秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

大阪府福祉部子ども家庭局

2611/審査請求認容答申(・裁決)の一例③。

 行政不服審査法による審査請求にかかる認容答申(・裁決)の実例。つづき。太字化は掲載者。
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 第五 審査会の判断
 2 判断とその理由
 ((1)のつづき) 
 (2)本件処分の内容とそれに至る判断過程について
  本件弁明書は、上記のとおり本件診断書「⑱日常生活における動作の障害程度」の記載から第一に、「屋外での生活制限はあるが屋内ではほぼ日常生活ができる状態と考えられる」とし、また、審査請求人の主張に対して「日常生活が著しい制限を受ける」とまでは言えない、第二に、「一人では全くできないとする項目もあるが、年齢が○歳ということで年齢的にできない可能性もあり判断できない」と記述し、よって施行令別表が定める二級の要件に該当しない、と結論づけている。
 以下、これら二点の判断の適否について、まず検討する。
 第一に、本件診断書⑱の記載から「屋外での生活制限はあるが屋内ではほぼ日常生活ができる状態と考えられる」と判断するのは、つぎの理由により、合理的なものであるかは疑わしい。同じことは結果として、「日常生活が著しい制限を受ける、とまでは言えない」という判断についても言える。
 項目⑱は「日常生活における動作」の計17項目について、状態が良い場合の「一人でもうまくできる場合には○と記載する」から状態が悪い場合の「一人では全くできない場合には×と記載する」までの4段階評価で診断結果を記載している。
 そのうち、本件児童については、最も状態が悪い「×」(「一人では全くできない場合」)と診断された項目が、半数を超える10項目もある(右・左の肢体部分に分けて記載されている場合は両者ともに×である場合に限る)。17項目のうちほとんどが「屋内」でも行われる動作であることをも考慮すれば(明確に「屋外」の動作は第17項のみである)、「屋外での生活制限はあるが屋内ではほぼ日常生活ができる状態と考えられる」とするのは、合理的な判断であるとは言い難い。
 第二に、「一人では全くできないとする項目もあるが、年齢が<省略>歳ということで年齢的にできない可能性もあり判断できない」とするのも、つぎの理由により、本件処分を正当化する理由にはならない、と言うべきである。
 すなわち、これは障害によるのか年齢によるのかいずれであるのかが判断できない、という趣旨だと解されるが、障害による可能性があることを全く否定しているわけではない。したがって、項目⑱における診断結果について年齢による影響がある可能性を全く無視することがかりにできないとしても、法令が定める2級の要件に該当しないとする理由にはなり得ない。
 なお、平成30年7月19日付の処分庁回答書第二(本答申の後掲参照)は、前記第二として引用した部分が、平成28年8月23日に判定医から行った「聴取」の結果を反映したものだとするが、かりにそのとおりだとしても、上述のとおり、前記の弁明書記載の部分では、本件処分を正当視する理由にはなり得ない。

