何度めになるのだろう、産経新聞4/06の「正論」欄で田久保忠衛が憲法改正の必要を語っている。そのことに反対はしないが、憲法改正(九条2項の削除、国防軍保持の明記を含む)の必要性をとっくに理解している者にとっては、そんな主張よりも、いかにして<改憲勢力>を国会内に作るかの戦略・戦術、そういう方向での運動の仕方等を語ってもらわないと、「心に響かない」。
 両議院の2/3以上の賛成がないと憲法改正を国民に発議できないのだから(現憲法上そのように定められているのだから)、いくら憲法改正の必要性を説いても、国会内での2/3多数派形成の展望を語ってもらわないと、厳しい言い方をすれば、ほとんど空論になるのではないか。
 現在のところ、憲法改正の具体的案文を持っているのは自民党で、さらに新しいものを検討中らしい。憲法改正にも現憲法第一章の削除を含む、かつての日本共産党の<日本人民共和国憲法案>のようなものもありうるが、自民党のそれは、九条改正・自衛軍設置明記等を含むもので、「左翼的」な改正ではない。
 自分が書いていながらすっかり忘れていたが、1年余り前に(も)、月刊正論編集長・桑原聡を、「月刊正論(産経新聞社)編集長・桑原聡の政治感覚とは」と題して、批判したことがあった。
 月刊正論の昨年2011年の4月号の末尾に、自民党を「賞味期限の過ぎたこの政党」と簡単に断じていたからだ。桑原聡は同時に、「かりに解散総選挙となって、自民党が返り咲いたとしても、<賞味期限の過ぎたこの政党にも多くを期待できない」とも明言していた。
 自民党については種々の意見があるだろうが、「はたして、かかる立場を編集長が明記することはよいことなのかどうか。それよりも、その<政治的>判断は適切なものなのかどうか」、という観点から批判的にコメントしたのだった。背景には、編集長が替わってからの月刊正論は編集・テーマ設定等が少しヘンになった、と感じていたことがあったように思う。
 一年前のこの言葉の考え方を桑原聡がまったく捨てているとは思えないので、彼にとっては、自民党は基本的には、「多くを期待できない」「賞味期限の過ぎた」政党のままなのだろう。
 しかし、産経新聞(社)は「国民の憲法」起草委員会まで設けたのだが、現在のところ、産経新聞社の見解に最も近い憲法改正を構想しているのは、自民党なのではないか。
 将来における<政界再編>によってどのようになるかは分からないが、憲法改正に向けての動きが進んでいくとすれば、現在自民党に所属している国会議員等が担い手になることは、ほとんど間違いはないものと思われる。
 しかるに、桑原聡のように、自民党を「多くを期待できない」「賞味期限の過ぎた」政党と断じてしまってよいのか
 桑原聡はこのように自民党を貶し、かつまた橋下徹を「きわめて危険な政治家だ」と明言する。この人物は、いったいどのような政党や政治家ならば(相対的にではあれ)肯定的・好意的に評価するのだろうか。ただの国民でも雑誌・新聞の記者でもない、<月刊正論>の編集長である桑原聡が、だ。
 読売新聞4/08安倍晋三が登場していて、橋下徹は憲法改正に向けての大きな発信力になるので期待しているといった旨を書いて(答えて?)いた(手元になく、ネット上で発見できないので厳密に正確ではない)。

 憲法改正の内容を橋下徹・大阪維新の会は具体的・明確にはまだ明らかにしていないが、国会議員連盟もあるらしい、憲法改正のための国会発議の要件を2/3超から1/2超に改正することには橋下徹は賛成している。憲法改正の必要性自体は、彼は十分に認識していると思われる。
 桑原聡は憲法改正には反対なのだろうか。大江健三郎、香山リカ、佐高信、立花隆らと同じく<護憲派>なのだろうか。
 そうではないとしたら、橋下徹を「きわめて危険な政治家だ」となぜ簡単に断じてしまえるのか。不思議だ。<異常な>感覚の持ち主の人物だとしか思えない。
 なお、佐々淳行産経新聞2/24の「正論」欄で、「橋下徹大阪市長に申す。国家安全保障問題、国家危機管理の問題こそが国民の龍馬ブームの源であり、物事を勇気を以て改めてくれる強い指導力を貴方に期待している国民の声なのだ。国政を担わないのなら、今の八策でもいいが、命をかけて、先送りされ続けた国家安全保障の諸問題を、貴方の『船中八策』に加え、国策の大変更を含めて平成の日本の国家像を示してほしい」、と書いている。
 この文章の途中で、「船中八策」には「一番肝心の安全保障・防衛・外交がそっくり抜け落ちて」いると批判もしている。
 このような佐々淳行の批判もよく理解できる(九条については、橋下徹は世論の趨勢を測りかねていて、個人的見解を明確にする時期ではまだないと判断しているように私は推察している)。

 だが、佐々淳行は最終的には<期待>を込めた文章で結んでいるのであり(最末尾の文章は「…など橋下市長の勇気ある決断を祈っている」だ)、きわめて穏当だと感じられる。
 大人の、まっとうな<保守>派に少なくとも求められるのは、橋下徹に対する、このような感覚・姿勢ではないだろうか。
 逆を走っているのが、月刊正論(産経)の現在の編集長・桑原聡だ。
 こんな人物が産経新聞発行の政治関係月刊誌の編集長であってよいのか。
 川瀬弘至という編集部員が、イザ!で月刊正論編集部の「公式ブログ」を書いているのに気づいた。この川瀬の文章の内容の奇妙さにも、今後は言及していくつもりだ。