秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

大連立

0368/中西輝政の自民党下野・政界再編論は妥当か。

 ほとんど毎日何かの「政治的」意見・感想を書いていた時期と違って、最近の書き込みは、対象とする素材の選択に時機遅れが生じうる。今回もそうかもしれない。
 中西輝政は、信頼に足りる論者の一人だと評価している。
 但し、諸君!1月号(現在発売中は2月号)の中西輝政「”最後の将軍”福田康夫の哀しき『公武合体』工作」の結論めいた部分(p.37)は俄かには賛同することができない。
 この箇所で中西は、政界再編のためには大連立よりも政権交替の方が近道だ、自民党が民主党に政権を渡し、民主党の醜態によるリスクを覚悟のうえで「本来の政界再編への道」を着実に進むへきだ、そうでないと「重大な世界の転機」に「日本は未来永劫に未来を切り拓く力を得ることができない」、と説く(p.37)。
 「保守新党」の求心力は「利権」でなく「理念」だ、「農協、建設業界」といった層に基盤を置いたのでは新しい時代を生き抜けない、という、そのあとの指摘には同感したい。
 だが、将来に「保守新党」が誕生すること自体に反対はしないが、現時点で政界再編のために<政権交替>すべし、と主張する必要があるのだろうか、あるいは、現時点でのそのような主張は妥当だろうか。
 中西は明確に自民党の下野と民主党政権の誕生を展望しているが、日本共産党の小選挙区票が民主党に流れること等によって前回総選挙時よりも民主党に有利な客観的状況にあることはたしかだとしても、<民主党政権>誕生の「リスク」はやはり大きく、自民党敗北・下野を前提とするような議論をする必要は<まだ>ないのではないか。
 <民主党政権>誕生によって、仮の表現を使えば、自・民派社・民派にキレイに議員が分かれて、「理念」の差による<政界再編>がなされればそれはそれでよいとは思うが、その可能性、すなわち<民主党政権>誕生→政界再編の可能性はどの程度あるのだろうか。
 民主党の中にも、前原誠司(京都大学のある地域が選挙区)、枝野幸男、渡辺周、長島昭久等々がいる、と中西はいう。だが、1993年の細川・反自民連立政権(社会党が政権入り)・その翌年以降の自社さ連立政権(再び社会党が政権入り)の経験からいうと、政権を担っているかぎりは民主党は分裂せず、政界再編の可能性はむしろ少ないのではないだろうか。
 民主党政権の失政(→政権崩壊)による政界混乱→政界再編はありうるだろうが、民主党政権の失政・「保守新党」の政権奪取までの政治・行政の「リスク」、簡単に言うと、社会民主主義的、大衆迎合的、容コミュニズム的な政策運営(「組合」の意見が法律になってしまうような事態)は、日本を現在以上に危殆に瀕せしめるように思われる。
 自民党敗北・下野を中西は確実視しており、その前提で議論しているのかもしれない。だが、それほどに確実なことなのだろうか。自民党が2/3を獲得できなくとも、民主党らの野党が過半数をとる可能性もまた絶対的あるいは確実とはいえず、<ねじれ>が続いたままの事態(これは7月参院選以降の「民意」だ)の継続もありうるのではないか。
 というわけで、<俄かには賛同できない>。民主党中心政権誕生の「リスク」は、私には<こわい>。それよりは、あくまで相対的・比較的にはだが、福田政権でも<よりマシ>だ(トップだけ変わってどれだけ差がでるかという問題はあるが、麻生太郎政権の方がさらに<よりマシ>だ)と感じている。

0345/産経・花岡信昭のコラムは傲慢だ。

 産経の客員編集委員という肩書きの花岡信昭が書いたものについては、これまで言及したことがない。
 この人が書いている内容にとくに反対ということはほとんどなかったと思うが、その内容は<教条的な>保守・反左翼の言い分で(つまりよく目にする論調と同じで)、表面的で視野が広くはなく、例えばだが、「正論」執筆者の多く?と比べて、基礎的な又は深く厚い<学識>のようなものをあまり感じなかったからだ。
 花岡が自・民大連立といったん受け容れたかの如き小沢を肯定的に評価したことについて肯定的な評価も一部にはあるようだ。
 私も大連立一般とその可能性の追求に反対はしないし、社民や共産を排しての連立という点も無視してはいけないだろう。
 だが、問題はいかなる点で政策を一致させて<連立>するかにある。この点を考慮しないで(捨象して)当面する論点を大連立一般の是非として設定するのは間違っている。
 小沢一郎の記者会見等の報道によると、きちんとした合意があったとは思われないし、合意があったとしてもその内容が(自民党の本来の政策、これまでの政府の言動等から見て)妥当であったようには見えない。
 仔細はよく分からないが、<大連立>の可能性を残しての<政策協議>に入る、という程度のことであれば、否定・反対するほどのことではないだろう。だが、<政策協議>を経た、安全保障政策・憲法問題に関する基本的一致を含む<政策合意>があってはじめて<大連立>が可能となることは常識的なことだろう。こうした過程を抜きにした、<ともかく大連立を>論ににわかに賛成することはできない。小沢一郎個人のなにがしかの<思惑>が入っているとなればなおさら―これまでの彼の行動からして―警戒しておくに越したことはないかに見える。
 花岡信昭は産経11/14のコラム・政論探求で、「保守派、リベラル派」のいずれの「識者」からも<「大連立」構想への支持がほとんど出なかった>ことを嘆いているようであり、かつ「識者たちが日ごろ主張していることは、頭の中だけの仮想世界が前提となっていたのではないか。現実政治の中でいかに解決していくか、という基本スタンスが決定的に欠けている」と言い切っている。
 上の後半の<八つ当たり>的言明は、いささか傲慢不遜すぎはしないか。花岡自身を含む少数の識者のみが「現実政治」のことを真摯に考え、あとの者たちは「仮想世界」に生きている、かのごとき言明は。
 読売がどういう意味で、どういうレベルでの<連立>を支持していたのかを正確には知らない。一方また、ドイツで大連立を経て同国社民党が単独で政権(ヘルムート・シュミット首相)を担うようになったことくらいの知識はある。
 ドイツの当時の社民党レベルにまで日本の民主党はとくに安全保障政策・憲法問題に関して<成熟>しているのか、というと疑問だ。また、自民党がますます<左傾>していく連立も一般論としては望ましくはないだろう。
 よく分からないことは多い。だが少なくとも、花岡信昭は、上のような不遜なことを<「大連立」放棄の情けなさ>との見出しのもとで書くべきではないだろう。
ギャラリー
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
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  • 2333/Orlando Figes·人民の悲劇(1996)・第16章第1節③。
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  • 2317/J. Brahms, Hungarian Dances,No.4。
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  • 2309/Itzhak Perlman plays ‘A Jewish Mother’.
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  • 2305/レフとスヴェトラーナ24—第6章④。
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  • 2293/レフとスヴェトラーナ18—第5章①。
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  • 2286/辻井伸行・EXILE ATSUSHI 「それでも、生きてゆく」。
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  • 2283/レフとスヴェトラーナ・序言(Orlando Figes 著)。
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  • 2222/L・Engelstein, Russia in Flames(2018)第6部第2章第1節。
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  • 2203/レフとスヴェトラーナ12-第3章④。
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  • 2152/新谷尚紀・神様に秘められた日本史の謎(2015)と櫻井よしこ。
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  • 2151/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史15①。
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