秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

三浦瑠璃

1697/篠田英朗・ほんとうの憲法(ちくま新書、2017)①。

 篠田英朗の「もし…明確化する」ならばという加憲条項案も問題が多い。
 篠田英朗・ほんとうの憲法(ちくま新書、2017)。
 「おわりに-9条改正に向けて」の最終行=「あとがき」の直前。
 「前二項の規定は、本条の目的にそった軍隊を含む組織の活動を禁止しない」。
 これが、著者・篠田英朗の、「かりに」九条三項を創設するとすればの案だ。おかしい。
 第一に、これでは、篠田のいう「自衛隊の合憲性を明確にするのであれば」という前提目的を達することができない。
 なぜならば、現在の・いまの自衛隊が「本条の目的にそった軍隊を含む組織」でありその活動が上にいう「…活動」であることの確証は何もない。
 むろん、篠田英朗によれば、現在の・いまの自衛隊はそのようなものなのだろう。私もまた、そうだと<解釈>する(但し、「軍隊を含む」との部分には大きな留保がつく)。
 しかし、そのように認識または<憲法解釈>をしない人たち・活動家・政治家等々がいるからこそ、問題なのだ。
 つまり、彼らは、現在の・いまの自衛隊は、「本条の目的にそった軍隊を含む組織」であるとは(おそらく絶対に)主張しない、容認しないのだ。
 かりにだが、上の条文案で本当に「加憲」されたとする場合、日本共産党や同党員憲法学者たちは、現在の・いまの自衛隊とその活動は「本条の目的にそった…組織」・「活動」ではないと、主張するに違いない。
 そもそもが、<九条の目的>の理解・認識・<憲法解釈>が異なるのだから、上のような条項ができたからといって、現在の・いまの自衛隊の合憲・違憲の問題が解消されるはずはないのだ。
 「自衛隊」という語・概念を用いないのは優れている?のかもしれないが、せっかくの篠田英朗の案は、現状を解決することには絶対にならない
 <憲法解釈>上の(かつ政治的な)論争を、さらに複雑にするだけだ。「戦力」不保持の明文条項を残したままでの、現在の・いまの自衛隊の合憲化という試みは、三浦瑠璃の言葉によれば、却って、<頓珍漢な議論を温存>することになる。
 全体として、篠田英朗の叙述、主張に反対しているのではない。
 現憲法の現状のままでの自衛隊合憲論、かつ九条二項削除論は、十分に読むに値するのだろうと思われる。そのかぎりで、勉強にもなるし、多くの人が読めばよいとも思われる。
 しかし、たまたま出版が5月安倍晋三発言の直後(しかもまだ校正中で追記可能?)だったためかもしれないが、上の案は、採用できない。
 他にも、「軍」概念をめぐって等々、憲法解釈論の観点からすれば、大いに疑問もある。第二以下を、さらに別に記す。