  (ⅰ)審理員意見書が本件児童の症状について示していると判断することのできる「解釈」は、つぎの理由により、採用できない
 処分庁が作成して提出した本件別紙は判定医からの処分庁による「聴取」内容について、障害によるのか年齢によるのか「現時点では判別できないことから非該当とした」、と最終的にまとめている。さらに、審理員意見書は、この部分について、「症状が固定したとは言えない、ということを述べていると解釈される」と記している。
 まず、上の前者の叙述は処分庁が平成28年8月23日に判定医から行った「聴取」の内容を、保存されている聞き取りメモおよび担当市への連絡メモとともに担当者の記憶をもとに作成されたものであり、しかも処分庁の担当者は聞き取りから一年半も経過した平成30年2月9日に文書化してまとめて審理員に提出したものである。したがって、この文書の記載内容がはたして本件判定医自身が診断書作成時に説明した内容をそのままに反映しているか否かが疑わしく、当該部分の正確さをそのままに信頼することはにわかにはできない。
 また、その正確さを相当に信頼するとしても、その意味するところは十分に明確なものではない。
 すなわち、障害によるのか年齢によるのか「現時点では判別できないことから非該当とした」ということは「判別」できなければ「非該当」にすることができるということを論理的な前提にしているが、判定医自身が作成した文章であればともかく、当該判定医が本当にそのような前提に立って「聴取」に応じたのかについては、なお疑問が残る。
 したがって、審理員意見書がこの部分について行っている、判定医は「症状が固定したとは言えない、ということを述べている」という「解釈」もまた、ただちに採用することができるものではない、と言うべきである。
 また、審理員意見書は、このような「解釈」を前提として、本件児童が法2条1項にいう「障害の状態にある者」に該当しない、又はその症状が別紙認定要領の2(1)にいう「障害が固定した」とは言えない、と推論しているように解される(必ずしも明白ではないところはある)。しかし、かりにそうだとしても、そのようにただちに結論づけることもできない。
 むしろ、その他の多くの資料は、本件児童には「障害」があることを前提として記述され、作成されていることは、つぎに述べるとおりである。
 例えば、第一に、本件処分も、本件弁明書も、審理員意見書とは異なり、前提として上のような「解釈」、すなわち「症状が固定したとは言えない」とする「解釈」を採用していない。
 第二に、小児神経科の専門医師である診断医が本件原診断書において、本件児童につき、項目①「障害の原因となった傷病名」として「<省略>」という旨を手書により記載等をしており、判定医もこれを前提としているごとくである。
 第三に、判定医は、処分庁作成・提出の「本件別紙」において、「聴取」された内容として、「2級の基準に該当すると考えられる」とも述べており、この部分は、本件児童は「障害」の状態にあることを前提としている。
 第四に、審査請求人が審査請求時に提出した平成28年10月○○日付の別件診断書において、当該文書の作成者・記載者である専門医師は、本件児童の障害名について「<省略>」、その「原因となった疾病・外傷名」について「<省略>」と手書で明記している。
 (ⅱ)なお、審理員意見書は、上のように「解釈される」と記しつつ、そのあとで、本件児童が認定基準第二の(3)が定める2級の基準に該当しないこと、および認定基準第一が確認的に記している、施行令別表の「二級/十五号」が定める2級該当の要件を充足していない旨を、何らの条件や留保をつけることなく、つづけて述べている。
 しかしながら、対象児童の症状が別紙認定要領の2(1)にいう「障害が固定した」ものではなく法2条1項にいう「障害の状態にある者」に該当しないのであれば、そもそも障害の程度が2級に該当するか否かを問題にする必要はないのであり、審理員意見書が「障害」であること自体を否定すると解される「解釈」に言及しながら、同時にいわば並列的に、障害の程度、すなわち2級該当性を問題にしているのは、論理的に矛盾している。
 また、審理員意見書がその判断理由の中で「認定基準第二」の(3)に言及しながら、また、「本件にかかる法令等の規定」の中に「認定基準第二」の(2)を含めているにもかかわらず、その具体的な認定に直接に関係する同(4)や(5)にまったく論及していないのは、きわめて奇妙である

