その56のうち、表向きは(この号の文章では)西尾幹二よりも明確で断定的な主張・提言を行なっていたのは、中西輝政だ。こう書いている。p.239-240。
「あえて臣下としての慎みを超えて直言申し上げたいことがある。
言わずと知れた『皇太子妃問題』である。」
「ただ一点、揺るがせにできない重大問題は、同妃が宮中祭祀のお務めに全く耐え得ない事情があるかに伝えられることである。
もし万々一、このことが真実であるなら、ことは誠に重大であり、天皇制度の根幹に関わる由々しき問題であると言わざるを得ない。」
「しかし万一、事態がこのまま推移するなら、事は更に重大な局面に至る憂いなしとしない。
皇太子妃におかせられては、このことを是非共深く御自覚頂き、特段の御決意をなされるようお願い申し上げたい。」
「もし万一、皇太子妃をめぐる右のごとき問題が今後も永続的に続くのであれば、今上陛下の御高齢を慮り皇室の永続を願う立場から敢えて臣下の分を超えて申し上げたい。
同妃の皇后位継承は再考の対象とされなければならない、と。」
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二 中西輝政がこんなことをかつて言っていたとは、知らなかったか、記憶を失くしていた。
2019年5月、当時の皇太子妃は皇后となられた。
中西輝政はこの2019年前後、上のかつての発言にどう触れていたのか。
触れていたとかりにして、想定できるのは、さしあたりつぎだ。
①「宮中祭祀に全く耐え得ない事情がある」ということがなくなったので問題はない。
②上の「事情」に基本的な変化はなく、よって皇后位就位には反対であり、残念だ。
③上の2008年時点での自分の主張は誤っていた。詫びるとともに、皇后位継承を容認(歓迎)する。
2021年になっても諸雑誌に「論考」を発表している中西が、平成・令和の代変わり時に、雑誌類に何らかの文章を発表する機会が与えられなかった、とは想定し難い。
中西輝政は、上のいずれ(またはいずれに最も近い見解)を選択したのだったのだろうか。
全く触れなかった? そんなことは、よほど卑劣な文章作成請負自営業者でなければ、あり得ないだろう。
「万が一〜であれば」という仮定条件を付けつつ、当時の皇太子妃の「皇后位継承は再考の対象とされなければならない」と、著名だったと思われる当時の公の雑誌上で、明言していたのだから。
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