〇「保守」概念、「保守主義」なるものの意味について考えている。これまでここで取り上げていない文献に言及したいこともある。だが、やや重たいテーマだ。あまり間隔を空けるのも問題なので(と勝手に感じている)、以下の程度でお茶を濁しておこう。
 〇産経新聞1/12櫻井よしこ連載「首相にもの申す」は、かなり興味深い。というのは、櫻井はこの文章の9割ほどをかけて、野田内閣の実績を評価し(「…評価すべき実績が見えてくる」)、同内閣に対する「期待」を語っているからだ。
 前者は①TPP交渉参加表明、②金正日死去の際の哀悼の意の不表明、後者は内閣改造によって「首相が税と社会保障の一体改革に伴う消費税増税に命運をかけた攻勢に出る」ということで、「党内の反対を考慮せず信ずるところを実行に移すのがよい」と述べている。「集団的自衛権の行使を決断」することへの期待も語っている。
 野田佳彦は民主党内「保守」派とされているようで、なるほどイメージとしては鳩山由紀夫や菅直人よりはましのようにも感じる。
 だが、こんなに評価し、期待してよいのだろうか。評価すべきとする①は論者によって(「保守」派論者の中でも)異なるだろうし、②は「当然といえば当然」なのではないか。
 また、もともと、産経新聞上での「期待」を野田はどれほど意識するだろうか、(消費税増税についても議論があるところだが)かりに妥当な内容であったとしても、どれほどの「応援」になるのだろうか、という気もする。産経新聞のスタンスとしては、民主党内閣に対しては、少なくとも<やや辛口>程度ではいるべきだろう。勝手な期待?だが、そうした期待?からすると、櫻井よしこの文章は、産経に期待するレベルを超えて民主党内閣に「甘い」。
 産経新聞1/16の「正論」欄の遠藤浩一の文章は、櫻井よしことはだいぶ論調が異なる。
 遠藤は、内閣改造による「社会保障と税の一体改革」への「不退転の決意」表明に(櫻井よしこの上記文章もあるが-秋月)世論も市場も冷たく、それは「こうした重要にして困難な政策を進めていく当事者能力および適格性が野田・民主党政権にあるのかという不信が払拭されていないからだろう」等と述べる。
 そして一番最後の文章は、「野田氏に期待するのは空しいということである」、となっている。
 櫻井よしこによる「期待」を意識して書かれたのではないだろうが(あくまで推測)、遠藤浩一のスタンスは櫻井とはかなり異なる。
 こういう違いが同じ産経新聞紙上で見られるのは興味深いことだ。そして、遠藤浩一の感覚の方が、私はまっとうだと思っている。