秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

ヒトゲノム

2783/生命・細胞・遺伝—19。

 染色体の数が(23対)46本というのは、人体全体にある染色体数ではなく、一つの細胞内の数だとは、何となく分かっているような気がする。
 だが、遺伝子の数や塩基対の数(2本の「柱」に付く「塩基」の数の半分)となると、こうした分野についての素人には、いったいどの範囲の中の数かが怪しくなることがある。
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 ヒトがもつ遺伝子の数について、確定的で厳密な数値を示している書物等はない。
 だが、20,000と30,000の間の数値であることに一致はある、と思われる。
 若干の例を示す。
 本庶佑・ゲノムが語る生命像(2013)—約2万〜3万。
 島田祥輔・遺伝子「超」入門(2015)—約22,000。
 小林武彦・DNAの98%は謎(2017)—約22,000。
 太田邦史・エピゲノムと生命(2014)—約21,000。
 黒田裕樹・休み時間の分子生物学(2020)—約21,000。
 S.ムカジー・遺伝子(2021)—約21,000〜23,000。
 NHK取材班・シリーズ人体·遺伝子(2019)—約20,000。
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 細かな数値に拘泥する意味は全くない。
 細胞分裂が始まると遺伝子群が46本の染色体の中に分かれて「くるまれ」る、きれいに46(または23)等分化されるのではない、という知識からすると、これらの遺伝子数は、一つの細胞中にある遺伝子の数だ、ということを確認するしておくことが重要だ(秋月にとっては)。
 したがって、一人の人体全体の中には、<上の遺伝子数×細胞数>の遺伝子があることになる。
 但し、全ての(特定のアミノ酸生成を指示する)遺伝子が「発現」したり、「利用」されたりするのでは全くない。
 もう一つ、確認しておくべきなのは、つぎだ。
 遺伝子数は、ヒト・人間の全てで同じではなく、個体によって異なる。「約」22,000、「約」21,000 等だ。
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 遺伝子数のほかに、「塩基対」数も記述ないし紹介されていることがある。
 いちいちの文献を挙げないが、ほとんどがつぎの数字だ。
 30億、または32億
 「億」という数字になると一瞬は迷うが、これまた、一人の人体全体ではなく、一つの「細胞」内の塩基対の数だろう。
 〈ヒトゲノム)内にあるとされる諸数値もまた、一つの「細胞」についてのものだろう。
 したがって、「ヒトゲノム」は30億-32億の「塩基対」で構成され、その中に2万-3万(2万-2万2000)の「遺伝子」がある、ということになる。
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2734/八木秀次の<Y染色体論>②。