  本件弁明書が述べる本件処分の理由では本件処分、つまり2級に該当しないという根拠を説明することができない、ということはアで述べた。
 さらに進んで、2級に該当するか否か(2級該当性)について、本件弁明書または審理員意見書が言及しておらず、考慮していない要素等がなかったのかどうか、また、考慮すべき要素または事情または資料があったとすれば、それらはどのように考慮することが少なくとも可能であったか、について検討する。
 まず、つぎの二つの専門医師による本件児童にかかる診断書類がある。
 第一に、本件診断書における診断医師による診断の項目「⑱日常生活における動作の障害程度」において、すでに言及したように、計17項目の動作のうち10項目が最も状態が悪い、「一人では全くできない場合」に該当する「×」と診断されている。
 また、同本件診断書「㉒現症時の日常生活活動能力」の項においては、「日常生活の一部において同年令の児より、やや多く介助、援助を要す」と記載され、同「㉓予後」において、「今後も麻痺は残存し、継続的なリハビリ、介助を要す」と記載されている。
 第二に、別件診断書は、「3/動作・活動」において「自立―○」、「半介助―△」、「全介助又は不能―×」までの3段階評価で、計18項目に関する診断結果を示しているが、計18項目のうち「自立―○」は3、左右で「自立―○」と「半介助―△」が分かれているのは1、「半介助―△」が3、左右で「半介助―△」と「全介助又は不能―×」が分かれているのは4、「全介助又は不能―×」が7であって、障害の程度は決して軽いものではないことがうかがえる。
 しかも、この「診断書・意見書」は対象児童が○歳8か月に当たる平成28年10月○○日に作成されており、対象児童が○歳4か月に当たる同年6月○○日に作成された本件診断書から約4か月後のものである。それにもかかわらず、「自立―○」と診断された項目が3項目、(左)が「自立―○」、(右)が「半介助―△」と診断された項目が1項目に留まっている。
 また、後掲の対比表のとおり、本件診断書とこれを詳細に比較対照させてみると、同一のまたはほぼ同一の項目について、「寛解」が2項目、「差なし」が3項目であるのに対して、「差なしまたは悪化」が2項目、「悪化」が4項目存在している。このように児童が成長とともに可能な動作が増える時期であると考えられる4か月間においても、本件児童について上記障害が寛解したとみられる事項が増えていないことが明らかである。 
  本件診断書と別件診断書の対比表
   <省略>
 なお、この別件診断書は本件処分時に処分庁が知り得たものではないが、本件診断書の内容にもとづいてつぎに言及する認定基準第二の定めを十分に考慮するならば、本件児童の症状が客観的にはこのようなものであることをより正確に判断することができ、異なる内容の処分に至った可能性が十分にあった、と言うことができる。

  つぎに、本件に関係する定めが、認定基準第二の(2)~(5)にある。既述のとおり、本件弁明書はこれに全く言及しておらず、審理員意見書は判断理由中で同(3)を、それが定める要件に該当しないとする結論だけを示すために言及し、本件関係法令等の記載の中で同(2)の規定内容だけを記している。
 認定基準第二の(3)は「一部例示すると」として、つぎのものは2級に該当するとする。
 ①一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」、②「四肢に機能障害を残すもの」。
 同(5)は「身体機能の障害の程度と日常生活における動作の障害との関係」を「参考として示すと」として、その「イ」で「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、「日常生活における動作の多くが『1人で全くできない場合』又は日常生活における動作のほとんどが『1人でできるが非常に不自由な場合』をいう」と記述する。また、「ウ」で 「機能障害を残すもの」とは、「日常生活における動作の一部が『1人で全くできない場合』又はほとんどが『1人でできてもやや不自由な場合』をいう」と記述する。
 また、(4)は、「日常生活における動作と身体機能との関連」は厳密に区別できないとしつつ「おおむね」として、その関連性を判断する際の考慮要素を大きく三分しつつ計16項目列挙している。
 これらは(同(2)も含めて)、本件児童が2級の要件を充足するか否か(2級該当性)に明らかに関係する定めであるが、処分庁弁明書はいっさい言及しておらず、審理員意見書も、上記のとおりの趣旨で(2)と(3)に言及するにすぎない。
 そして、さらに立ち入れば、(4)で列挙される16項目について本件診断書の⑱項で用いられている4段階の診断基準を適用すれば、ほぼ類似の結果に至るのであって、かつ、(5)で定義されているような(2)が定める一般的な要件を充たしている可能性が十分にあることを否定することはできない。
 もちろん、これらの定めは、(施行令別表の一部を確認的に再述していると見られる認定基準第一とも異なり)法令上の定めではなく、かつ(2)は「~を総合的に認定するとし」、それ以降も「一部例示」、「参考」、「おおむね」等と明記されているように、これらを形式的、機械的に適用することが想定され、また要求されているものではない。
 しかし、処分庁の本件弁明書はこれらにいっさい言及してはいないこと(なお、審理員意見書も同じであること)からすると、本件処分にあたってもいっさい又はほとんど考慮されていない、と判断することができる。もとより本件弁明書や審理員意見書が認定基準第二の法的性格に鑑みて、これらをいっさい無視することができると主張することがまったく不可能ではないとしても、処分庁は(審理員意見書も)「関係法令等」の中に認定基準第二等を明確に含めている。
 そして、そのような認定基準第二等への考慮を欠いて行われた、とりわけ認定基準第二の(2)・(3)の具体的適用の仕方や(4)・(5)の具体的定めの意味内容への考慮を欠く本件処分は、意味内容やそれらの適用を考慮すべき条項の一部を考慮していないものとして、その判断過程には大きな瑕疵があったというべきである

