平野丈夫・自己とは何なのか?—意識・自我・心についての神経科学的考察(幻冬舎、2021.12)、より。
一 意識
かつて、秋月がこの欄で意識がないこと(深い睡眠や全身麻酔中の状態)は「死んで」いるのと同じ旨を書いたことがあるが、これも「意識」の語法による。また、のちに「深い睡眠や全身麻酔中の状態」で「意識」がなく、神経細胞(ニューロン)がかりに動いていなくともグリア細胞等々が「生存」を支えていることを知った。以下、上の著書に入る。
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意識には少なくとも三つの意味がある。
A/一般的イメージより広く、「単純かつ機械的に」「型にはまった脳・神経系のはたらき」を示す。目覚めている・寝ている・昏睡中等々で一括して「覚醒」。
B/「ある事物に注意が向いてそのことに気づいている」こと。
「感覚」はあるが「無意識」のこともある。「無意識」の情報にも身体は反射的応答をし、行動選択にも影響を与える。
C/「自己の状態を観察・内省して思考する」こと。デカルトの「我思う」。最も高次で「心の本体」に近い。
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二 意識A。
ある基準では、I/刺激しなくとも覚醒(①意識清明・②場所や他者不明・③氏名・生年月日不明)、II/刺激すると覚醒(開眼が①呼びかけ・②揺さぶる・③痛み刺激)、Ⅲ/刺激しても覚醒しない(だが「生きている」)に大別する。
別の基準では、1/開眼、II/言語音声反応、Ⅲ/運動反応、に着目する。
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三 意識B。
「意識」・「無意識」の対比はほぼこの意味。「外界からの刺激による感覚入力のほとんど」を我々は「知覚」しない。感覚(受容)と知覚はレベルが異なる。
あること・あるものを「気づく」=「知覚する」と、その対象には「特有の主観的体験」が伴う。「生々しい主観的体験」は「クオリア(質感)」と呼ばれ、「意識に上がってくる」。
「気づき」=「知覚」が「特定の神経細胞集団の発動」によるのは確かだ。しかし、「主観的クオリア」の発生態様は「ハード・プログラム」だ。
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四 感覚と知覚
感覚(感覚刺激)には、視覚、聴覚、平衡感覚、嗅覚、味覚、皮膚感覚(触覚・温度感覚)などがある。*秋月—「六感」・「第六感」とは?
これらを「感覚器」で受容するが、「一部」しか気づかない、つまり「知覚」しない。にもかかわらず、私たちは、一部の「感覚入力情報」に「自動的に反射応答」する。体温・血圧・心拍の変化等の「自律神経系の応答」は知覚しないことが多い。
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五 視覚(感覚から知覚への例)
①網膜→②視床→③大脳皮質・一次視覚野→④大脳皮質・側頭葉高次視覚野。
01・光の受容—光受容細胞(錐体と杆体—「網膜」にある)
02・双極細胞(「網膜」にある)
03・神経節細胞(「網膜」にある)
いずれも「複数」の情報を伝える。各間を媒介するのは「シナプス」。
04・視床(大脳皮質内側)内の外側膝状体。03が長い「軸索」を伸ばして04の神経細胞(ニューロン)に「シナプス結合」する=「投射」する。
05・後部大脳皮質(=後頭葉)内の一次視覚野。これの神経細胞(ニューロン)は、視野内の「円状の明暗には全く応答せず」、「特定の視野位置の特定の傾きの線に応答する」。
06・多数の視覚関連大脳皮質領域の高次視覚野。「形」(顔・複雑な形の図形等)の知覚は側頭葉内の視覚関連皮質部位だが、「場所」の情報はここでは欠落する。
xx この過程の「どこか」(05-06?)で、知覚対象の「事物・概念」が「選択」されている。「各感覚情報処理系とは異なる脳部位が知覚対象を選別している可能性もある」。
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一 意識
かつて、秋月がこの欄で意識がないこと(深い睡眠や全身麻酔中の状態)は「死んで」いるのと同じ旨を書いたことがあるが、これも「意識」の語法による。また、のちに「深い睡眠や全身麻酔中の状態」で「意識」がなく、神経細胞(ニューロン)がかりに動いていなくともグリア細胞等々が「生存」を支えていることを知った。以下、上の著書に入る。
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意識には少なくとも三つの意味がある。
A/一般的イメージより広く、「単純かつ機械的に」「型にはまった脳・神経系のはたらき」を示す。目覚めている・寝ている・昏睡中等々で一括して「覚醒」。
B/「ある事物に注意が向いてそのことに気づいている」こと。
「感覚」はあるが「無意識」のこともある。「無意識」の情報にも身体は反射的応答をし、行動選択にも影響を与える。
C/「自己の状態を観察・内省して思考する」こと。デカルトの「我思う」。最も高次で「心の本体」に近い。
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二 意識A。
ある基準では、I/刺激しなくとも覚醒(①意識清明・②場所や他者不明・③氏名・生年月日不明)、II/刺激すると覚醒(開眼が①呼びかけ・②揺さぶる・③痛み刺激)、Ⅲ/刺激しても覚醒しない(だが「生きている」)に大別する。
別の基準では、1/開眼、II/言語音声反応、Ⅲ/運動反応、に着目する。
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三 意識B。
「意識」・「無意識」の対比はほぼこの意味。「外界からの刺激による感覚入力のほとんど」を我々は「知覚」しない。感覚(受容)と知覚はレベルが異なる。
あること・あるものを「気づく」=「知覚する」と、その対象には「特有の主観的体験」が伴う。「生々しい主観的体験」は「クオリア(質感)」と呼ばれ、「意識に上がってくる」。
「気づき」=「知覚」が「特定の神経細胞集団の発動」によるのは確かだ。しかし、「主観的クオリア」の発生態様は「ハード・プログラム」だ。
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四 感覚と知覚
感覚(感覚刺激)には、視覚、聴覚、平衡感覚、嗅覚、味覚、皮膚感覚(触覚・温度感覚)などがある。*秋月—「六感」・「第六感」とは?
これらを「感覚器」で受容するが、「一部」しか気づかない、つまり「知覚」しない。にもかかわらず、私たちは、一部の「感覚入力情報」に「自動的に反射応答」する。体温・血圧・心拍の変化等の「自律神経系の応答」は知覚しないことが多い。
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五 視覚(感覚から知覚への例)
①網膜→②視床→③大脳皮質・一次視覚野→④大脳皮質・側頭葉高次視覚野。
01・光の受容—光受容細胞(錐体と杆体—「網膜」にある)
02・双極細胞(「網膜」にある)
03・神経節細胞(「網膜」にある)
いずれも「複数」の情報を伝える。各間を媒介するのは「シナプス」。
04・視床(大脳皮質内側)内の外側膝状体。03が長い「軸索」を伸ばして04の神経細胞(ニューロン)に「シナプス結合」する=「投射」する。
05・後部大脳皮質(=後頭葉)内の一次視覚野。これの神経細胞(ニューロン)は、視野内の「円状の明暗には全く応答せず」、「特定の視野位置の特定の傾きの線に応答する」。
06・多数の視覚関連大脳皮質領域の高次視覚野。「形」(顔・複雑な形の図形等)の知覚は側頭葉内の視覚関連皮質部位だが、「場所」の情報はここでは欠落する。
xx この過程の「どこか」(05-06?)で、知覚対象の「事物・概念」が「選択」されている。「各感覚情報処理系とは異なる脳部位が知覚対象を選別している可能性もある」。
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