1677/小林よしのり・安倍晋三改憲案と産経新聞。

 小林よしりんこと小林よしのりが、いや小林よしのりことヨシリンだったか、7/28付ブログで(また)面白いことを言っている。
 ①今年5月の安倍晋三改憲案は「ウルトラ欺瞞であって、左翼に媚びた加憲だ」。「『戦後レジームの完成』、自衛隊が永遠に軍隊になれない、盤石な左翼国家の誕生になるからだ」。「アメリカの永久属国憲法になる」からだ。
 ②「本来、社民党の福島瑞穂」らが出すべきもので、そうだったら「猛反対するくせに、安倍晋三が出したら大賛成する」産経新聞は「極左大転向というニュースになっていいくらいだ」。
 まず、①について。なかなか、やはり鋭い。
 秋月瑛二は安倍案は改憲案として「成り立つ」とまず書いた。従来にまるで想定されていなかったとみられる案だったからだ。
 しかし、当然に「成り立つ」と<賛成する>は意味が違うので、いったんネットに載せたあとすみやかに、従来からの現九条2項削除・自衛隊の「軍・戦力」化(<軍・戦力保持)の明記案も「当然に成り立つ」と追記して書いた。
 では安倍案を支持するのかしないのかについては、明言を避けた。
 それは、誰からもこの問題について質問されるような立場にないからだ。秋月瑛二は海底棲息の無名の庶民なのだ。
 だが、どちらにせよ、国民投票に架けられれば、賛成票を投じるだろうとは、思ってきた。どちらにせよ、改憲投票を失敗させるわけにはいかないだろう。
 それに、安倍晋三新案と従前の自民党案を比べての長所・欠点を、政治的なリスクの大小、国民投票で可決の可能性の大小等を含めて、十分に理解しているつもりだからだ。
 上の小林よしのりコメントも、よく分かる。
 永遠にではないにしても、「軍その他の戦力」を憲法上保持しないとする法状態をさらに長く継続させるだろうことに間違いはない、と思われる。
 一方での自衛隊合憲化という意味も、決定的に大きいわけでは全くない。なぜなら、現在において国会も、最高裁判所も自衛隊を「違憲」視していない。国家の実務解釈は自衛隊も合憲であるとしているので、わざわざ国民投票の論点にするまでもない。否決されるというリスクがあることは、読売新聞紙上で棟居快行(むねすえ・としゆき)も指摘していた。2015年の国会での平和安全法制成立について、国民の意思を再度問うようなものでもあるからだ。
 <自衛隊は違憲>とする憲法学者が多い、では十分な理由にならない。憲法学界という<魔境・秘境>の存在を重視しすぎてはいけない。
 もっと他のことを、安倍晋三も言ったはずだ。
 西尾幹二は、安倍晋三案に反対だと明言した。従来の<保守>に対する裏切りではないか、という旨だ。
 この欄に記してきていないが、つぎの二人も、安倍晋三5月九条改憲案に反対だ。
 宮崎哲哉、三浦瑠璃。
 よしりんと西尾幹二を加えると、こうなる。
 宮崎哲哉、三浦瑠璃、小林よしのり、西尾幹二。
つぎに、②について。
安倍晋三案と同じ趣旨のものを社民党等の「左翼」あるいは九条護持派の者が用意していたか、想定していたか、は不明だ。九条を「いじる」ようなことを考えていなかったのではないか。
 また、九条護持派は、正確には少なくとも、A・自衛隊自体が違憲、B・自衛隊自体は違憲ではないが集団的自衛権行使容認は違憲、の二つに分かれる。
 日本共産党の本来の立場、そして党員憲法学者である小沢隆一も明言していたのは、Aだ。一方、非党員・非日本共産党の長谷部恭男はBだ。
 したがって、これらをごっちゃにしてはいけない(小林に言っているのでない)。
 そして、社民党の立場を正確には知らないが、福島瑞穂らもまた日本共産党と同じくAだろう。
 そうすると、「社民党の福島瑞穂」らが提案しそうにはないものと思われる。
 「左翼」、「極左」は思いつかないのが、今回の安倍晋三案ではないか。
 興味深いのはやはり、よしりんイヤ小林よしのりが指摘する、産経新聞の主張だ。
 「何としたたかな男か」とまで書き、本来ならば自分自身の九条2項解釈とは矛盾する(つまりは現憲法と矛盾し、その矛盾する条項を残したままでの)安倍晋三案を「現実的」だとすみやかに支持した、アホとしか思えない「評論家」、「特定保守」運動家がいた。
 櫻井よしこ、だ。
 その後、産経新聞も、社説で支持することを明言した。
 櫻井よしこ、産経新聞が支持していること、「日本会議」役員・幹部ではないとしても伊藤哲夫も支持していること、むしろ伊藤哲夫による示唆の影響を安倍晋三は受けたという説もあることからすると、分かることがある。
 さらには、安倍晋三・自民党総裁のビデオ・メッセージは、櫻井よしこらが代表をしている<美しい日本の憲法をつくる会>らが組織する大会・会議で流されたもののはずだ。
 つまり、「日本会議」が安倍晋三案を支えている。
 この「日本会議」関係者の誰がかは分からない。しかし、誰かだ、またはグループだ。潮匡人が加わっているのかどうか。潮匡人もまたも産経新聞、月刊正論グループにあり、親「日本会議」派だろうと推測される。
 つまり、いまの時点で秋月瑛二が知ることができる、安倍晋三案支持者は、以下。
 櫻井よしこ、伊藤哲夫、産経新聞。(そして、おそらく「日本会議」)。
 月刊正論等をきちんと読めば、もっと人名を挙げられるかもしれない。
 よしりん、イヤ小林よしのりが言うように安倍晋三案が「左翼」または「極左」のものならば、櫻井よしこ、伊藤哲夫、産経新聞、そしておそらく「日本会議」は、全て「左翼」または「極左」化した、ということになる。
 但し、前提は違うだろうとは、上に書いた。
 むろん「左翼」・「極左」ではないからよい、ということには、当然にならない。
 目立つのは、一部にある<安倍晋三にくっ付いていきます>絶対主義の横行だ。
 櫻井よしこは「民進党の倒閣運動」を批判したいようだが、野党というのはつねに「倒閣」を目指すものだ。
 ここでは立ち入らないが、民進党がずさんであるとして、では安倍晋三・安倍昭恵、自民党らにこれっぽっちも問題はなかったのか、は冷静に見ておく必要がある。「日本会議」という背景こそを世論は嫌悪した可能性がほんの少しはあるだろうことに、ほんの少しは気づいているだろうか?
 ついさっき、L・コワコフスキの英語本の「試訳」を文章化していた。
 興味深い言葉の並びがあった。櫻井よしこをはじめとする、「日本会議」派のみなさんに、贈呈しよう。 
 「…は、大量の立身出世主義者(careerists)、寄生者(parasites)、追従者(sycophants)を吸い込んだ」。
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