>面に期待する方がどうかしている。
しかし、櫻井よしこは月刊WiLL6月号(ワック)p.44-45でなおもこう言っている。
「自民党はなすすべきことをなし得ずに、何十年間も過ごしてきました。その結果、国家の基本というものが虫食い状態となり、あちこちに空洞が生じています。/そこに登場した民主党でしたが、期待の裏切り方は驚くばかりです」。
前段はとりあえず問題にしない。後段で櫻井よしこは、何と、一般<日和見>・<流動>層でマスコミに煽られて民主党に投票した者の如く、民主党・鳩山政権に「期待」をしていたことを吐露し、明らかにしているのだ!
何とまあ「驚くばかり」だ。これが、<保守系シンクタンク>とされる「国家基本問題研究所」の理事長が発言することなのか!? そのように「期待」してしまったことについて反省・自己批判の弁はどこにもない。」
はて、櫻井よしこはいつから現在の民主党政権を「左翼政権」と性格づけるようになったのだろうか?
②昨年の総選挙の前の週刊ダイヤモンド(2009年)8/01号の連載コラムの冒頭で櫻井よしこは「8月30日の衆議院議員選挙で、民主党政権が誕生するだろう」とあっさり書いており、かつ、民主党批判、民主党に投票するなという呼びかけや民主党擁護のマスコミ批判の言葉は全くなかった。
Aもともとは「左翼」政権でなかった(期待がもてた)が菅政権になってから(?)「左翼」になった。あるいは、Bもともと民主党政権は鳩山政権も含めて「左翼」政権だったが、本質を(迂闊にも?)見ぬけなかった。
上のいずれかの可能性が、櫻井よしこにはある。私には、後者(B)ではないか、と思える。
民主党政権
一 昨年(2010年)の6/02と6/28の二回にわたって言及しているが、鳩山由紀夫前首相の退陣表明前の6/02の朝日新聞社説は、次のように主張していた。あえて反復して記録しておく。番号はこの欄の執筆者。
①民主党内等にある「首相退陣論」は「目前の参院選を何とか乗り切るために、鳩山由紀夫首相に辞めてもらう。そういう狙いが見え見えである。考え違いというほかない」。この論では「逆風はかわせない」。
②「昨年の政権交代の大義は、……首相の座を『たらい回し』してきた自民党政治との決別」だった、「政治の質を根本的に変える試みの意義は大きい」。「そうした政治の流れから誕生した首相を退陣させようというのなら、早期に衆院解散・総選挙を実施し、有権者に再び政権選択を求めるべきではないか。それなしに『たらい回し』に走るのは、民主党の自己否定に等しい」。
朝日新聞社説は、とくに上の②、すなわち総選挙を経ない首相交代=「たらい回し」は「政権交代の大義」と矛盾し、「民主党の自己否定」だ、と主張していた、ということをしっかりと記憶しておくべきだ。
その6/02(新聞朝刊発行後)に鳩山由紀夫は退陣表明した。ついでに書いておけば、退陣表明前の鳩山・小沢一郎・輿石東の三人の<談合>において、後任は菅直人になるだろうということが想定されていたと見られる。実際に菅直人はすみやかに次期代表選に立候補の意思を表明し、実際にも新代表となり、そして新首相になった。これを「たらい回し」と称して誤りではない。
さて、6/03の朝日新聞社説はどう書いたか。これまた反復して記録しておく。
①「歴史的な政権交代の意義を無駄にはできない。今回のダブル辞任が『平成維新』の出直しに資するなら、必要な通過点だと考えるべきだろう。/問題はすべてこれからである」。
前日の社説を忘れたかのごとく、「問題はすべてこれからである」と開き直ったのだ。批判・皮肉は繰り返さない。だが、次のように書いていたことも記憶されておくべきだろう。
②「…一定の判断材料を国民に示したうえ、なるべく早く解散・総選挙をし、信を問うのが筋である」。
さて、昨年にも書いたことだが、「なるべく早く」とはいかほどの時期を想定していたのだろうか。
ともあれ、昨年6月初め、朝日新聞は、「なるべく早く」解散・総選挙をすべし、と主張していたのだ。
この主張を、年も新たになった現時点で、朝日新聞の社説子(論説委員)はなおも維持しているのか、それともうやむやにしているのか、どこかで(私は気づいていないが)明瞭に否定したのか?
朝日新聞の節操のなさを詰っても無意味で、カエルの面に何とかだろう。この新聞社の酷さをあらためて確認しておきたい。
二 月刊WiLL3月号(ワック)に、表紙・目次の最初の方の数本を除いて、かなり目を通した。
山際澄夫「騙し取った政権を国民に返せ!」(p.218-)が、タイトルも内容も、さしあたり最もしっくりくる(気分に合っている)。
最後の一段落の文章は次のとおり(そのままの全文引用)。
「負けることを承知でやる解散だけは避けたいというのが民主党の本音だろうが、これ以上、政権のたらい回しは許されない。民主党政権がやらなければならないことは、国民を欺いて奪い取った政権を国民に返すこと、つまり衆院の解散総選挙に踏み切ることしかない」(p.225)。
全くの同感だ。
だが、上にいう「民主党の本音」を実質的に擁護し、結果として解散・総選挙を要求することなく、相変わらず民主党を叱咤激励しているのは屋山太郎だ。屋山は上掲誌巻頭コラムで言う。
「…総選挙をやって、自民党が政権を取れば、ましな政府ができるのか。…自民党は国民から見離されて大敗し、野党に転落したのである。一年四ヶ月の間に、大いに反省して生まれ変わったという証拠もない。/一方、『解散しろ』という建前論に従って、民主党が大敗必至の総選挙に打って出るわけがない。…」(p.22)。
前段について言えば、<よりましな>政府にはなるだろうというのが私の理解・見解だ。民主党政権と「谷垣自民党」の<同根同類>論または<同質性が高い>論は、内容的にも、戦略的にも、誤っている、と考える。<左翼・売国>政権をできるだけ早く打倒すべきだ。今回の内閣改造によっても、本質は変わっていない。江田五月らは旧社会党の「左翼」であり、仙谷由人は民主党の代表代行に居座っている。
後段についていえば、屋山太郎の、総選挙をやって民主党を負けさせたくない(民主党内閣を崩壊させたくない)という感情が混じっているようだ。
だが、解散・総選挙は、さほどに非現実的なものなのかどうか。大連立(大連合)等よりも解散・総選挙を望む意見の方が多いとの世論調査もいくつか出ているようだ。また、上の山際澄夫「騙し取った政権を国民に返せ!」は、こうも書いている。
予算は通過しても「予算関連法案の通過は困難」という国会の議席状況にある。「となると、政権はたちまち立ち往生し、総辞職か解散を引き換えに関連法案の通過を認めてもらうといった事態も充分予想される」(p.225)。
2013年の8月の衆議院議員の任期満了まで(あと2年半余!)、菅直人政権が、あるいは民主党内による「たらい回し」政権が続くはずはないし、続かせてもいけない。
今年2011年3月ですでに菅直人政権は行き詰まるだろうとの予測も、ほぼ同旨と思われる上の山際のごとく、十分に成り立つ。
鳩山由紀夫と小沢一郎を「恥を知れ」と罵倒する(上掲誌p.23)資格をもっているのか疑われる屋山太郎が何といおうと、それと関係なく事態は推移するだろう(屋山は「恥を知る」べき予測や主張をしてきている)。
朝日新聞もまた、多少は正気が残っているならば、あらためて、「なるべく早く解散・総選挙をし、信を問うのが筋」だと主張してみたらどうか。
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