秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

姜尚中

0911/反日声明署名者リストと最高裁の「劣化」?

 〇前々回に掲載した、2010.05.10「韓国併合」100年日韓知識人共同声明/日本側署名者のリストを見ていて、種々の感想がわく(※付きは発起人)。
 大江健三郎鶴見俊輔という、歴史・日韓関係や国際法の専門家でも何でもない者が<日韓併合条約>無効と断じる声明に加わっている。二人は<九条の会>呼びかけ人として共通する。小田実、井上ひさしも、存命であれば加わっていたのだろう。

 東京大学教授・同名誉教授という肩書きが大学教授たちの中では目立つようだ。和田春樹※を始めとして、荒井献(名誉教授・聖書学)、石田雄(名誉教授・政治学)、板垣雄(名誉教授・イスラム学)、姜尚中(教授・政治学)、小森陽一※(教授・日本文学)、坂本義和※(名誉教授・国際政治)、高橋哲哉(教授・哲学)、外村大(准教授・朝鮮史)、宮地正人(名誉教授・日本史)。姜尚中も高橋哲哉もちゃんと(?)いた。大江健三郎等々をはじめ、出身大学を調べれば、東京大学関係者はさらに多いに違いない。

 東京大学所属だから、こういう声明にその<権威>を利用されるのか、それとも、東京大学所属(・出身者)には、他大学に比べて、この声明にも見られるような、一見良心的・「進歩的」な、<左翼・反日>主義者が多いのか?

 新聞・放送関係者で名を出しているのは、さすがに朝日新聞とNHKのみ。今津弘(元朝日新聞論説副主幹)、小田川興※(元朝日新聞編集委員)、山室英男※(元NHK解説委員長)。
 それに、かつて「T・K生」というまるで在韓国の韓国人からの通信文かの如きニセ記事を連載し続けていた岩波書店の「世界」の現役編集長が発起人として堂々と名を出していることも特記されるべきだろう。岡本厚※(雑誌『世界』編集長)。

 その他、佐高信、吉見義明(中央大学教授・日本史)等々の「有名な」者たち。井筒和幸(映画監督)が<左傾>していることは知っていたが、これに名を出すとはエラくなったものだ。

 〇前回に書いたことの、余滴。

 参政権の所在・参政権者の範囲といった国家の基本問題について、司法権の頂点・最高裁判所の憲法「解釈」が誤っていれば、いったいその国家はどうなるのか。現行憲法・法制度上、最も<権威>または<現実的通用力>のある「解釈」を示すことができるのは、最高裁判所だ(日本ではこう呼ばれる。国によっては憲法裁判所)。いくらでも自由に批判し、判例変更を求めることはできるが、現行憲法・法制度上、最高裁の判決には誰も法的には異議申立てができない。否定も含めて変更をできるのは、最高裁判所自ら(但し、大法廷)に限られる(是正するための訴訟・主張方法等をも井上は書いているが省略)。

 井上薫は園部逸夫が関与した平成7年最高裁判決の「第二段落」に対して「裁判史上永遠に残る大失敗」と最大級の批難の言葉を投げつけているが、そのように批判しても、いかに井上らの「禁止説」の方が憲法「解釈」として正当であったとしても、最高裁が採用した「解釈」がいわゆる<有権的>解釈になってしまう。

 政治性をも帯びた重要な問題につき、最高裁が<道を外せば>、是正には相当の、あるいはきわめて厳しい困難さが残ってしまう。裁判所・裁判官の頂点にいる最高裁判所(・裁判官)の<劣化>をも、心ある国民は懸念し、怖れなければならないのではないか。

0909/資料・史料-「韓国併合」100年日韓知識人共同声明/日本側署名者。

 史料-2010.05.10「韓国併合」100年日韓知識人共同声明/日本側署名者

 

