日本人と日本社会は、マルクス主義・共産主義を「克服」しているだろうか。
いや、とても。闘っていなければ克服する(勝利する)こともありえない。
日本人と日本社会は、1917年-1991年のソヴェト・ロシアの勃興と解体から得た「教訓を忘れて」はいないだろうか。
いや、とてもとても。そもそも学んでいなければ、その「教訓を忘れる」ことなどありえない。
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L・コワコフスキ(Leszek Kolakowski)・マルクス主義の主要潮流(Main Currents of Marxism)は1976年にパリでポーランド語版で発刊され、1978年にロンドンで英訳版が刊行された。
これらは三巻本だったが、2008年に一冊にまとめたPaperback版がアメリカのNorton 社によって出版された。以下はこれによる。
この一巻本は、索引の最終頁がp.1283で、緒言・目次類を加えると確実に1300頁を超える大著だ。
前回に「反マルクス主義哲学者」と紹介したが、「反マルクス主義」程度では(日本はともかく)欧米では珍しくないだろう。正確には、<マルクス主義に関する研究を(も)した哲学者>で、「反マルクス主義」の立場はその一つの帰結にすぎない。
L・コラコフスキーはマルクス主義の理論的・哲学的分析を、始まりから「破滅」まで時代的・歴史的に、「主要な」論者を対象にしつつ、かつマルクス主義者そのものとは通常は理解されていないようにも思えるフランス「左翼」からドイツ「フランクフルト学派」等々も含めて、詳しく行っているようだ。
ポーランドを41歳に離れる(追放される、亡命する)までは「マルクス主義者」をいちおうは自称していたが、この本の時期にはそうではないと見られる。若いときのL・コラコフスキーを知って、たんなる<反スターリニスト>と理解して、期待( ?)してはいけない。
共産主義者や容共「左翼」にとって<きわめて危険な>書物であることは、内容構成(目次)を概観しても、想像できる。
二回に分けて紹介する。<レーニン主義>以降は、節名も記す。邦訳はもちろん、仮の訳。「部」は直訳では「巻」。
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第一部・創始者たち。
第1章・弁証法の起源。
第2章・ヘーゲル左派。
第3章・初期段階のマルクス思想。
第4章・ヘスとフォイエルバッハ。
第5章・初期マルクスの政治・哲学著作。
第6章・パリ草稿、疎外労働理論、若きエンゲルス。
第7章・聖家族。
第8章・ドイツ・イデオロギー。
第9章・概括。
第10章・マルクスの社会主義と比較した19世紀前半の社会主義観念。
第11章・1847年以後のマルクス・エンゲルスの著作と闘争。
第12章・非人間的世界としての資本主義、搾取の本質。
第13章・資本主義の矛盾とその廃棄、分析と実践の統合。
第14章・歴史発展の主導力。
第15章・自然弁証法。
第16章・概括および哲学的論評。
第二部・黄金時代。
第1章・マルクス主義と第二インターナショナル。
第2章・ドイツ正統派:カール・カウツキー。
第3章・ローザ・ルクセンブルクと革命的左派。
第4章・ベルンシュタインと修正主義。
第5章・ジャン・ジョレス(Jean Jaures):神学救済論としてのマルクス主義。
第6章・ポール・ラファルグ(Paul Lafargue):快楽主義マルクス主義。
第7章・ジョルジュ・ソレル(Georges Sorel):ヤンセン主義マルクス主義。
第8章・アントニオ・ラブリオラ(A. Labriola):開かれた正統派の試み。
第9章・ルートヴィク・クシィヴィツキ(Ludwik Krzywicki):社会学の理論としてのマルクス主義。
第10章・カジミエシュ・ケレス=クラウス(Kazimierz Kelles-Krauz):ポーランドの正統派。
第11章・スタニスラフ・ブルジョゾフスキー(Stanislaw Brzozowski):歴史主観主義としてのマルクス主義。
第12章・オーストリア・マルクス主義、マルクス主義運動のカント主義者、倫理的社会主義。
第13章・ロシア・マルクス主義の始まり。
第14章・プレハーノフとマルクス主義文献の編纂。
第15章・ボルシェヴィキ出現以前のロシア・マルクス主義。
第16章・レーニン主義の発生。
第1節・レーニン主義に関する論争。
第2節・党と労働者運動、意識性と任意性。
第3節・民族の問題。
第4節・民主主義革命でのプロレタリアートとブルジョアジー、トロツキーと『永久革命』。
第17章・ボルシェヴィキ運動における哲学と政治。
第1節・1905年革命時点での分派闘争。
第2節・ロシアでの新しい知識人の動向。
第3節・経験批判主義。
第4節・ボグダーノフとロシア経験批判主義。
第5節・プロレタリアートの哲学。
第6節・『神の建設者』。
第7節・レーニンの哲学への試み。
第8節・レーニンと宗教。
第9節・レーニンの弁証法ノート。
第18章・レーニン主義の運命、国家の理論から国家のイデオロギーへ。
第1節・ボルシェヴィキと戦争。
第2節・1917年の革命。
第3節・社会主義経済の開始。
第4節・プロレタリアート独裁と党の独裁。
第5節・帝国主義と革命の理論。
第6節・社会主義とプロレタリアート独裁。
第7節・独裁に関するトロツキー。
第8節・全体主義イデオロギストとしてのレーニン。
第9節・ボルシェヴィキのイデオロギーに関するマルトフ。
第10節・論争家としてのレーニン、レーニンの天才性。
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以上。②につづく。
