一 兵庫県知事定例記者会見(2025年5月20日)の一部。
「フリー記者/県保有情報の漏洩の第三者委員会〔「三つめ」委員会のこと—秋月〕の推薦依頼をした文書が去年12月に出ていますが、これ斎藤知事名で書かれていてですね、その調査対象には週刊文春電子版も入っている。
これ、依頼するときに斎藤知事は知っていたということですね。
知事名で出された文書で知事が知らないはずはないと思うんですが、知っていたということで間違いないでしょうか。」
「斎藤元彦知事/あの、私は存じ上げてません。
「フリー記者/えっ。斎藤知事名で出した文書の内容を知らなかったということですか?
その中に週刊文春の電子版を調査対象にするということが書かれて、依頼しているんですが、知らないということですか?」
「斎藤元彦知事/あの、行政というものはですね。
知事名や大臣名で出される文書っていうおはたくさんあるんですけれど、それの決裁権者というのは全て知事名で出されるから、知事が決裁ではなくて、…決裁権者というのは部長さんであったりとか課長さんとか、それぞれ委任されていることがありますので、全てのことが私の名前で出されているからといって、私が全て決裁しているっていうわけではないことは、ご理解いただけると思います。」
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以上の部分は、斎藤元彦が自分にではなく部下に(週刊文春電子版を調査対象とした)責任を押し付けた部分として話題になっているようだ。
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二 斎藤元彦は「行政というものはですね」などと言って、「行政」のプロ・専門家らしき口吻だが、上の説明には、斎藤元彦における「行政・行政法」に関する無知がある。
「決裁」と「委任」というのが上の発言に出てくる専門述語のようだ。
しかし、斎藤元彦は、「専決」およびこれと同義の「内部委任」という語をなぜか使っていない。
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宇賀克也・行政法概説III—行政組織法·公務員法·公物法(有斐閣、2012年)p.52.にこうある。
「専決/国·地方公共団体をとわず、実務上広く行われている行政事務の処理方法として、専決と呼ばれるものがある。これは、内部委任とも呼ばれるが、権限を対外的には委任せず、また代理権も付与せずに、実際上、補助機関が行政庁の名において権限を行使することをいう。
行政庁Aの決裁権限を補助機関である課長Bが最終的に行使することを内部的に認め、BがAの名において当該権限を行使する方式である。形式的にはA の名において権限が行使されるので、Aが処分庁として扱われる。」
斎藤元彦の説明に真実性があるとすれば、同知事(行政庁)が課長(法務文書課長。補助機関)に「専決」権限を認めた(=「内部委任」)、ということだろう。
しかし、どのような権限・事務処理を「補助機関」の「専決」とするかは、あらかじめ「〜県専決(・代決)規程」というような規定を「行政庁」(県の場合多くは県知事)が定めておかなければならず、それがあってはじめて「課長」は自己の判断で「決裁」することができる。斎藤元彦は、自分が定めた(ことになっている)「専決規程」を見てみるがよい。
さらにまた、「専決」規程により「決裁」権が「課長」にあるとかりにしても、知事—課長の指揮監督権が消失するわけでは全くない。知事は「専決」権者を指揮することができ、事後的に事務処理の結果を「報告」させることもできる。これらは<拘束力>をもつ。
したがって、「課長」が「専決」したので、私(知事)は知りません、責任はありません、などと県知事は絶対に言うことができない。
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だがそもそも、「三つめ」の調査のための委員(弁護士)の推薦を県弁護士会に依頼するという場合、そのような事務は頻繁にある事務、あるいは定型的な事務ではないので、「専決」規程があらかじめ定めているとは考え難い。
とすると、斎藤元彦の言う「委任」を「内部委任」と理解しないかぎり、課長の「専決」だったという斎藤元彦の説明は、信用できない。
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ついで、「委任」とは、行政庁の権限の別の機関への「委任」であって当初の行政庁Aの権限が別の機関(新しい行政庁になる)に移ってしまうことをいう(前掲・宇賀p.41-42)。
そして、この委任には「法的」根拠が必要であり、斎藤元彦は上で「委任」をどういう意味で用いているのか分からないものの、そもそも部長や課長等の「補助機関」への「(外部)委任」の例などは存在しないと考えられる。常識的にあり得ないし、そもそも「法的」根拠が必要だ。
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三 以上からする結論は、何だろうか。
おそらく確実に、斎藤元彦は<ウソをついた>ということだ。
実際的に見ても、知事のもとに置かれる「第三者委員会」の設置あるいは「第三者弁護士への調査委託」に関して、かつまたマスメディア上も注目されてきたこの「委員会」の「調査対象」について、斎藤元彦の意思・意向が反映されなかったとは、つまり課長レベルでだけ決められていたとは、到底考えられない。
斎藤元彦はそこまで「あほ」ではないだろう。
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「フリー記者/県保有情報の漏洩の第三者委員会〔「三つめ」委員会のこと—秋月〕の推薦依頼をした文書が去年12月に出ていますが、これ斎藤知事名で書かれていてですね、その調査対象には週刊文春電子版も入っている。
これ、依頼するときに斎藤知事は知っていたということですね。
知事名で出された文書で知事が知らないはずはないと思うんですが、知っていたということで間違いないでしょうか。」
「斎藤元彦知事/あの、私は存じ上げてません。
「フリー記者/えっ。斎藤知事名で出した文書の内容を知らなかったということですか?