 日本側署名者 ※は発起人

 荒井献(東京大学名誉教授・聖書学)、荒井信一※ (茨城大学名誉教授・日本の戦争責任資料センター共同代表)、井口和起※(京都府立大学名誉教授・日本史)、石坂浩一※ (立教大学准教授・韓国社会論)、石田雄(東京大学名誉教授・政治学)、石山久男(歴史教育者協議会会員)、李順愛(早稲田大学講師・女性学)、出水薫(九州大学教授・韓国政治)、李成市※(早稲田大学教授・朝鮮史)、李鍾元※(立教大学教授・国際政治)、板垣雄(東京大学名誉教授・イスラム学)、井筒和幸(映画監督)、井出孫六(作家)、伊藤成彦(中央大学名誉教授・社会思想)、井上勝生※(北海道大学名誉教授・日本史)、今津弘(元朝日新聞論説副主幹)、上杉聡(大阪市立大学教授)、上田正昭(京都大学名誉教授・日本史)、内田雅敏(弁護士)、内海愛子※(早稲田大学大学院客員教授・日本―アジア関係史)、大江健三郎(作家)、太田修※(同志社大学教授・朝鮮史)、岡本厚※( 雑誌『世界』編集長)、沖浦和光(桃山学院大学名誉教授)、小田川興※(元朝日新聞編集委員)、糟谷憲一※(一橋大学教授・朝鮮史)、鹿野政直※(早稲田大学名誉教授・日本史)、加納実紀代(敬和学園大学教授・女性史)、川村湊(文芸評論家・法政大学教授)、姜尚中(東京大学教授・政治学)、姜徳相(滋賀県立大学名誉教授・朝鮮史)、木田献一(山梨英和学院大学院長・キリスト教学)、木畑洋一(成城大学教授・国際関係史)、君島和彦(ソウル大学教授・日本史)、金石範(作家)、金文子(歴史家)、小谷汪之(首都大学・東京教授・インド史)、小林知子(福岡教育大学准教授・在日朝鮮人史)、小森陽一※(東京大学教授・日本文学)、坂本義和※(東京大学名誉教授・国際政治)、笹川紀勝(明治大学教授・国際法)、佐高信(雑誌『週刊金曜日』発行人)、沢地久枝(ノンフィクション作家)、重藤都(東京日朝女性の集い世話人)、清水澄子(日朝国交正常化連絡会代表委員・元参議院議員)、東海林勤※(日本キリスト教団牧師)、進藤栄一(筑波大学名誉教授・東アジア共同体学会会長)、末本雛子(日朝友好促進京都婦人会議代表)、鈴木道彦(独協大学名誉教授・フランス文学)、鈴木伶子(平和を実現するキリスト者ネット代表)、関田寛雄(青山学院大学名誉教授・日本キリスト教団牧師)、徐京植(作家・東京経済大学教授)、高木健一(弁護士)、高崎宗司※(津田塾大学教授・日本史)、高橋哲哉(東京大学教授・哲学)、田中宏(一橋大学名誉教授・戦後補償問題)、俵義文(子どもと教科書全国ネット21事務局長)、趙景達※(千葉大学教授・朝鮮史)、鶴見俊輔(哲学者)、外村大(東京大学准教授・朝鮮史)、仲尾宏(京都造形芸術大学客員教授)、中塚明※(奈良女子大名誉教授・日朝関係史)、中野聡(一橋大学教授・歴史学研究会事務局長)、中村政則※(一橋大学名誉教授・日本史)、中山弘正(明治学院大学名誉教授・経済学)、永久睦子( I女性会議・大阪会員)、成田龍一(日本女子大学教授・日本史)、朴一(大阪市立大学教授・経済学)、林雄介(明星大学教授・朝鮮史)、原寿雄(ジャーナリスト)、針生一郎(美術評論家)、樋口雄一(高麗博物館館長)、飛田雄一(神戸学生青年センター館長)、平川均(名古屋大学教授・経済学)、深水正勝(カトリック司祭)、藤沢房俊(東京経済大学教授・イタリア近代史)、藤永壮(大阪産業大学教授・朝鮮史)、福山真劫(フォーラム平和・人権・環境代表)、古田武(高麗野遊会実行委員会代表)、布袋敏博(早稲田大学教授・朝鮮文学)、前田憲二(映画監督・NPO法人ハヌルハウス代表理事)、松尾尊兊※(京都大学名誉教授・日本史)、水野直樹※(京都大学人文科学研究所教授・朝鮮史)、三谷太一郎(政治学者)、南塚信吾(法政大学教授・世界史研究所所長)、宮崎勇(経済学者・元経済企画庁長官)、宮嶋博史※(成均館大学教授・朝鮮史)、宮田毬栄(文筆家)、宮地正人(東京大学名誉教授・日本史)、宮田節子※(歴史学者・元朝鮮史研究会会長)、文京洙(立命館大学教授・政治学)、百瀬宏(津田塾大学名誉教授・国際関係学)、山口啓二(歴史研究者・元日朝協会会長)、山崎朋子(女性史研究家)、山田昭次※(立教大学名誉教授・日本史)、山室英男※(元NHK解説委員長)、梁石日(作家)、油井大三郎(東京女子大学教授・アメリカ史)、吉岡達也(ピースボート共同代表)、吉沢文寿(新潟国際情報大学准教授・朝鮮史)、吉野誠(東海大学教授・朝鮮史)、吉松繁 (王子北教会牧師)、吉見義明(中央大学教授・日本史)、李進煕(和光大学名誉教授・朝鮮史)、和田春樹※(東京大学名誉教授)/ 総 105人