 (3)結論
 以上により、(1)の理由付記の不備という違法性が本件処分の取消し事由になるかという検討をするまでもなく、(2)のイで言及した審理員意見書の一つの「解釈」は採用し難いことを前提としたうえで、とりわけ同(2)のアとエで述べた点において、本件処分の判断過程は適正かつ合理的なものではなく、その結論もまたそのような判断にもとづく点において違法である。そして、この違法性は、ただちに本件処分の取消し事由になる。

 (4)付言
 本件処分の違法性または不当性に直接に関係するものではないが、審理員意見書作成にいたるまでの、本件審査請求にかかる審理過程には、少なくともつぎの二点について明瞭な瑕疵がある、と判断することができるので、併せて、付記する。
 第一に、処分庁弁明書は、審査請求書添付の「身体障害者診断書・意見書」を、申請時に添付していなかったことを理由にして(審査請求にかかる審理の)「対象ではない」として無視しているが、この文書のこうした扱いは違法である
 審査請求人は、行政不服審査法30条1項にいう処分庁の弁明書に対する「反論書」とは別に同法32条1項が認めるように「証拠書類又は証拠物」を提出できるのであり、これは審査請求にかかる処分の申請時に提出されていたかどうかに関係はない。
 第二に、審理員が処分庁提出の本件別紙について審査請求人に閲覧等の機会を与えず(従ってそれに対する反論・反証の機会を与えないままで)審理対象・審理資料としていることは、違法である
 行政不服審査法32条2項および同38条1項以下によれば、32条2項により処分庁から提出された「当該処分の理由となる事実を証する書類その他の物件」について審査請求人は閲覧又は交付を求めることができ、この求めがあれば原則としてこれを拒むことができない、とされている。
 そして、この証拠書類等閲覧・交付を求める手続上の権利を行使することができるためには、処分庁から証拠書類等が提出されたことを先ず審査請求人は通知される必要があると解されるところ、本件における審理過程 では、この通知は何らなされず、したがって審査請求人には本件別紙に対する反論等の機会は与えられなかった、と認定することができる。
 さらに、関連して追記すれば、上記32条2項による処分庁から審理員に対する証拠書類等の提出は審理にかかわる重要な行為であるにもかかわらず、本件別紙については提出と受領の日を本件処分庁も本件審理員もそれぞれ明確に記録していないことがうかがえる(部会長からの回答要請に対する回答書第一)。
 このような本件別紙に関する文書管理等はじつに杜撰であって、そもそも、本件別紙の提出がもつ法的意味を、両者ともに全く認識していなかった可能性が十分にあると推測される。

 付・調査審議の経過
 平成30年 6月11日  諮問書の受領
 平成30年 6月13日  審査関係人に対する主張書面等の提出期限通知
  主張書面等の提出期限:6月27日
   (口頭意見陳述申立期限:6月27日)
 平成30年 6月28日 第1回審議
 平成30年 7月 2日 審査会(部会長)から審査庁に対し回答の求め
 平成30年 7月 5日 審査庁が審査会に対して回答書(子家第1899号)を提出(回答書第一。)
 平成30年 7月18日 審査会(部会長)から審査庁に対し回答の求め
 平成30年 7月19日 審査庁が審査会に対して回答書(子家第2007)を提出(回答書第二。)
 平成30年 7月27日 第2回審議
 平成30年 8月28日 第3回審議
 平成30年 9月28日 第4回審議
 平成30年 DD月 FF日 第5回審議、答申内容決定
  以上

