タイトルの意味は、正確には、自民党の大敗北。
一 産経新聞や「日本会議」が東京都議選に関して正式にどういう政治的立場を公表していたかは知らない。
但し、実質的にみて、小池百合子に批判的だった、少なくとも自民党に対するよりは小池に批判的で、冷淡だった。
櫻井よしこ・週刊ダイヤモンド2017年6月3日号。
「小池氏の唱えるスローガン『都民ファースト』は、実は『自分ファースト』ではないかと私は感じている。/氏の行動を見詰めれば見詰める程、氏の言動への拒否感は強くなる」。
なお、この週刊ダイヤモンド上の文章は、櫻井よしこらしく、ほとんどは飯島勲と屋山太郎からの聴き取り又は彼らの文章内容に拠っている。
櫻井よしこを理事長とする「研究」所に編集長自身が「評議員」として勤務?しているつぎの二つの月刊雑誌の表紙から。。
月刊Hanada8月号。<総力大特集/小池百合子とは何者か?>
・櫻井よしこ=有本香「『小池劇場』は終わらない」。
・小川榮太郞「小池百合子と日本共産党」。等。
月刊WiLL8月号。河添恵子=赤尾由美=池内ひろ美「都民ファーストに五輪成功の力なし」。
そして、<一冊まるごと櫻井よしこさん>の月刊正論8月号。
<小池劇場の三流喜劇>。屋山太郎、小川榮太郞ほか。
こうして見ると、櫻井よしこ・「日本会議」的<保守>の立場がどうだったかは明白だ。
二 <特定保守>三雑誌は、自民党・安倍晋三内閣支持、という基本線をずっと維持してきた。2015年戦後70年談話、同年末日韓最終決着合意についても。
月刊正論の親元の産経新聞社説は、安倍晋三九条二項存置の改憲案への支持を明確にした。元は伊藤哲夫案だったとされる。
改憲問題はともあれ、このような<自民党・安倍晋三内閣>への断固とした支持の姿勢は、地方議会選挙だが、東京都民の多くに共有されているわけではない、ということが示された。
なぜかを、冷静に考えてみるべきだろう。
地方選挙だから外交・防衛は関係はないし、直接に党中央が指揮を執ったわけでもない。
しかし、国政がらみで語られてきたのは確かだし、都連会長の下村博文には安倍晋三の<仲間・友人>の印象も強い(二次内閣当初に長く文科大臣)。
野党や「左翼」メディアが安倍内閣揺さぶりの方向に向いているのも明らかだ。
とりわけ日本共産党は、<安倍内閣・自民党政治>が混乱しさえすればよい。安倍・自民党の意向どおりに進ませたくない、との強い執念で動いている。どのように政治・社会が動こうと関係がない。ともかくも混乱させ、支持を得る可能性がある案件・主題を設定して、「党勢」や「党員数」の拡大をひたすら目ざしている。
それはそうなのだが、また小池百合子にもいろいろな問題はあるだろうが、では安倍晋三・自民党に全く問題はないのか?
小池百合子を批判している「特定保守」派の人々は、現在の安倍晋三・自民党に、全く問題はないと考えているのか?
かつまた、従来の東京都の自民党(東京都連)の議員団等々に、全く問題はなかったのか?
小池百合子だけを批判してはいけないのではないか?
「特定保守」派の人々の小池百合子批判は、根本的には、自民党ではないから、というだけに等しいようにすら思える。
三 もともと、自民党には、昨年の都知事選挙での敗戦以降、小池百合子の与党または少なくとも是々非々の半分与党的な立場をとるという選択もあった。
小池百合子は「保守」派であり、ずっと自民党籍を残してきた。
しかし、都の自民党は、最初の都議会で、新知事を歓迎するどころか冷笑して揶揄する、<いやがらせ>のような行動に出た。ここに昨日の結果につながる大きなミスがあった。小池百合子は、したたかな「政治家」だ。
小池百合子はおそらく、公明党のほかに自民党による是々非々程度の協力は期待していたのではないかと思われる。安倍晋三との「縁」も切らずにおいたままだった。
拙劣だったのは、自民党の東京都連だろう。小池百合子を自党のために<利用>しようという戦略も狡猾さもあるいは度量も寛容さもなかった。
詳細は知らないが、正面対決をして勝てると思っていたとすれば、傲慢・不遜、身の程知らずだっただろう。
結局は小池百合子は別の党派を結成し、自民党を離党した(離党届けを出した)。
小池百合子一人くらいあしらえる、と思ったところに自民党の大きなミスがあった。
自民党の政権基盤は決して盤石なものでないことを、知るべきだろう。
全国の内閣・政党の支持率がそのまま東京都議会にも反映されるだろうと思っていたとすれば、すでに数字が出たように、全くの間違いだった。
そしてまた、<自民党に絶対反対しない>、<自民党を絶対批判しない>の櫻井よしこら「特定保守」や基本線では同じの産経新聞もまた、自民党の戦略ミスをそのまま引き継いだ。この人たちは自民党から「自由」ではないからだ。
四 この欄の5/19・№1550で、昨年の都知事選挙に関連して、こう書いた。
「好ましい<選択肢>が自民党等(の候補)以外にもう一つあれば有権者のかなりの部分が、『自民党』の名前とか機関決定に関係なく、もう一つの『選択肢』に投票する可能性がある。/自民党と安倍晋三内閣は、国政レベルでは『もう一つの選択肢』の欠如のゆえにこそ、支持率をまだ高く維持しているようであることを知らなければならないだろう。」
有権者は民進党を選択してはいない。何と今回に、日本共産党は自民党の当選議員数に近づいたが、複数又は多数定数区での当選だろうから、第一党になる力があるわけではない(もちろん、少しずつでも<増やして>いくのが彼らの執拗な戦略だ)。
もう一つの、有力な「選択肢」があれば、有権者は、あっという間に自民党から離れる。
自民党への投票者は、産経新聞の読者ばかりではないし、櫻井よしこら「特定保守」派を支持しているわけでもなく、月刊正論の基本論調の熱心な支持者でも何でもない。
自分たちが、日本の<反左翼>・<保守>的気分の中心・中核にいるなどと勘違いしてはいけない。
安倍晋三・自民党、そして一部の特殊な<保守派>らしき者たちが、頭を冷やす機会になるとよい。