0757/NHK「売国反日プロデューサー」列伝-長井暁・濱崎憲一ら。


 西村幸祐責任編集・撃論ムック/NHKの正体(オークラ出版、2009.07)p.150-1による、「NHK売国反日プロデューサー列伝」。執筆主体は「本誌『NHKデビュー』取材班」。
 ・長井暁 所謂「女性国際戦犯法廷」を取り上げた番組「問われる戦時性暴力」のチーフ・プロデューサー。2005年01月〔13日〕、「涙」の会見。2009年退職〔この退職を親友あるいは同志の朝日新聞はわざわざ報道した〕。東京学芸大学出身。同大学「史学会」所属。同会は「反君が代・日の丸・反つくる会教科書」を会是とし、中心教授は君島和彦
 ・池田理代子 「問われる戦時性暴力」を実質的に仕切った。早稲田大学出身。上記「法廷」を仕掛けたバウ・ネット(VAWW・NET)の運営委員
 ・塩田純 NHKスペシャル「日中戦争―なぜ戦争は拡大したか」で名を馳せた。2005年に海老沢会長辞任に触れて「これで作りたい番組が作れる環境になった」と発言。
 ・濱崎憲一 <JAPANデビー>チーフ・ディレクター。1992年入局。「血も涙もないNHKディレクター」とも評される(p.25、林建良)。
 <JAPANデビー>第一回に関する日本李登輝友の会等からの質問状に対して「被取材者からクレームはきていない」と嘘をつく柯徳三(台湾)は放送直後に電話で濱崎にこう言ったという-「私は濱崎さんに言うたんだ。あんた、中共の息がかかっているんだろう。私が聞くところによると、朝日新聞とNHKは、北京に呼ばれてチヤホヤされて、貢物を持って行ったんだろう!」(p.34、井上和彦)。上の柯徳三の抗議に対して濱崎は番組を支持する視聴者のコメント(のみ)をファクスで柯に送ったが、濱崎は「ファクスを送ったことは内緒に」と頼んだ(p.26、林建良)。別の文章によると、濱崎は柯への電話で「さっきのFAXは、柯さんだけに留めてほしい」と「泣きついてきた」(p.32、井上和彦)。
 顔だけの印象では殆ど何も言えないだろうが、少なくとも、思慮深い、聡明な、という印象は、全くない。この程度の人物が
 ・高橋昌廣 ハングル講座プロデューサー。民団・総連との関わりも「噂されている」。
 本名(戸籍名)は上田昌廣。2005年に「団体職員・上田昌弘(53)」の名で娘「Sちゃん」渡米手術費用の寄付を国民に呼びかけ、二億円を集める。妻もNHKディレクターで夫婦で年収4千万円。
 「Sちゃんを救う会」メンバーには、例えば以下も含めて、NHK「エリート職員」も多数いた。
 ①永田恒三(会代表、長井暁とともに「女性国際戦犯法廷」問題に関与)、②倉森京子(「新日曜美術館」プロデューサーで、姜尚中を司会者とした)、③塩田純(前掲)、④濱崎憲一(前掲)。
 〔なお、サンデー・ブロジェクト(朝日系)を観るのを止めたあと、「新日曜美術館」をしばしば観ていたのだが(壇ふみ司会の時代)、今年たぶん4月から姜尚中(と局アナ)に代わって、完全に止めた。姜尚中起用は上の倉森京子の「意向」のようだ
〕。