 平成30年 GG月 HH日
 大阪府行政不服審査会第○部会
  委員(部会長)XX
  委員     YY
  委員     ZZ
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 以上。
 この事案につき、処分庁の弁明書、審理員意見書、審査庁の意見にほとんど添った(請求棄却の)審査会答申案を作成し、審査会の審議以前に全委員に配布していたのは、審査会の事務の担当者の一人の近藤富美子、これを指示し、かつ容認・事前了解していたのは、法規課長の松下祥子(いずれも当時)。
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2610/審査請求認容答申(・裁決)の一例②。

 行政不服審査法による審査請求にかかる認容答申(・裁決)の実例。つづき。
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 第五 審査会の判断
 1 法令等の規定
 本件処分庁および審理員において、本件に関係する法令等の定めの摘示は十全のものではないと判断されるので、あらためて全てを列挙し、正確に引用する。
 (1)特別児童扶養手当等の支給に関する法律(昭和39年法律第134号)(以下、「法」という。)
 第2条第1項「この法律において『障害児』とは、二十歳未満であつて、第五項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態にある者をいう。」
 同条第5項「障害等級は、障害の程度に応じて重度のものから一級及び二級とし、各級の障害の状態は、政令で定める。」
 第3条第1項「国は、障害児の父若しくは母がその障害児を監護するとき、又は父母がないか若しくは父母が監護しない場合において、当該障害児の父母以外の者がその障害児を養育する(その障害児と同居して、これを監護し、かつ、その生計を維持することをいう。以下同じ。)ときは、その父若しくは母又はその養育者に対し、特別児童扶養手当(以下この章において「手当」という。)を支給する。」
 (2)ア 特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令(昭和50年政令第207号)(以下、「法施行令」という。)
 第1条第3項「法第二条第五項に規定する障害等級の各級の障害の状態は、別表第三に定めるとおりとする。」
 イ 法施行令・別表第三(第一条関係)(以下、「施行令別表」とい う。)
   <省略>
 (3)特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令別表第三における障害の認定について(昭和50年9月5日付け児発第576号厚生省児童家庭局長通知)
 同・別紙/特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令別表第三における障害の認定要領(つぎに記載部分にかぎり、以下、「別紙認定要領」という。)
 「1 この要領は、特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令(昭和五十年七月四日政令第二百七号。以下「令」という。)別表第三に該当する程度の障害の認定基準を定めたものであること。
 2 障害の認定については、次によること。
 (1)法第二条第一項にいう「障害の状態」とは、精神又は身体に令別表第三に該当する程度の障害があり、障害の原因となった傷病がなおった状態又は症状が固定した状態をいうものであること。なお、「傷病がなおった」については、器質的欠損若しくは変形又後遺症を残していても、医学的にその傷病がなおれば、そのときをもって「なおった」ものとし、「症状が固定した」については、症状が安定するか若しくは回復する可能性が少なくなったとき又は傷病にかかわりなく障害の状態が固定したときをいうものであり、慢性疾患等で障害の原因となった傷病がなおらないものについては、その症状が安静を必要とし、当該医療効果が少なくなったときをいうものであること。
 (6)各傷病についての障害の認定は、別添1「障害程度認定基準」により行うこと。
 3 障害の状態を審査する医師について
 (1)都道府県又は指定都市においては、児童の障害の状態を審査するために必要な医師を置くこと。」
 (4)別紙認定要領・別添1/特別児童扶養手当/障害程度認定基準
 第6節/肢体の障害
 第4/肢体の機能の障害
 1/認定基準(この1を以下、「認定基準第一」という。)
 肢体の機能の障害については、次のとおりである。
  <省略>
 2/認定要領(この2を以下、「認定基準第二」という。)
 (1)(本答申において、省略)
 (2)肢体の機能の障害の程度は、関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する。
 なお、他動可動域による評価が適切でないもの(例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となっているもの)については、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定する。
  (3)各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。<省略>
      (注)<略>
 (4)日常生活における動作と身体機能との関連は、厳密に区別することができないが、おおむね次のとおりである。
 ア 手指の機能
 (ア)つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)
 (イ)握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)
 (ウ)タオルを絞る(水をきれる程度)
 (エ)ひもを結ぶ
 イ 上肢の機能
 (ア)さじで食事をする
 (イ)顔を洗う(顔に手のひらをつける)
 (ウ)用便の処理をする(ズボンの前のところに手をやる)
 (エ)用便の処理をする(尻のところに手をやる)
 (オ)上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)
 (カ)上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)
  ウ 下肢の機能
 (ア)片足で立つ
 (イ)歩く(屋内)
 (ウ)歩く(屋外)
 (エ)立ち上がる
 (オ)階段を上る
 (カ)階段を下りる
 なお、手指の機能と上肢の機能とは、切り離して評価することなく、手指の機能は、上肢の機能の一部として取り扱う。
 (5)身体機能の障害の程度と日常生活における動作の障害との関係を参考として示すと、次のとおりである。
 ア (本答申において、省略)
 イ 「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、日常生活における動作の多くが「1人で全くできない場合」又は日常生活における動作のほとんどが「1人でできるが非常に不自由な場合」をいう。
 ウ 「機能障害を残すもの」とは、日常生活における動作の部が「1人で全くできない場合」又ほとんどが「1人でできてもやや不自由な場合」をいう。
 (5)行政手続法(平成5年法律第88号)
 第8条第1項「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない。ただし、法令に定められた許認可等の要件又は公にされた審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかであるときは、申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。」
 同条第2項「前項本文に規定する処分を書面でするときは、同項の理由は、書面により示さなければならない。」

