秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

千夜千冊

2263/「わたし」とは何か(1)。

 一 ときどき覗いているネット上の<松岡正剛/千夜千冊>の最近の思構篇/1757夜は、リチャード・ゴンブリッチ・ブッダが考えたこと—プロセスとしての自己の世界(邦訳書、2009•2013)についてだ。いつもよりかなり長くて、西欧におけるブッダ・仏教の理解等に論及する。興味深かったので、一週間ほど前に一気に読んでしまった。そして、今は内容の詳細をほとんど忘れた。
 上の書の邦訳者である浅野孝雄(東京大学医学部卒、脳神経学者、と松岡はとりあえず紹介する)の著書・別の邦訳書に関心を持ったので、松岡が言及しているつぎの二つを入手してみた。
 1 浅野孝雄・古代インド仏教と現代脳科学における心の発見(産業図書、2014)。
 2 浅野孝雄訳/ウォルター・J・フリーマン・脳はいかにして心を創るのか—神経回路網のカオスが生み出す志向性・意味・自由意志(産業図書、2011)。
 何と魅力的な主題だろうか。
 後者にある浅野の訳者あとがきによると、フリーマン(1927〜)は物理学・数学、電子工学、哲学、医学、内科学・神経精神医学をこの順で学び、1995年以降、Berkeley の「神経生物学」教授。多数の賞を受け、「哲学」の講義をしたこともある、という。
 この邦訳書の冒頭には日本の読者向けに分かりやすくまとめてもらったという著者の「日本語版への序論」が20頁ほど付いているが、全く理解不能ではないものの、まだむつかしい。
 二 ウォルター・J・フリーマン/浅野孝雄訳・脳はいかにして心を創るのか(2011)の目次のあとの本文・第一章の最初からしばらくは、まだ理解することができ、かつ興味深い。こうだ。
 ——
 「あなたを操っているのは、いったい誰」か。「あなた自身なのか、それともあなたの脳なのか」。もし「あなたの脳でない」とすれば、操っている「あなたとは一体何なのだろう」。
 ルネ・デカルトは「脳を含む身体を、魂が動かす機械」だと考えた。彼によると、「あなた自身が、あなたの脳を統御している」。
 しかし、近年の脳科学は「あなた」または「あなたの脳」がいくぶんかでも「支配力」をもつとの考えを否定する。「神経遺伝学者」は、…。「神経薬理学者」は、…。神経科医師は処方薬を飲むか否かの自由を認めるが、「社会生物学者はその自由さえも奪って」しまう。あなたが薬を服用するのは「幼少時の教育によって形成された従順な行動様式」に従っており、服用しないとすれば「両親に対するあなたの反抗的態度の社会的反復」にすぎないのだ。
 「生まれついた」からか「育てられた」からかという、長く続く生まれ・育ち論争の「核心」にあるのは「遺伝的・環境的決定論という教義」だ。だが、この教義は「あなた自身の積極的関与を否定し、あなたの全ての決定が周囲環境によって強制された」とする点で、大きな問題を孕む。この決定論は、キリスト教神学における運命予定説の遺残」にすぎない。
 以上、上掲書1-2頁。6頁くらいまでは読んだが、省略する。

2189/新型コロナウィルス-池田信夫・松岡正剛。

 新型コロナウィルス(Virus=ヴァイルス)に関して、耳情報や紙情報ではなく、ネット情報に興味深くて有益そうなものがある。
 池田信夫ブログの最近は、ほとんどこれがテーマだ。
 日本の死亡者数、人口あたり死亡者率は異常に少ないらしく(10万人比0.04、1万人比0.004)、その原因探索とそれにもとづく対策を最近は提言している(3/31)。
 また、同ブログマガジン2020年03月30日号の<名著再読>欄の最後の文章も、池田らしい。
 人間の歴史をマクロ?な視点で捉えれば、「資本主義がいいか悪いか」を論じても、「キリスト教と仏教のどっちがいいか」を論じるのと同じように「意味がない」。「人類が地球の生態系にとって最大の疫病だからである」
 おそらくそのとおりだろう。
 記憶に残る池田信夫の表現には、たしか<キリスト教マルクス主義派>というのがあった。なるほど。ジョン・グレイもたぶん、キリスト教またはヒューマニズム批判の論脈の中でマルクスに触れていた。
 秋月瑛二のこの欄は<反朝日新聞・反日本共産党>で始め、途中から<反共産主義・反日本共産党>にサブタイトルを変えたが、これでも些細すぎるかもしれないという気が、この数年はする。
 女系天皇否定か是認かなどという、一部<保守>界隈での激しい論争?など、馬鹿馬鹿しいほどの些少な問題だ。<日本>を主題にするとしてすら。
 新型コロナ・ウィルスによる感染症に関して、当然のことながら、上記のように国・地域によって罹患・発症の程度は異なるようなのだが、ウィルスは<ヒト>には同等に棲みつき増殖もするようで、根本的には、日本か欧米か、グローバリズムかナショナリズムか、とかを論じるレベルの問題ではない。
 肌の色・眼の色等の違いはあっても、二本の脚の上に二本の腕をもつ胴体を乗せ、その上に頭部があって中に脳があり、ふつうは二本の脚を前後に動かして前に進むということでは、人種も民族も関係はない。
 個体か、国家・民族か、人種か、人間・ヒトという種か、動物全体か、生物・生命体全体か、あるいは太陽系宇宙全体(の生態系か)かというという種々の次元が、頭をよぎる。ヒトの一個体の中にも、大腸菌のような別の細菌=生物が「共生」しているらしいのだけれども。
 松岡正剛千夜千冊/生代篇1737夜-2020年03月27日。
 Carl Zimmer, A Planet of Viruses (2011)とその邦訳書(飛鳥新社、2014)についてだが、この書に限らず、論述対象はウィルス全体で、これには「感染症」に関する邦語文献もズラリと掲載されている。池田が取り上げていた書も含む。
 松岡がこたわっているように見えるのは、ウィルスは「細菌」ではなく「生命体」ではない、というおそらく一般的らしい前提の当否だ。「生命」をもつか、したがって「生物」か否かという問題には、生物には動物と植物があり人間は前者で、ヒト科・ヒト属・ヒト種で、…、とかの幼稚な知識では太刀打ちできない。
 「生」とは何か、「死」とは何か。ウィルスが宿主の中で「増殖」するというのはいったいどういう現象なのか。人体自身がが外界の刺激を受けて(急激にかつ悪く)変化しているのだろう。
 「精神」活動の中枢の「脳」も身体にいわば寄生しているので、身体が破壊されれば、各個体は「精神」活動をできなくなる。人間の決定的な<外部依存性>だ。
 そんなことも考える。当たり前のことを確認しているにすぎないだろう。
 
ギャラリー
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  • 2309/Itzhak Perlman plays ‘A Jewish Mother’.
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  • 2293/レフとスヴェトラーナ18—第5章①。
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  • 2286/辻井伸行・EXILE ATSUSHI 「それでも、生きてゆく」。
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  • 2283/レフとスヴェトラーナ・序言(Orlando Figes 著)。
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  • 2203/レフとスヴェトラーナ12-第3章④。
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  • 2152/新谷尚紀・神様に秘められた日本史の謎(2015)と櫻井よしこ。
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