0663/佐伯啓思・自由と民主主義をもうやめる(幻冬舎新書、2008)を読む・その2。

 たぶん2/05か2/06に佐伯啓思・自由と民主主義をもうやめる(幻冬舎新書、2008)を全読了。
 1 何となく感じていたこと又は他の人も書いているようなことを、佐伯自身の文章で読むと、新鮮な感がするところがある。
 p.142以下。21世紀は各国の争い・闘いの時代(ジョン・グレイの言う「帝国主義」時代)だ。日本の立場・国力・意思・価値観が問われる。「国力」にとって最も重要なのは「文化・価値の力」だ。
 しかし、「日本特有の事情」により、日本の「価値」は「今のわれわれ」には見失われている。「日本特有の事情」とは、「戦後の日本の、事実上のアメリカへの追従」だ。
 あの戦争でただ負けたのではなく「価値観の上で負けた」、負けたのは「道徳的に間違っていたから」だ、というのが「公式」的理解になった。「左翼進歩派」のみならず「戦後の日本政府」も基本的にはこの理解だった。
 「自主的な」戦後の構築を日本はせず、日本の「戦後政治」は「アメリカの占領政策の基本構造」の受容から始まる。「あの戦争についての、押しつけられた歴史観に抵抗して、自国の立場を主張することなく、…エネルギーを経済に振り向け、…奇跡的な経済成長を遂げた」。日本人の生活のほとんどはなおも「日本的な」習慣によるが、「根本的なところは、アメリカによって『骨抜き』にされてしまっている」。かつての価値が否定され、「精神的な空白」が生じ、「アメリカ的なもの」への「精神的従属」が生まれた。
 2 日本の独自性・「愛国心」 に触れつつ、次のことも明言している。
 p.164以下。「実際、今日の日本は、ある種の崩壊と言ってよいような、すさまじい過程に入っている気がする」。
 「今、日本の政治はまったくの機能不全に陥って」いる。今の日本には「国民の意思」がほとんど確かなものとしては存在しない。
 近年の選挙で示されたのは、「まともな民主主義」とは言えない。民主主義の機能のためには国民に「自国に対する責任」感、広義での「愛国心」が必要だが、今の国民には見あたらない。某調査によると自国に「誇り」もつ国民の割合は日本は74国中71位、戦争への参加は59国中「圧倒的に最下位」で日本は15%(中国90%、韓国75%、アメリカ64%)。
 3 姜尚中のナショナリズム・パトリオティズム概念の曖昧さを指摘したのちの、丸山真男への言及が新書本にしてはやや長い。
 p.175以下。「ナショナリズム、愛国心」対「自由、民主主義、平和」という構図を典型的に表明したのが、丸山真男の戦後の諸論文だった。アカデミズムの「権威」を背景にジャーナリスティックな場でも活動した「左翼系オピニオンリーダー」、「左翼思想におけるカリスマ的な人物」。丸山の民主主義論等は「権威主義」を排除するものの筈だが、「丸山門下や丸山信者は、丸山さんを絶対的な権威にしてしまっているのが、面白い」。
 途中だが、もう一回つづける。

