〇毎日新聞、7週間以上前だが、5/02付朝刊。OBの岩見隆夫の連載「近聞遠見」は「改めて『マッカーサー憲法』」という見出し。そして、現憲法制定過程を素描して最後にこう書く。
 「現憲法は完全にマ元帥ペースで作られた。評価はともかく、占領中の<押しつけ>であることははっきりしている」。
 毎日新聞紙上にしては(?)率直な断定で、文句はない。
 <押しつけ>との指摘に護憲論者、とくに憲法九条二項護持論者は敏感なようで、①日本国憲法は鈴木安蔵ら日本人の民間研究会の案を参考にしたとか、②九条は幣原喜重郎が提案したとか、言っている。このような主張・詮索にほとんど意味はないことを知るべきだ。上の②
とおらく将来も断定できない。①は日本人の諸種の、例えばA~Hの案の中にGHQの案と類似のものが偶々あったというだけのこと。さらには、GHQの示唆によって鈴木安蔵らが行動したらしいとの事実も明らかにされている。
 もともと、かりに<押しつけ>でなくとも、憲法に不備・状況不適合な条項があれば改正するのは当たり前のことだ。
 〇毎日新聞6/22付朝刊。
 何を思ったか、今頃になって、1面で諸君!(文藝春秋)廃刊の理由につき、「保守系雑誌に扇情的な言葉が広がり」、<基本は保守だが「反論も含め幅のある議論を」>という姿勢が風潮に抗しきれなかったのも「遠因」とされる、と推測している。
 「保守」論壇側に問題があると指摘し、「保守」が自らの首を絞めたという「逆説」を語りたいようだ。
 いったい毎日新聞の社説・論説委員の「思想」は何なのか? 記者内部の噂話・雑談程度のことを活字にしないでほしい。
 14-15面で、なんと戦後論壇の概観! 図表等を入れると、2面分活字で埋まっているわけでもない。よくぞまぁ、新聞記者というのは、大胆なことができるものだ。多少の勉強や聞きかじりで、対米関係を軸にした「戦後論壇史」を書けると考えた記者がいるのだから、驚きだ。
 その中央の図表?によると、左から「共産党、新左翼」、「進歩派(リベラル)」、「現実主義」、「保守派」、「歴史見直し派」と並んでいる。
 研究論文、専門書だとそれぞれの<定義・意味>を明記しないと無意味・無謀のはずだが、そんな期待を新聞記事に期待してはいけないのだろう。
 「現実主義」という<思潮>があるとはほとんど知らなかった。その意味も問題だが、あったとして、5つうちの一つに位置づけられるのか? そこに含まれている人々を「現実主義」で一括するのはかなり無理がありそうだ。
 東京大学法学部の現役憲法学教授・長谷部恭男は、この「現実主義」の最左端あたりに位置づけられている。はて? 五百旗頭真もこの仲間?の右の方にいるからまぁいいか。
 しかし、高坂正堯あたりから始まり、岡崎久彦、田久保忠衛も、寺島実郎佐々木毅も、坂元一哉福田和也も「現実主義」派なのだから、ほとんど無意味なグループ分けではないか、との強い印象を覚える。
 さて、では毎日新聞の社説・論説委員の「思潮」はいずれに属するのか? 朝日新聞と同じだと、図表では幅狭くなってきている「進歩派(リベラル)」に違いない。