「安倍さんは選挙期間中、『私を選ぶか、小沢代表を選ぶか』と演説した」、「安倍首相は、本来ならば参院選惨敗の直後に辞めておくべきだった」。
安倍(まだ現首相)が上のように発言したのは事実だ。このことを朝日新聞の社説は、安倍退陣を強く要求する理由の一つとして明記した。産経新聞の一部の記者も同旨のことを述べた。
古い話題だが、しっかりと思い出しておく必要がある。安倍の発言・演説内容は事実で、それは首相選択選挙としての安倍対小沢という闘いならば自分に有利だろうとの安倍氏の判断があったからだろう。しかし、この点を安倍は最後まで又は一貫して強調したわけでは全くなかった。それはもともと参院選(第二院のかつ半数の改選)が首相・政権選択選挙では全くない、ということを彼が意識または知悉しているがゆえだっただろう。
マスコミ論調もまた、安倍首相かそれとも小沢首相かという選択の選挙、少なくとも自民党政権か民主党政権かという選択の選挙として位置づけて報道したのか。全くちがっていた。朝日新聞を中心とする「サヨク」メディアは<逆風三点セット>を煽ったのであり、安倍の基本的理念(憲法改正等々)の是非すら、重要な争点または対立軸としてはとり挙げなかったのだ。
従って、選挙後も、安倍の目指す基本的方向が否定されたわけではないとの論評・分析があったし、それは「民意」の適切な認識だっただろう。
しかるに、選挙に自民党が大敗してみれば、まるで<安倍政治>全体が否定されたかのムードを朝日新聞等々は作りだした(憲法改正反対を明言し主要な争点とした社民党・共産党が議席を減らしたことは大きな話題とはされなかった)。その一つとして、この「サヨク」新聞が利用したのが、上記の安倍発言だったのだが、このいわば情報<策略>に、意識的にか、無意識でか、御厨貴という人は加担するか、屈服している(産経の一部の記者も同様)。
本当に首相として「安倍を選ぶか、小沢を選ぶか」を最大の争点とした選挙だったなら、安倍・自民党は勝利していただろう。確かなデータは手元にないが、(わからない・無回答が第一位だったかもしれないが)首相として誰がふさわしいかの世論調査において、安倍は小沢を一貫して上回っていた。安倍対小沢なら、安倍は確実に勝っていた。
自民党を大敗させた「民意」は、安倍・自民党与党内閣ではなく小沢・民主党内閣を作れ、というものでは全くなかった、と考えて、まず間違いはない。多くの人が、民主党に投票した者も含めて、民主党が勝てば、小沢・民主党政権ができる、などとは考えていなかったはずだ。
読売新聞9/14一面に、同政治部記者・遠藤弦は書いている。-「安倍路線は、参院選で『ノー』を突きつけられた」。ここでの「安倍路線」の意味内容にもよるが、読売の記者が一面でこんなに簡単にサラッと書いてしまうのだから、怖ろしいものだ。
読売新聞の多数の政治部記者もまた<戦後体制>にどっぷりと浸っているのだろう。朝日新聞記者と同じ(朝日の場合は意図的に誤っているのだが)認識に結果として立っている。
「安倍路線」が否定されたと自民党員・議員たちが理解して、安倍カラーとは異なる、加藤紘一が支持するような人物が自民党総裁・首相になれば、自民党はますます弱体化し(本来の保守層は離れ)、日本国家も(中国や北朝鮮とは仲良くなるかもしれないが)ますます衰亡の道、「自立」性喪失の道を歩むだろう。
何かに櫻井よしこは書いていた-自民党は、左にブレれば負ける。一時的に民主党から浮動層の支持を奪い返してもほとんど無意味だ。大衆=衆愚の人気とり政党が二つもできるようでは、日本は本当に「危ない」。