0371/水島朝穂(早稲田大学)は学者なら真摯に反応したらどうか。

 1/03頃に、川人博・金正日と日本の知識人(講談社現代新書、2007.06)を読了。
 親北朝鮮の「日本の知識人」を批判した本だが、具体的に固有名詞が挙げられ、批判的論評がされているのは、姜尚中、和田春樹、佐高信、水島朝穂の4名。
 和田春樹佐高信の二人についてもはや言う必要もない。姜尚中については、この本とは別の観点からいつか近い将来に述べたいことがある。
 残る水島朝穂はこのブログでも批判的に取り上げたことのある早稲田大学所属の憲法学者だが、私も所持はしている同著・憲法「私」論(小学館)や他の発言等を対象に、著者の川人(弁護士、特定失踪者問題調査会常務理事)は次のように批判する(p.91~p.99)。
 ・2002年9月以降に(いったん北朝鮮から)帰国した五人について、安倍晋三(当時、官房副長官)は(帰国させないという)「駄々っ子のような方向」を選んだが、返せば(帰国させれば)よかったと主張した。「ここまで人を罵倒する発言をする」なら、「もっときちっと根拠を示しなさい」。
 ・具体的には第一に、五人は日本に滞在したいとの意向だったのに、日本が無理やり北朝鮮に連れて行くべきだ、という主張は、「国際人権法の、あるいは日本国憲法の、どの規定に基づき正当性を有するのか、ぜひ、憲法学者として責任をもって明確にしてもらいたい」。
 ・第二に、北朝鮮に戻った五人とその家族が無事に日本に帰国できるという「具体的根拠を述べていただきたい」。
 ・上記の憲法「私」論の中で、「韓国での米軍犯罪、日本の戦争責任」等には多くを語りながら、「拉致問題」には「わずか一〇行程度触れるだけ」で、「北朝鮮国内の人権侵害に関しては、一言も語っていない」。「中国国内での人権侵害にも一切触れていない」。また、「国境を超えた市民運動」が重要との旨を主張しつつ、「北朝鮮独裁者と対峙して活動しているNGOや民衆」について一切語らず、「北朝鮮独裁体制に親和的なNGOの活動を紹介するのみ」。
 総括的に、こんな批判的な言葉もある。
 「民衆の闘いを忘れ、独裁者の『メンツ』を気にするのが、憲法学者のとるべき態度であろうか」。(p.96)
 「自らの思想や論理を真摯に総括することもなく、『半径平和主義』(狭い『平和主義』のわく)ともいうべき殻の中に閉じ籠もる、それが水島氏の姿」だ。(p.98)
 「真にアジアの民衆の人権と平和を希求している」のなら、「まず、過去の暴言を真摯に反省していただきたい」。(p.98)
 名指しされてこうまで批判されると―姜尚中は週刊誌上で<応戦>したようだが―、ふつうの人ならば、反論(あるいは釈明、可能性は少ないが「真摯な反省」)をしたくなるだろう。ましてや、水島朝穂は、著書の数も多そうな大学教授なのだ。このまま黙っていれば「学者」の名が廃(すた)り、批判を甘受していることになってしまうのではないか。水島氏よ、真摯に対応したら、いかがか(すでにどこかでしているのかもしれないが、私は気づいていない)。
 いや、そもそも水島朝穂は学者・研究者ではなく活動拠点を早稲田大学に置く政治活動家なのかもしれない。とすると、弁護士・川人博についても―かりにこの文を彼が読んだとして秋月瑛二についても-<「保守・反動」が何やら喚(わめ)いている>といったレッテル貼りで内心で反論したつもりになって済ますのかもしれない。
 怖ろしいのは、憶測にはなるが、水島朝穂ほどには目立たなくとも、憲法改正反対・憲法九条擁護の憲法学者には、水島の上記のような対北朝鮮反応、対北朝鮮感情と同様のものを<空気>として抱え込んでいる憲法学者が日本には少なくない、と見られることだ。日本の憲法学者・憲法学界とはかくも<異様な>ものだということは広く大方の共通理解になってよいものと思われる。
 ところで、この本は昨年6月に刊行されているが、新聞・雑誌の書評欄で採り上げられているのを読んだことはなく、その存在自体を昨年末に知った。テーマは単純ではあるが、少なくとも紹介くらいはされる価値のある本だろう(新書で読みやすくもある)。
 だが、かりにだが、どの新聞・雑誌も採り上げなかったとすれば、それは、姜尚中、和田春樹、佐高信、水島朝穂という特定個人(の主張)を批判している書物のためなのかもしれない。
 各「知識人」または新聞・雑誌への各寄稿者(またはその可能性ある特定個人)に遠慮し、その背後にいるグループ・団体・出版界にも遠慮しているのだとすれば、新聞・雑誌の「表現・出版の自由」も疑わしいものだ。この例のみで言うつもりは全くないが、一般論としても、新聞・雑誌の「書評欄」を(参考にしてもいいが)<信頼>してはいけない。
  
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