2008年秋の読書メモ。
〇占領期以降に関心を限定しないと知力?が耐えられないので戦争自体や戦時中のことには興味をあえて向けないようにしている。だが、たまたま9月くらいに最初の一部を読んでしまったため読了しようと読み続け、読了したのは田母神俊雄論文に関する報道の直前か、直後。偶然としかいいようがない。
黄文雄・日中戦争知られざる真実-中国人はなぜ自力で内戦を収拾できなかったのか(光文社、2002)だ。
この本の「新版」にあたり、章の構成は違うが中身は全く又はほとんど同じなのが、黄文雄・「日中戦争」は侵略ではなかった(ワック、2005)。こちらも所持しているが、上の旧版の本を読んだ。
内容の紹介は省略する。<「日中戦争」は侵略ではなかった>という新タイトルで結論的趣旨は明らかだろう。
当時に中国(清→中華民国)という一つの統一国家・政権があり中国人というまとまりのある「国民」がいた、という錯覚に陥っている人も現在の日本には多いと思うが、少なくとも国民党・蒋介石、共産党・毛沢東、(時期にもよるが)親日・汪兆銘(汪精衛)という3つぐらいの「権力」があって<内戦>をしていた、ということがよく分かる。
また、この当時(「日中戦争」の時期)に日本軍が大陸にいたこと自体をすでに<侵略>の証左と感じ、それを「常識」視しているような(馬鹿馬鹿しい)日本人もひょっとして多いのではないかと危惧するが、日本軍の「満州」駐在にせよ、上海(租界地区)駐留にせよ、当時は条約等にもとづく全くの合法的なものだったことを(あえてこんなことを書かなければならないことこそ悲しいが)確認しておく必要がある(ちなみに、<侵略>戦争・行為が<違法>だということが当時において国際法上<確定していた>とも言えない)。
〇先月になって、50頁ほど読んで(傍線という、読んだ痕跡が初めの方にあった)、中途で放ったまま読了していないことに気づいたのが、佐伯啓思・国家についての考察(飛鳥新社、2001)。
さらに読み進めているが、読了はまだ。すでに最近に何点かについては言及した。だが、既読の範囲内でもこの欄で紹介・言及していない興味深い叙述は多い。今後この欄でも触れていきたいものの、時間・エネルギーとの兼ね合いがむつかしい(すなわち、ここに書いているくらいなら、読み進めた方が個人的には意味がある、時間的パフォーマンスは高い、とも感じる)。
〇ずっと前に「要約・解題」を目的とする文章部分のみを残して読んで(見て)しまい、その後、気儘に読んでいたのが、小林よしのり・パール真論(小学館、2008・06)の上記「要約・解題」部分である同書21章「解題・パール判決書」。
第21章の計115頁のうち、時間的間隔を空けつつ、昨日の夜までに76頁分(p.311あたりまで)を読み終えた。
この本は貴重な・重要な歴史的意味があるように思う。そして、第21章は「パール判決書の全体を要約・解題」(p.236)したもの。この点はちっとも悪くはないが、「要約」と「解題」のいずれであるのかが分からない又は分かりにくいと感じられる部分があるのが玉に傷だ。別途、両者を明確に区別して、「要約」のみの文章のあとにまとめて「解題」を付す、又は「要約」中に番号を付して「解題」的注記を挿んでいく、日本語文だけの(つまりマンガ部分のない)本を出版したらどうか。
それにしても、所謂「東京裁判」判決は日本国家にとって(良きにつけ悪しきにつけ)重要なものの筈であるにもかかわらず、多数意見も含めて(さらには「起訴」の文章も付いているとなおよいが)、日本の外務省あたりは、この「判決」の公式の翻訳書(日本語文書)を作成していないのだろうか。だとすればきわめて不思議で、奇妙だ。
きちんとした翻訳書(日本語文書)があれば、ややこしい英文を見なくとも容易に内容は分かるはずだろう。パール「判決書」につき、民間の研究会による、「東京裁判史観」に毒されたような解説付きの、小林によれば誤訳も多い翻訳本しかない、という状態は(本当にそうだとすれば)きわめて異常だ。
戦後史アカデミズムというものがあるとすれば、共同作業でよいから、所謂「東京裁判」判決(パール「反対意見」書その他の個別「意見」書を含む。できれば「起訴」(訴因)の文章も)の全文を可能なかぎり正確に邦訳し、本にまとめてほしい。元来は国・外務省がしておくべき作業の筈だと思われるのだが。
雑誌論文も含めてまだ「読書メモ」の対象はあるが、今回はここまで。
日中戦争
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