 2 判断とその理由
 (1)理由付記について
 ア 本法にもとづく処分には国の法律である行政手続法が適用され、同法8条第1項が定める処分の際の理由の提示、同第2項が定める書面による処分の場合の理由付記の要求も、適用される。
 行政手続法も明示的に要求する理由付記の趣旨は、行政庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、申請者に処分の理由を知らせて不服の申立てに便宜を与えることにあり、その趣旨からして、単に根拠規定を示すだけでは足りず、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して処分を行ったかを、申請者において、その記載自体から了知し得るものでなければならないと解されている(最高裁昭和60年1月22日判決・民集39巻1号1頁等)。
 イ 本件処分にかかる通知書の理由の欄には、「本件児童の障害の程度が、特別児童扶養手当等の支給に関する法律第2条第5項(同法施行令第1条第3項別表第3)に定める障害の程度に該当しないため」との記載しかなく、児童の障害の程度が、施行令別表のうちのいずれに該当していないと判断したのかが明記されていない。もとより、認定基準第二の(1)~(5)の定めをどのように考慮し、検討したのかについても、全く明記されていない。
 このような理由付記では、理由付記がなされていないのにほとんど等しく、行政手続法8条に違反し、違法である
 このような程度の理由付記では、処分庁の判断が慎重かつ合理的になされたのか自体を疑わせるし、また、申請者の不服の申立てに便宜を与えるという機能をほとんど果たしていない、と言わざるを得ない。
 ウ なお、本件弁明書は、本件処分の理由を、本件診断書の「⑱日常生活における動作の障害程度」の内容から、「屋外での生活制限はあるが屋内ではほぼ日常生活ができる状態と考えられる」、また、「一人では全くできないとする項目もあるが、年齢が○歳ということで年齢的にできない可能性もあり判断できない」ので、認定基準第一が定める「2級」の「認定基準に達していない」と記述している。
 もともと、審査請求の審理過程における処分庁弁明書の記載によって処分にあった理由付記の欠如または不備が治癒されるものではない。
 また、上のような理由の記述においても、本件診断書によって「屋外での生活制限はあるが屋内ではほぼ日常生活ができる状態」だと判断した十分な説明がなく、認定基準第二の(1)~(5)はどのように考慮され、適用されたのかについての記載が全くない。
 なお、この弁明書が言及する認定基準第一の「2級」の「認定基準」は、「前各号に掲げるもののほか、」という語句を省いている以外は、施行令別表の「二級」に関する「十五号」の定めと同一である。
 エ このように、本件理由付記は行政手続法に違反して違法である。そして、理由付記義務違反という瑕疵は手続または形式の瑕疵であって、処分の効力にただちには影響しないと考えられなくはないが、その瑕疵が処分の効果・内容にどのような影響を与えたかとは無関係に、理由付記の瑕疵があれば処分自体を違法とし、理由付記の瑕疵は直接に取消し事由となるとするのが最高裁判例でもある(上記最高裁判決等参照)。
 したがって、この点を理由とすることにのみによって、本件処分は違法として取り消されるべきものとなる可能性が高い。
 但し、最高裁判例の射程範囲にはなお議論の余地が全くないわけではないであろうこと等に鑑み、本件処分の実際の過程または内容等に照らして、本件処分が取り消されるべきものであるかは総合的に判断することとする。
 よって、本件処分は理由付記について違法ではあるが、それをただちに取り消し原因とするかどうかは結論を留保して、本件処分の過程・内容の論点へと立ち入る。
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 つづく。
 この事案につき、処分庁の弁明書、審理員意見書、審査庁の意見にほとんど添った(請求棄却の)審査会答申案を作成し、審査会の審議以前に全委員に配布していたのは、審査会の事務の担当者の一人の近藤富美子、これを指示し、かつ容認・事前了解していたのは、法規課長の松下祥子(いずれも当時)。