その中に週刊文春の電子版を調査対象にするということが書かれて、依頼しているんですが、知らないということですか?」
「斎藤元彦知事/あの、行政というものはですね。
知事名や大臣名で出される文書っていうおはたくさんあるんですけれど、それの決裁権者というのは全て知事名で出されるから、知事が決裁ではなくて、…決裁権者というのは部長さんであったりとか課長さんとか、それぞれ委任されていることがありますので、全てのことが私の名前で出されているからといって、私が全て決裁しているっていうわけではないことは、ご理解いただけると思います。」
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以上の部分は、斎藤元彦が自分にではなく部下に(週刊文春電子版を調査対象とした)責任を押し付けた部分として話題になっているようだ。
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二 斎藤元彦は「行政というものはですね」などと言って、「行政」のプロ・専門家らしき口吻だが、上の説明には、斎藤元彦における「行政・行政法」に関する無知がある。
「決裁」と「委任」というのが上の発言に出てくる専門述語のようだ。
しかし、斎藤元彦は、「専決」およびこれと同義の「内部委任」という語をなぜか使っていない。
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宇賀克也・行政法概説III—行政組織法·公務員法·公物法(有斐閣、2012年)p.52.にこうある。
「専決/国·地方公共団体をとわず、実務上広く行われている行政事務の処理方法として、専決と呼ばれるものがある。これは、内部委任とも呼ばれるが、権限を対外的には委任せず、また代理権も付与せずに、実際上、補助機関が行政庁の名において権限を行使することをいう。
行政庁Aの決裁権限を補助機関である課長Bが最終的に行使することを内部的に認め、BがAの名において当該権限を行使する方式である。形式的にはA の名において権限が行使されるので、Aが処分庁として扱われる。」
斎藤元彦の説明に真実性があるとすれば、同知事(行政庁)が課長(法務文書課長。補助機関)に「専決」権限を認めた(=「内部委任」)、ということだろう。
しかし、どのような権限・事務処理を「補助機関」の「専決」とするかは、あらかじめ「〜県専決(・代決)規程」というような規定を「行政庁」(県の場合多くは県知事)が定めておかなければならず、それがあってはじめて「課長」は自己の判断で「決裁」することができる。斎藤元彦は、自分が定めた(ことになっている)「専決規程」を見てみるがよい。
さらにまた、「専決」規程により「決裁」権が「課長」にあるとかりにしても、知事—課長の指揮監督権が消失するわけでは全くない。知事は「専決」権者を指揮することができ、事後的に事務処理の結果を「報告」させることもできる。これらは<拘束力>をもつ。
したがって、「課長」が「専決」したので、私(知事)は知りません、責任はありません、などと県知事は絶対に言うことができない。
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だがそもそも、「三つめ」の調査のための委員(弁護士)の推薦を県弁護士会に依頼するという場合、そのような事務は頻繁にある事務、あるいは定型的な事務ではないので、「専決」規程があらかじめ定めているとは考え難い。
とすると、斎藤元彦の言う「委任」を「内部委任」と理解しないかぎり、課長の「専決」だったという斎藤元彦の説明は、信用できない。
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ついで、「委任」とは、行政庁の権限の別の機関への「委任」であって当初の行政庁Aの権限が別の機関(新しい行政庁になる)に移ってしまうことをいう(前掲・宇賀p.41-42)。
そして、この委任には「法的」根拠が必要であり、斎藤元彦は上で「委任」をどういう意味で用いているのか分からないものの、そもそも部長や課長等の「補助機関」への「(外部)委任」の例などは存在しないと考えられる。常識的にあり得ないし、そもそも「法的」根拠が必要だ。
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三 以上からする結論は、何だろうか。
おそらく確実に、斎藤元彦は<ウソをついた>ということだ。
実際的に見ても、知事のもとに置かれる「第三者委員会」の設置あるいは「第三者弁護士への調査委託」に関して、かつまたマスメディア上も注目されてきたこの「委員会」の「調査対象」について、斎藤元彦の意思・意向が反映されなかったとは、つまり課長レベルでだけ決められていたとは、到底考えられない。
斎藤元彦はそこまで「あほ」ではないだろう。
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