長尾龍一・”アメリカの世紀”の落日―「極東文明化」の夢と挫折(PHP、1992)の「あとがき」は1991.12に書かれていて、こんな言葉を含んでいる。p.192。
 ・「国際政治に対する一般的立場からすれば、私は戦後一貫して、共産圏の拡大を阻止するというアメリカの政策を支持し続けてきた」。
 ・六〇年「反安保闘争の動機に疑念を提出し続けていた」。当時の反安保キャンペインの月刊誌など「汚らわしくて手続も触れないというくらいのもの」だ。
 ・「それとともに私は、マッカーサーの占領の成果に寄生しながら、共産圏に関する幻想をふりまき、西側世界を共産圏に向かって武装解除しようとしてきた左翼知識人たちに対して、いうにいえないいかがわしさを感じてきた」。「米軍を追い返し、日本を非武装化しようとする人々の意図がどこにあるのか」、彼らの「純粋な平和への願望」を「信じたことがない」。

 -このようにアメリカの基本政策に賛成しつつ、様々な観点から様々な感想をもってアメリカを観察した。その成果がこの本だ、とされている。
 長尾龍一、1938~、元東京大学教養学部教授(法思想史・法哲学)。
 上のように書く人が東京大学教養学部にいたとは、心強いことではある。
 だが、ソ連・東欧(共産党)の崩壊・解体が明瞭になっていた時点になってからの上のような言明をそのまま鵜呑みにして<称賛?>することはできず、上の本のほか、それまでのこの人の研究内容・文献をも参照する必要があるだろう。