 「細胞」は大きく「再生系」と「非再生系」に分けられる。
 上の後者は神経細胞、心筋細胞だ。おそらく、「iPS細胞」を使った再生 もあり得ない。爪も肝臓という臓器等も「再生」できるけれども。
 多数の細胞は前者の「再生系」だ。その中に、生殖細胞および生殖関連細胞も含まれる。
 この区別は、「細胞」の「分裂」があるか否かに対応している、と見られる。元の神経細胞が「分裂」によって消失してしまえば(そして新しい神経細胞に取って代わられれば)、各個体に固有の<記憶>や<自我意識>等もまた消滅してしまうのではないか。全ての細胞が「分裂」・増殖するかのような叙述は、厳密なものではない。
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 細胞の「分裂」の態様には、「有糸分裂」(有糸「核分裂」による細胞分裂)と「減数分裂」とがある。おおよそは「紡錘体」(糸)出現の有無によって区別されるとも言われるが、それはともかく、「減数分裂」で生み出されるのは、ヒトについて言うと、精子(男子)と卵子(女子)だ。
 これらを作り出す精巣や卵巣という細胞組織の個々の細胞も、「有糸分裂」(と「分化」)によって作り出される。
 上の区別に対応するのが、おそらく、「体細胞」と「生殖細胞」の区別だ。後者は正確には、精子(男子)と卵子(女子)のみを意味する。
 精子と卵子は「細胞」ではあるが、「体細胞」が23対・46本の「染色体」をもつのに対して、半分の23本の染色体しか持たない。「減数」分裂と称される理由だ。
 精子と卵子が一体となった「受精卵」は、両者から受け継いで、23対・46本の染色体をもつ。
 その受精卵は順調に分化・増殖すれば胎児になり、新生児となり、成長して再び精子(男子)または卵子(女子)を体内で(「減数分裂」によって)作り出す。
 元に戻ると、あるいは上から再出発すると、精子と卵子がもつ23本の「染色体」の中には、1本の「性染色体」がある。残りの22本の「常染色体」は少なくとも直接には生殖細胞の生成に関与しておらず、精巣・卵巣も含む、それ以外の圧倒的多数の諸「体細胞」の生成に関わっている。
 精子がもつ1本の「染色体」はいわゆる「X染色体」か「Y染色体」かのいずれかで、卵子がもつ1本の「染色体」は通常はつねに「X染色体」だ。
 「受精卵」・胎児・新生児・個々の人間がもつ23対・46本の「染色体」のうちの1対・2本の「性染色体」には、したがって、いわゆる「XY型」と「XX型」の違いがあることになる(生物上の「性」の区別)。
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 「染色体」はしかし、それ自体が「体細胞」や「生殖細胞」の生成に関する<情報・設計図>をもってはいない。
 「染色体」は、「DNA」や「遺伝子」を「細胞分裂」の際に整序させて<(一時的に)包み込む>「包装物」のようなものだ。こう理解するようになった。
 子孫への狭い意味での「遺伝」、個体みずからの「存続」の両者に関する<情報・設計図>は、「染色体」にではなく、「DNA」または「遺伝子」が示している。
 さらに、上の後の二つは同義ではなく、より決定的なのは最後の「遺伝子(gene)」だと見られる。
 下の書物によるとだが、「全ゲノム」=「DNA」全体のうち98%は「非コードDNA領域」だ。つまり人間の身体の生成・維持にとって重要なタンパク質を指定する等の情報をもっていない。また、同じく80%は、「遺伝子を含まない領域」だ、とされる。
 この数字は、アメリカを中心にして行われた(日本も少しは関与した)「ヒトゲノム計画(プロジェクト)」が完了した2003年の報告書にもとづくもので、「多くの研究者の予想以上の」ものだったとされる。
 小林武彦・DNAの98%は謎(講談社ブルーバックス、2017)。
 「全ゲノム」とは(ヒト一人についての)「30億塩基対」だとされるが、「塩基」等のDNAの構成要素は、別に触れる。
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 八木秀次・本当に女帝を認めてもいいのか(洋泉社新書、2005)。
 この書物で八木は、「Y染色体」としきりに書きつつ、「DNA」や「遺伝子」という言葉・概念を自らでは(たぶん)いっさい用いていない。これはなぜなのか。
 「ヒトゲノム計画」とその結果について知らなかったとしても容赦できる。しかし、2000年頃にはとっくに、「DNA」や「遺伝子」という言葉・概念があることくらいは知られていただろう。
 八木は、信じ難いことだが、「染色体」=「DNA」=「遺伝子」と単純に理解していたのだろうか。
 問題にされてよいのは、「染色体」ではなく、「遺伝子」だ。
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 他にももちろん、八木の議論の問題点は、多数ある。
 ①継承されるものはもともと全て<複製(コピー)>なので、「まったく同じ」染色体も遺伝子もあり得ない。
 ②「遺伝子」レベルでの<複製(コピー)ミス>(=「変異」)がありうる。
 ③「男系」で継承されてきた、という「科学的」根拠がない(「継体」以降にかぎっても)。子どもの父親は本当は誰なのか、という問題は、現代でも起きる。最もよく知っているのは受胎し、出産した母親だけ、ということはあり得る。また、「神武」天皇は本当に「男性」だったのか(その前に、「実在」性自体の問題はむろんある)。「継体」は本当に「応神」天皇の「Y染色体」を継承しているのか? あくまで若干の例だが、これらを肯定できる、「科学的」・「実証的」根拠はどこにあるのか。
 ④「血」・「血統」・「血筋」といった語が、厳密な意味が不明なままで使われている。まさか、「Y染色体」=「血」、ではないだろう。等々。
 以上は、「女系」または「女性」天皇の歴史上の存在とは直接の関係がない。
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 ついでながら、有性生殖生物である哺乳類の場合のオス(人の場合は男子)という「性」を決定する、正確にはたぶん「精巣」(→精子)を作り出すことのできる、そういう遺伝子は、近年の研究により、「SRY(Sex determining-region Y)遺伝子」と称されるものだと特定されている。そして、「XX型」染色体の中にも稀には、この「SRY遺伝子」をもつものがある、という。
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