いや、とても。闘っていなければ克服する(勝利する)こともありえない。
日本人と日本社会は、1917年-1991年のソヴェト・ロシアの勃興と解体から得た「教訓を忘れて」はいないだろうか。
いや、とてもとても。そもそも学んでいなければ、その「教訓を忘れる」ことなどありえない。
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L・コワコフスキ(Leszek Kolakowski)・マルクス主義の主要潮流(Main Currents of Marxism)は1976年にパリでポーランド語版で発刊され、1978年にロンドンで英訳版が刊行された。
これらは三巻本だったが、2008年に一冊にまとめたPaperback版がアメリカのNorton 社によって出版された。以下はこれによる。
この一巻本は、索引の最終頁がp.1283で、緒言・目次類を加えると確実に1300頁を超える大著だ。
前回に「反マルクス主義哲学者」と紹介したが、「反マルクス主義」程度では(日本はともかく)欧米では珍しくないだろう。正確には、<マルクス主義に関する研究を(も)した哲学者>で、「反マルクス主義」の立場はその一つの帰結にすぎない。
L・コラコフスキーはマルクス主義の理論的・哲学的分析を、始まりから「破滅」まで時代的・歴史的に、「主要な」論者を対象にしつつ、かつマルクス主義者そのものとは通常は理解されていないようにも思えるフランス「左翼」からドイツ「フランクフルト学派」等々も含めて、詳しく行っているようだ。
ポーランドを41歳に離れる(追放される、亡命する)までは「マルクス主義者」をいちおうは自称していたが、この本の時期にはそうではないと見られる。若いときのL・コラコフスキーを知って、たんなる<反スターリニスト>と理解して、期待( ?)してはいけない。
共産主義者や容共「左翼」にとって<きわめて危険な>書物であることは、内容構成(目次)を概観しても、想像できる。
二回に分けて紹介する。<レーニン主義>以降は、節名も記す。邦訳はもちろん、仮の訳。「部」は直訳では「巻」。
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第一部・創始者たち。
第1章・弁証法の起源。
第2章・ヘーゲル左派。
第3章・初期段階のマルクス思想。
第4章・ヘスとフォイエルバッハ。
第5章・初期マルクスの政治・哲学著作。
第6章・パリ草稿、疎外労働理論、若きエンゲルス。
第7章・聖家族。
第8章・ドイツ・イデオロギー。
第9章・概括。
第10章・マルクスの社会主義と比較した19世紀前半の社会主義観念。
第11章・1847年以後のマルクス・エンゲルスの著作と闘争。
第12章・非人間的世界としての資本主義、搾取の本質。
第13章・資本主義の矛盾とその廃棄、分析と実践の統合。
第14章・歴史発展の主導力。
第15章・自然弁証法。
第16章・概括および哲学的論評。
第二部・黄金時代。
第1章・マルクス主義と第二インターナショナル。
第2章・ドイツ正統派:カール・カウツキー。
第3章・ローザ・ルクセンブルクと革命的左派。
第4章・ベルンシュタインと修正主義。
第5章・ジャン・ジョレス(Jean Jaures):神学救済論としてのマルクス主義。
第6章・ポール・ラファルグ(Paul Lafargue):快楽主義マルクス主義。
第7章・ジョルジュ・ソレル(Georges Sorel):ヤンセン主義マルクス主義。
第8章・アントニオ・ラブリオラ(A. Labriola):開かれた正統派の試み。
第9章・ルートヴィク・クシィヴィツキ(Ludwik Krzywicki):社会学の理論としてのマルクス主義。
第10章・カジミエシュ・ケレス=クラウス(Kazimierz Kelles-Krauz):ポーランドの正統派。
第11章・スタニスラフ・ブルジョゾフスキー(Stanislaw Brzozowski):歴史主観主義としてのマルクス主義。
第12章・オーストリア・マルクス主義、マルクス主義運動のカント主義者、倫理的社会主義。
第13章・ロシア・マルクス主義の始まり。
第14章・プレハーノフとマルクス主義文献の編纂。
第15章・ボルシェヴィキ出現以前のロシア・マルクス主義。
第16章・レーニン主義の発生。
第1節・レーニン主義に関する論争。
第2節・党と労働者運動、意識性と任意性。
第3節・民族の問題。
第4節・民主主義革命でのプロレタリアートとブルジョアジー、トロツキーと『永久革命』。
第17章・ボルシェヴィキ運動における哲学と政治。
第1節・1905年革命時点での分派闘争。
第2節・ロシアでの新しい知識人の動向。
第3節・経験批判主義。
第4節・ボグダーノフとロシア経験批判主義。
第5節・プロレタリアートの哲学。
第6節・『神の建設者』。
第7節・レーニンの哲学への試み。
第8節・レーニンと宗教。
第9節・レーニンの弁証法ノート。
第18章・レーニン主義の運命、国家の理論から国家のイデオロギーへ。
第1節・ボルシェヴィキと戦争。
第2節・1917年の革命。
第3節・社会主義経済の開始。
第4節・プロレタリアート独裁と党の独裁。
第5節・帝国主義と革命の理論。
第6節・社会主義とプロレタリアート独裁。
第7節・独裁に関するトロツキー。
第8節・全体主義イデオロギストとしてのレーニン。
第9節・ボルシェヴィキのイデオロギーに関するマルトフ。
第10節・論争家としてのレーニン、レーニンの天才性。
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以上。②につづく。