櫻井よしこの、週刊ダイヤモンド2009年7/25号、つまり2009年8月末総選挙の一ヶ月余前に出された週刊誌の連載をあらためて読んで見ると興味深い。
とりあえずは、櫻井よしこが、総選挙の日程が決まって「自民党政権の終焉と民主党政権の誕生の間近さが予定調和のように示された」等としつつ、民主党の政策の明確化を望む、ということを基本的な主張としている、ということに目が向く。
最初の方で、「民主党政権誕生を前にして気になるのが同党の政策である。党内の考え方は多くの点、特に外交・安保問題で統一されていない」と述べ、最後のまとめの文は、「こうして見ると、民主党の政策は本当に見えてこない。もはや自民党への反対だけではすまないのは明らかだ。政権を取ってどんな政策を実施するのか。選挙までの日々にマニフェストの発表を望むものだ」となっている。
民主党への懸念は示されているが、批判はない、と理解して誤りではないだろう。むろん、<民主党(中心)政権断固阻止>という気概は全く示されていない。
上のこととともに興味深いのは、櫻井よしこが紹介している、国家基本問題研究所理事の屋山太郎の(当時の)考え方だ。
櫻井よしこは、屋山太郎の言葉を次のように紹介している。-以下の内容に誤りまたは不備があれば櫻井よしこの文章に原因がある。そうであれば、屋山は桜井にクレームをつけられたし(といっても一年半ほど前の古い文章だが)。
①「民主党政権が誕生するとして」、重要政策に党内一致がなく、憲法改正への姿勢も不明瞭だが、「政治評論家で民主党事情に詳しい屋山太郎氏は、しかし、楽観的である」。/「大胆に安全運転、これが政権奪取時の民主党の基本でしょう。外交・安保問題についても、従来の政策から大きくはずれることはないと思います。極論に走り、国民の信を失うような選択をするはずがないのです」。
②「屋山氏は、民主党と自公の最大の違いは外交・安保問題ではなく、国内政策に表れると予測する」。/「自公政権は公務員制度改革を事実上葬りましたが、民主党は本気です。国家公務員33万人、ブロック局など地方に21万人。彼らの権益擁護のために政治が歪められ、国民の利益が失われてきました。〔一文略〕麻生政権の終焉で同法案が廃案になるのは、むしろ、歓迎すべきです。民主党が真っ当な改革をするでしょう」。
③「屋山氏はさらに強調する」。/「教育についても、民主党政権下で日教組路線が強まると心配する声があります。輿石東参議院議員会長が山梨日教組出身だから、そう思われるのでしょう。しかし、民主党の教育基本法改正案は自民党案よりまともでした。加えて、教育では首長の影響が非常に大きい。民主党政権イコール教育のねじ曲げではないと思います」。
このような予測が正鵠を射ていたかどうか、屋山太郎はもちろんだが、櫻井よしこもまた紹介者として<反省>し、屋山の見識に疑問を持つべきではなかろうか。
普天間基地問題、尖閣諸島問題等々、民主党政権は<外交・安保問題>について実際に「従来の政策から大きくはずれることはな」かったのか? 「公務員制度改革」なるものを民主党政権は「本気」で「真っ当に」行ったのか、あるいは行おうとしているのか(「公務員制度改革」の内容自体も問題だが)?
いちいちこの欄で取り上げていないが、屋山太郎の主な論説類はフォローしてきている。
2009年7月段階のみならず、その後も一貫して、屋山太郎は、<自民党が再び政権を手にすることはない>旨を断言しつつ、民主党を支持・擁護してきている。批判的にコメントをすることがあっても、朝日新聞とほとんど同様に、こうすれば支持(率)が高まるよ、といった<叱咤激励>がほとんどだ(最近では<仙石由人切り>を勧告?していた)。
民主党が「左翼」政権だとすると、屋山太郎もまた「左翼」論者(・「評論家」)だ。そのような者が産経新聞の「正論メンバー」なのだから、産経新聞の<品格>に傷をつけているのではないか?
もっとも、櫻田淳が産経新聞「正論メンバー」であるとももに朝日新聞の<ウェブ論座>とやらの執筆者でもあるのだから、屋山太郎は櫻田淳とともに、<産経新聞はいうほど「右翼」・「保守(・反動)」ではありませんよ。安心して読んで(購読して)下さい>というための広告塔として用いられているのかもしれない。
屋山が国家基本問題研究所の理事を務めているという不思議さ及びこの研究所自体について生じる疑問はいつか述べたので、今回は省略。