秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

伊吹山

1832/美しい日本-山岳・山稜②ー伊吹山。

 西国三十三カ所霊場の通称「よしみね寺」、いや正式にもたぶん「善峯寺」の北に、別に洛西三十三観音霊場の札所の一つがある。その理由だけで一度参拝したのだが(そして御朱印をいただいたのだが)、その寺院の本堂はたぶん東向きで、その前のテラス部分から、京都市内(盆地)の一部と山稜がよく見える。
 京都市街地からはどの程度よく見えるのかは知らないが、ここからは京都市街東方すぐの山稜で、目立ってすぐに分かるのが、比叡山だ。歴史の知識からすると無骨な印象もあるが、西方からのこの山の姿は、優美だ。頂上部が丸っこくどっしりとではなく、凜として、すっきりしている。
 ところがその左に頂上部に冠雪がまだはっきりと残っている独立峰があって、この山はいったい何なのかがよく分からなかった。比良山系の比叡山に連なる北側にある山だろうというのが、そのときの推測だった。
 ご朱印をいただく際に尋ねてもみたが、面倒くさく感じられたのか?、よく存じませんと言われた。
 そこでのちに地元の人に尋ねてみると、回答はすぐだった。
 伊吹山
 何と、京都市の西郊、長岡京市の北方辺りから、京都市街、京都・滋賀府県境の比良山系、さらに琵琶湖までをも越えて、伊吹山がはっきりと見えたのだった。
 もっと前のある年、JRと名鉄の共用の駅舎のある尾張一宮駅の西口から西方の山並みを眺めていると、穏やかな養老山系の右側(北)に遠く、白い雪が目立つ高い山らしきものが見えた。
 伊吹山だった。
 濃尾平野の西北端よりもさらに西部だと思うが(関ヶ原よりも西)、濃尾平野の中にある尾張一宮の市街からも、伊吹山がはっきりと見えるのだった。
 この地域の人々は、伊吹山の冠雪の程度によって季節の状態や変わり目を知るのだ、という(これは滋賀県等の地域でも同様かもしれない)。
 前回の「1727/美しい日本-山岳・山稜①」(2018/02/11)では、東海道新幹線の乗客を想定して、日本で最もよく近くで見られている幸福な山ではないかと伊吹山のことに触れた。
 しかし、この山は京都盆地の西郊の高台や濃尾平野の少なくともかなりの部分からも、明確に見分けて、眺められている。
 繰り返しになるが、熟達した登山家くらいしか近くで見ることのできない(ほとんど誰からも見られることのない)山岳は日本に多数あるだろう。やはり、伊吹山は特別だ。