2609/審査請求認容答申(・裁決)の一例①。

 行政不服審査法による審査請求にかかる認容答申(・裁決)の実例。
 以下、実際の答申の文書のまま。但し、元来省略されてネット上に公表されている部分がある。また、今回のこの欄への掲載に際して省略または記号化した部分がある。
 認容の旨(審査請求人の請求を肯定し、被申立て人・処分庁の言い分を排斥する趣旨)の審査庁に対する答申である。
 このほか、①「本件処分庁および審理員において、本件に関係する法令等の定めの摘示は十全のものではない」と断言されており、②「本件処分の違法性または不当性に直接に関係するものではないが、審理員意見書作成にいたるまでの、本件審査請求にかかる審理過程には、少なくともつぎの二点について明瞭な瑕疵がある、と判断することができる」と明言され、「併せて、付記」がなされている。
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 諮問番号:平成30年度諮問第A号
 答申番号:平成30年度答申第B号

  答 申 書
 第一 審査会の結論
 大阪府知事(以下「処分庁」という。)が審査請求人に対して平成28年8月30日付けで行った特別児童扶養手当等の支給に関する法律(昭和39年法律第134号)にもとづく特別児童扶養手当認定請求却下処分(以下「本件処分」という。)の取消を求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)は、認容すべきである。

