やや遅れて、月刊ボイス9月号(PHP)の中西輝政「”脱原発”総理の仮面を剥ぐ」を読む。
 ・テレビに加藤登紀子と辻元清美がともに映っていたので気味が悪かったのだが、「そんなに私の顔を見たくなかったら」と菅直人が何回も繰り返したのは6/15で、上の中西論考によると、議員会館内の「再生可能エネルギー促進法成立!緊急集会」でのことで、出席者には孫正義と上の二人のほか、以下がいた。
 宮台真司、小林武史、松田美由紀、福島瑞穂。
 また、この集会自体が、多くの「左翼」団体共催のものだったらしい。中西輝政は次のように書く。
 「『反原発左翼』は死んでいない。古色蒼然たる護憲派左翼などとはまったく違い、…。…〔こんな〕集会に、総理大臣が喜色満面で出席して大熱弁を振るうこと自体が」異様なものだった。
 ・知らなかったが、民主党・菅直人政権の落日ぶりに「左翼」は落胆し右往左往しているとでも楽観的に思っていたところ(?)、中西輝政によると、以下の事態が進んでいるらしい。
 上と同じ6/15に「『さようなら原発』一千万人署名市民の会」の結成が呼びかけられた。呼びかけ人は以下。
 鎌田慧、坂本龍一、内橋克人、大江健三郎、澤地久枝、瀬戸内寂聴、落合恵子、辻井喬、鶴見俊輔「ら」。
 <九条の会>と見紛うばかりの「左翼」だ。そして、中西は書く。
 「多くの心ある人びと」は「左派が組織的に動き出している。左の巨大なマシーンがうなりを上げている」と「直感」するはずだ(以上、p.82)。
 ・中西輝政の上の論考は最後の節の冒頭でこう書いている。
 「すでに『戻ってきた左派』の陣営が整いはじめている可能性があるにもかかわらず、危機感という意味で、日本の良識派はあまりにも出遅れている」(p.87)。
 そのあと、「反原発」保守とされる竹田恒泰・西尾幹二への批判的言及もあるが、その具体的論点はともかくとしても、一般論として、組織・戦略・理論、いずれの分野をとってみても、保守派は「左翼」に負けているのではないか、というのは、かねて私が感じてているところでもある。
 (歴史認識諸論点も含めて)あらゆる論点について「左翼」は執拗に発言し、出版活動を続けているが、誰か<大きな戦略>を立てている中心グループがどこかに数人かいそうな気さえする。その人物たちのほとんどは(隠れ)日本共産党員で、有力な出版社または新聞社の編集者または編集委員あたりにいそうな気がする。彼らは、このテーマなら誰がよいかと調査・情報収集したりして、新書を執筆・刊行させたり新聞随筆欄に執筆させたりしているのではないか。それに較べて保守派は……。佐伯啓思は思想家で「運動」に大きな関心はなさそうだし、中西輝政はより<政治的>に動ける人物だろうが、一大学教授では限界がある。産経新聞社の何人かが、上のような<戦略中枢>にいるとはとても感じられない。日本会議とかでは<大衆>性または知名度に欠ける(この点、岩波書店や朝日新聞の名前は威力が大きいだろう)。国家基本問題研究所なるものは、櫻井よしこがいかに好人物だとしても、屋山太郎が理事の一人だという一点だけをとっても、まるであてにならない。相変わらず、私は日本の将来に悲観的だ。