前者が印象に残り、こうして今まで憶えている。
有力三候補のうち、政権与党および東京都の支部の支援を受けたのは増田寛也だった。有力政党で小池支持はなかったかと思われる。
選挙の結果が「正しい」とは限らない。あるいは、「正しい」か「誤り」かという問題設定をすること自体に問題があると、最近は感じている。<現実>はそれなりの必然性あるいは「やむをえなさ」によって生じたと<合理的に>推認したい人たちも多いのかもしれないが、それは過ちだ。
ともあれしかし、都知事となるという<現実>を手にしたのは小池百合子で、増田ではなかった。増田寛也には何の個人的な好悪の情はないし、小池についても全く同じ。
しかし、やはり興味深いのは、自民党等が公式に(都連も含めて)支持・推薦した候補が圧倒的に敗れたことで、これは、好ましい<選択肢>が自民党等(の候補)以外にもう一つあれば有権者のかなりの部分が、 「自民党」の名前とか機関決定に関係なく、もう一つの「選択肢」に投票する可能性があることだ。立ち入らないが、似たことは最新の大阪府知事・大阪市長の選挙でも起きた(反自民・反民主の<維新の会>候補の圧勝だった)。
自民党と安倍晋三内閣は、国政レベルでは「もう一つの選択肢」の欠如のゆえにこそ、支持率をまだ高く維持しているようであることを知らなければならないだろう。
もう一つ興味深いのは、略称「つくる会」の、結果としては<現実>と同じになった小池支持の判断(役員決定だろう)だ。小池の方が増田よりも「歴史認識」が近い、または「つくる会」の活動に理解をより示してきた、というのが根拠だったかと思われる。
これに対して、<現実>にはまたは結果としては無様(ぶざま)な判断だったことになったのは「日本会議」だ。おそらくこの団体・組織は、自民党が支持・推薦する候補を支持・推薦する、というほとんどルーティン的な思考と決定をしたものと思われる。
そのかぎりでは、はるかに「つくる会」の方が<自由な>あるいは<柔軟な>思考ができていたわけだ。
○ 2007年3月に正規にこの欄を立ち上げたとき、「新しい歴史教科書をつくる会」という団体があるのを知っていたが、<分裂>等々に関する知識はほとんどなかった。
但し、一度だけ、西尾幹二・国家と謝罪(徳間書店、2007)の中の、とくに手厳しい、全人格的な(または学者・研究者ないし<保守>活動家全面についての)八木秀次批判についてこの欄で言及したことはある。
今では、例えば、以下の書物を持っているし、たぶんとっくに熟読し終わっている。
したがって、種々の経緯については、その頃よりもはるかに詳しい。
小林よしのり責任編集/新しい歴史教科書をつくる会編・新しい歴史教科書を「つくる会」という運動がある(扶桑社、1998)。
鈴木敏明・保守知識人を断罪す-「つくる会」苦闘の歴史(総和社、2013)。
小林よしのり・ゴーマニズム戦歴(ベスト新書、2016)の関係部分。
西尾幹二・藤岡信勝らの書物等は除く。
こうした「歴史」を知ると、いろいろなことが分かる。
例えば、なぜ、八木秀次は、産経新聞または月刊正論で継続的に「重用」され続けているのか。
10年ほど前に西尾幹二が感じていたことと、私は基本的に同感で、八木秀次は「信用できない」。
また、ついでに記せば、天皇・皇室敬慕を謳っているにもかかわらず、譲位問題についての今上天皇に対する<きわめて個人的な嫌悪感>を示す、最近の文章部分に喫驚したこともある。
また、渡部昇一がいわば初期または第一次の(西尾幹二理事長時代の)「つくる会」には何ら関与しておらず、西尾幹二の退任後に関係をもち始めたことも、私には興味深い。
屋山太郎がどうやら反西尾・反藤岡側で、産経新聞社・扶桑社側に立って<政治的>活動をしたのも、なるほどと思わせる。この人は、八木秀次とともに「教育再生会議」に関与していたはずだ(屋山太郎批判はさんざんこの欄でした。国家基本問題研究所の立派な「理事」の一人だ)。
櫻井よしこは、「つくる会」の運動とは関係がなかった。さらに言及したいが、2000年刊行の憲法とは何か(小学館)は自衛隊違憲論のほかにも「左翼的」議論がある(政教分離という基本問題への言及が全くないことには既に触れた)。
この人は、今のごとき<保守派のラウド・スピーカー>(某左翼論者-名前を忘れた-)ではなかった。
また、櫻井よしこが2015年夏の安倍内閣・戦後70年談話の評価を、のちにまとめた本の当該部分の「追記」で実質的に反対方向に変えるという<信じがたい荒業>をしていることをこの欄で指摘したが、その際に支持するとして明記したのは、「中西輝政、伊藤隆」の月刊正論上等の論考による安倍談話の「歴史認識」批判だった。
それを記載しているときにも感じたのだが、中西輝政はともかく、安倍70年談話の「歴史認識」批判者としては、少なくともその次に「西尾幹二」の名を明記してよかっただろう。
しかし、おそらくあえて、櫻井よしこは意識的に西尾幹二を除外している。
<保守>的論壇の人間関係など私が知る由もないが、おそらく、西尾幹二と櫻井よしこの間の人間関係は、良くはないようだ。
もちろん、このように二者択一的に提示されれば、私は西尾幹二の側に立つし、西尾幹二により近い。
しかし、西尾幹二には語ってみたいこともある。いや、もう少し、「つくる会」について書いてからにしよう。