柳原滋雄・ガラパゴス政党.日本共産党の100年(論創社、2020)
  この書物(計250頁ほど)の各章の表題は、つぎのとおり(一部に割愛あり)。プロローグ・エピローグは省略。
 第一部/朝鮮戦争と五〇年問題。
  第1章・日本共産党が「テロ」を行った時代。
  第2章・組織的に二人の警官を殺害。
  第3章・殺害関与を隠蔽し、国民を欺き続ける。
  第4章・日本三大都市で起こした騒擾事件。
  第5章・共産党の鬼門「五〇年問題」とは何か。
  第6章・白鳥事件—最後の当事者に聞く。
 第二部/社会主義への幻想と挫折。
  第7章・「歴史の遺物」コミンテルンから生まれた政党。
  第8章・ウソとごまかしの二つの記念日。
  第9章・クルクルと変化した「猫の目」綱領。
  第10章・原発翼賛から原発ゼロへの転換。
  第11章・核兵器「絶対悪」を否定した過去。
  第12章・北朝鮮帰国事業の責任。
  第13章・沖縄共産党の真実。
 第三部/日本共産党"政権入り”の可能性。
  第14章・「スパイ」を最高指導者に君臨させた政党。
  第15章・日本国憲法「制定」に唯一反対する。
  第16章・テロと内ゲバの「母胎」となった政党。
  第17章・「被災地」での共産党の活動。
  第18章・「日本共産党は"横糸“が欠けていた」。
  第19章・京都の教訓—庇を貸して母屋を取られる。
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  著者(1965-)は元「社会新報」記者。
 少し捲っただけで、まともには読んでいない。奇妙な「マルクス・レーニン主義」理解を披歴したり、「暴力革命」を捨てていないと言いつつ最後に公安調査庁の文書によってそれを正当化するような、程度の低い共産党批判書よりは、「事実」が書かれているようで、マシではないか。
 巻末に「付論」の中に、つぎの四綱領文書が掲載されているのは、役に立つだろう(但し、一部省略あり)。カッコ内はこの著者。
 ①1951年綱領(徳田綱領)。
 ②1961年綱領(宮本綱領)。
 ③2004年綱領(不破綱領)。
 ④2020年改定綱領(志位綱領)。
 ③は中国・ベトナムを「市場経済を通じて」社会主義をめざしている国家と位置づけた綱領だ(第23回党大会。④でまた変わる)。
 しかし、第20回党大会が採択した1994年綱領もまた、きわめて重要だと考えられる。これによって、<ソヴィエトはスターリン時代に社会主義国ではなくなっていた>旨が明記された。1991年12月〜1994年7月まで、少なくとも1992-93年の二年間は、日本共産党は公式にはこの問題には口をつぐんでいた。不破哲三は、「大国主義」・「覇権主義」と闘ってきたと、ソ連共産党という政党とソ連という国家自体の区別を曖昧にしたまま、何やら吠え立てていたけれども。
 なお、この年、この綱領後は、形式的にも宮本顕治の影響力はなくなった。1992-93年は宮本と不破の間の、ソ連認識も含めての「闘争」があったに違いない。
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