一 昭和の日。産経新聞4/29社説は「経済的繁栄」後の日本人は「結束」心や「価値観」を「再び忘れてしまったようだ」と書き、「憲法改正などいわゆる『戦後レジーム(枠組み)』からの脱却や、戦後に戦勝国から押しつけられた自虐的歴史観の克服」といった「『昭和』が先送りした問題も多い」と書く。
上の後段の「憲法改正」等の「戦後レジーム(枠組み)」からの脱却、「自虐的歴史観の克服」という課題を明示的に指摘しているのが注目される。産経新聞ならぱ当然なのかもしれないが、さっとこう明確に書けるのは素晴らしい。
他紙の「昭和の日」社説を読んでいないが、しかし、上のように明言するのは産経にとどまるだろう。そして、産経は新聞紙販売シェアでは10%に満たないこともあらためて知っておく必要がある。おそらく、読売がどういう見解に立つか(簡単には、朝日か産経のいずれか)によって、世論の動向は決定的に左右されるような気がする。読売も産経に同調してはじめて、朝日・毎日・日経連合に拮抗できるようになるのではないか。産経新聞だけでは、新聞というマスメディアの大勢的雰囲気を作り出せない。
二 週刊エコノミスト5/05・12合併号(毎日新聞社)の佐伯啓思「日本を真に豊かにするために『脱成長社会』の道を探れ」(p.96-97)を読む。
「物質的成長や物質的幸福、永遠の生命」を追求しない、「豊かな」「日本人の自然観、死生観、歴史観」という「原点に戻りたい」。/「貨幣では測れないものがある。もう少し伝統的なものを大事にしてゆったりして暮らしたらどうだろうか」。
「永遠の生命」を追求しないとは<生命=人生には限りがあると自覚する(諦念する?)>ことを意味しているのだろうが、精神的な意味での「永遠の生命」の追求を肯定する余地はあると思われるので、「永遠の生命」という語の使い方には若干の留保が必要だろう。だが、上の点を除いては、佐伯啓思の主張に全く異論はない。それは、「西洋の近代主義」(p.97)に立脚した「戦後レジームからの脱却」の主張とほとんど重なるだろう。
産経新聞4/28の佐伯啓思「日の蔭りの中で-文明の危機呼ぶ幼児性」は、ホイジンガーの1935年の本が、アメリカに見られた「幼児性」=「子供っぽいこと」を称賛する風潮こそが<文明の危機>の本質だと述べている、と紹介しつつ、今の日本で「私たちが目撃している」のも「大差ない光景」ではないか、とする。今の日本には「幼児性」が氾濫している-国会論議・バラエティを含むテレビ番組・犯罪に至るまで…。
この「幼児性」は、佐伯啓思のいう「近代文明」又は「欧州近代」の限界を示すものとしての<ニヒリズム>の発生と無関係ではないだろう。あるいはまた、<戦後レジーム>(「個人主義」・「平和と民主主義」)こそが、「幼児性」をもつマスコミ先導の世論やテレビ番組等々を生み出した、とも言える。
佐伯啓思・大転換-脱成長社会へ(NTT出版、2009.03)を先日から読み始めている。第一・第二章(~p.59)は読了。最近に佐伯が雑誌・週刊誌・新聞等に書いている短い文章と、当然ながら問題意識・叙述内容は共通しているか、似ている。
昭和の日
昨28日は再独立(主権回復)55周年の日だった。今日29日は「昭和の日」。昭和が始まってから今年は82年めの筈だ。
「敗戦」から62年近く、占領終了から丁度55年も経つのに、外交や政治はまだ「敗戦」前や占領期のことを引き摺っている。占領期に生まれて何もできなかった者としては、同朋先輩たちに、何故もっときちんとケリをつけておいてくれなかったのか、と愚痴を言いたい気分もある。
さて、安倍首相は米国を離れたようだが、米国下院の例の慰安婦決議案はどうなるのだろう。
産経の阿比留瑠比の4/28のブログによれば、米国下院議長になっている米国民主党のナンシー・ペローシ(ペロシ)は、安倍首相の米上下両院の幹部議員らとの会談の際に、「日本が地球温暖化問題に関し、中国やインドとの協力を行うためのイニシアチブを発揮していることに敬意を表したい。上下両院の指導部が超党派で一堂に会して他国の首相に会うのは、非常に稀なことだ。これは、安倍首相に対する敬意の表れであり、また日米関係をらに強化したいという強い思いの表れだと思う」と述べたようだ。
こうした機会に慰安婦問題を話題にする(できる)筈はないと思うが、民主党全体が、あるいは下院トップの彼女自身がとくに「反日」ということではないのだろう。と、どうなるか分からないが、多少は安心しておきたい。
なお、産経の古森義久の今年1/23のブログ(「アメリカの女性議長は「反中」なのか。ペロシ議員にみる対中語録」)は彼女のことを話題にしており、コメント等が34も寄せられている。
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