1727/美しい日本-山岳・山稜①。

 西穂高山荘に泊まってジャンダルム・馬の背・奥穂高岳頂上を経て奥穂高山荘で寝て、北穂高岳、さらには大キレット・(井上靖「氷壁」にも出てくる)滝谷の上部等を渡り、最後は槍ヶ岳山荘に宿泊して帰ってきたのは、20歳代のことだった。
 単独縦走。当時でも最難路と言われていた(後で詳しくは知った)夏山登山を、まだ新米のうちにしてしまった。
 つぎは後立山連峰の(松本清張の初期短編「遭難」の舞台でもある)双耳峰の鹿島槍か標高日本二位の南ア・北岳にしようと何回も地図や本で「予習」をしたものだったが、翌夏もそのあとも、結局はずっと、夏山の山行すらできなかった。
 もう登れはしないが、車窓から見て、山容が雄大な随一は、東北の鳥海山だ。
 二度とも、羽越本線で秋田から山形県へと入っていく過程で、眺めた。秋田県内からもすでに見えているのだろう。
 頂上から日本海の海岸、芭蕉もむかし訪れたはずの象潟辺りまでずっと長く山稜線が続いていて、その長さ、山容の大きさには目を見張った。空が青く澄んでいたという好天のおかげでもあったのだろう。
 酒田で乗り換えて陸羽西線を新庄方向へと向かっていたときも、酒田・余目付近の平野(庄内平野?)は広いので、その南部はまだ見えていたのではないだろうか。
 酒田の前にいったん遊佐で降りて各停に乗って進んでこともあるだろう。鳥海山が見えていた時間は、じつに長かった。
 富士山の山稜も当然に長いのだろうが、新幹線からはさほど長く続いているようには見えない。また、富士本宮大社からJR富士宮駅まで歩きながら眺めていて、大きな山だとさすがに感じるが、山容全体の印象は(むろん私には)、鳥海山の方が優る。
 山容・山塊が広く大きいと感じたのは、あとは上越線の車窓からの、赤城と榛名くらいだろうか。車窓からは不可能だが、若いときに見た、穂高の稜線の西側にどっしりと構える笠ヶ岳も、大きい。
 鉄道の車窓からは頂上も稜線も(少なくとも頂上部分は)まったく見えず、したがってどの山とは特定した難い山はいっぱいある。
 同じ山形県の月山は、その名はよく知られているが、見えないのではないか。
 北陸本線からの、金沢等の地域の地元の人には見えているのかもしれない白山も、同じ。
 もっとも、前者については出羽三山神社、後者については北麓にあると思われる白山比咩神社を参拝したことはある(神社・神道にかかわる話題は今回は避ける)。
 他にも、標高があり登山好きの人たちには有名だろう薬師岳や黒部五郎岳等々の、いわゆる「裏銀座コース」(現在でもこの呼称が残っているのかを確認してはいない)付近にある山々も、むろん見えない。
 東麓から見える可能性のある白馬岳等は、見られて、幸せな方だ。
 東海道新幹線の線路のすぐ近くにあって、人口でいうと最も多くの日本人がその姿、山塊を見ているのではないかと思われる、最も幸せな山は、岐阜・滋賀の両県にまたがる、関ヶ原の西北にある、伊吹山だろう。
 標高自体は、高山というほどではないだろう。しかし、岩がちの山塊・山容は、近くで見えるために、きわめて大きく感じる。白い雪が残っている期間も、長い。
 名だけしか知られていない山岳に比べて、何とうらやましい山だろう。
 頂上に寺院(またはその末社・祠、伊吹山寺)があり、ご朱印所もあるので、9合目まで路線バスで行き、あとは何とか自力で登ったことがある。
ギャラリー
  • 2679/神仏混淆の残存—岡山県真庭市・木山寺。
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  • 2546/A.アプルボーム著(2017)-ウクライナのHolodomor③。
  • 2488/R・パイプスの自伝(2003年)④。
  • 2422/F.フュレ、うそ・熱情・幻想(英訳2014)④。
  • 2400/L·コワコフスキ・Modernity—第一章④。
  • 2385/L・コワコフスキ「退屈について」(1999)②。
  • 2354/音・音楽・音響⑤—ロシアの歌「つる(Zhuravli)」。
  • 2333/Orlando Figes·人民の悲劇(1996)・第16章第1節③。
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  • 2320/レフとスヴェトラーナ27—第7章③。
  • 2317/J. Brahms, Hungarian Dances,No.4。
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  • 2309/Itzhak Perlman plays ‘A Jewish Mother’.
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  • 2305/レフとスヴェトラーナ24—第6章④。
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  • 2293/レフとスヴェトラーナ18—第5章①。
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  • 2286/辻井伸行・EXILE ATSUSHI 「それでも、生きてゆく」。
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  • 2283/レフとスヴェトラーナ・序言(Orlando Figes 著)。
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  • 2277/「わたし」とは何か(10)。
  • 2230/L・コワコフスキ著第一巻第6章②・第2節①。
  • 2222/L・Engelstein, Russia in Flames(2018)第6部第2章第1節。
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  • 2203/レフとスヴェトラーナ12-第3章④。
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  • 2179/R・パイプス・ロシア革命第12章第1節。
  • 2152/新谷尚紀・神様に秘められた日本史の謎(2015)と櫻井よしこ。
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  • 2151/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史15①。
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  • 2136/京都の神社-所功・京都の三大祭(1996)。
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  • 2118/宝篋印塔・浅井氏三代の墓。
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  • 2098/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史08。
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