 第二 事案の概要
 事案の概要は、おおむね次のとおりである。
 1 平成28年8月30日、処分庁は審査請求人に対して本件処分を行った。
 2 平成28年10月10日、審査請求人はこの日付けで、大阪府知事(以下、「審査庁」ともいう。)に対して本件審査請求を行った。その際に審査請求人は、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)にもとづいて「身体障害者手帳の申請」のために利用した、平成28年10月CC日付「身体障害者診断書・意見書(<省略>」を添付した(以下、これを「別件診断書」という。なお、この別件診断書を作成した医師は、本件にかかる後掲の「診断医」または「判定医」ではない)。
 3 平成29年8月14日、処分庁は、審理員に弁明書(以下、「本件弁明書」という。)を提出した。その際、本件弁明書に「別紙認定要領」(本答申の後掲参照)3(1)により都道府県に置くこととされている医師が平成28年8月23日に記載し最終的に作成して本件処分庁に手交した本件にかかる「特別児童扶養手当認定診断書」を添付した(以下、当該医師を「判定医」、この「診断書」を判定医の記載・捺印等の部分も含めて「本件診断書」といい、そのうち判定医の記載・捺印等の部分以外を「本件原診断書」、本件原診断書に診断結果等の記入等を行った医師を「診断医」という。)。
 4 平成29年8月15日、審理員は審査請求人による反論書の提出期限を同年9月4日とし、本件弁明書を審査請求人に送付した。
 5 平成30年1月31日、審理員は審査請求人が反論書の提出意向がない旨を電話で確認した。
 6 平成30年2月9日、処分庁は「診断書判定について」と表記する文書を作成し、「数日後」に審理員に提出した。
 7 平成30年2月27日、審理員は審査請求人及び処分庁にあてて審理手続終結の旨を通知した。
 8 平成30年3月6日、審理員は審理員意見書(以下、「審理員意見書」という。)及び事件記録を審査庁に提出した。その審理員意見書には、処分庁が提出した上記の「診断書判定について」と表記する文書を「別紙1」として添付した(以下、この添付文書を「本件別紙」という。)。
 9 平成30年6月6日、審査庁は同日付けの諮問書を大阪府行政不服審査会に提出した(同年6月11日、同審査会事務局が受領した)。

 第三 審査関係人の主張の要旨
 1 審査請求人
 電話で「屋外での活動は難しいが屋内では十分生活ができる」と言われたが、「屋内でも階段の登降、着がえなどは介助が必要」である。また、「○○○市療育センターに親子通園をしているため母親が仕事をする事ができず、生活が厳しい」。
  以上により、本件処分の取消しを求める。
 2 審査庁
 本件審査請求は、棄却すべきである。

 第四 審理員意見書の要旨
 1 審理員意見書の結論
  本件審査請求は棄却が妥当である。

 2 審理員意見書の理由
 (1)本件原診断書には「⑱日常生活における動作の障害程度」には、「一人では全くできない場合」に該当する項目が複数あり、「㉒現症時の日常生活活動能力」では「日常生活の一部において同年令の児より、やや多く介助・援助を要す」と診断されているが、本件別紙によれば判定医は「対象児童は○歳であり年齢的なものでできないのか、障害が原因でできないのか現時点では判別できないことから非該当とした。」とのことである。
 「別紙認定要領」(後掲参照)の2(1)が「法第2条第1項にいう『障害の状態』とは、精神又は身体に令別表第3に該当する程度の障害があり、障害の原因となった傷病がなおった状態又は症状が固定した状態をいうものであること」、「『症状が固定した』については、症状が安定するか若しくは回復する可能性が少なくなったとき又は傷病に関わりなく障害の状態が固定したときをいうもの』」と定めていることからすると、この判定医の本件別紙上に記述された見解は、「症状が固定したとは言えない、ということを述べているものと解釈される」。
 (2)対象児童が「2級相当」の①「一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」、②「四肢に機能障害を残すもの」に並ぶ障害状態とは言えず、認定基準第一(本答申の後掲参照)が定める要件を充足しない、また、「2級基準」として法施行令別表第三 十五号が定める要件に該当しない、とした処分庁の主張は正当である。
 (3)審査請求人は「本件児童の日常生活状態に加えて、生活が厳しい旨を述べているが、手当の支給要件には関係がない」。
 (4)よって、「本件児童の障害の状態が施行令別表第3に定める障害等級の2級に該当しないとして行った本件処分は、違法又は不当なものであるということはできない」。
 ----
 つづく。
 この事案につき、処分庁の弁明書、審理員意見書、審査庁の意見にほとんど添った(請求棄却の)審査会答申案を作成し、審査会の審議以前に全委員に配布していたのは、審査会の事務の担当者の一人の近藤富美子、これを指示し、かつ容認・事前了解していたのは、法規課長の松下祥子(いずれも当時)。
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