大石眞・憲法講義Ⅰ(有斐閣、2004)p.64は「いわゆる定住外国人の参政権」という項を立てて、次のように書く。
<「国政参加の基礎を国籍に求めることは各国共通の理解」でもあり、「不当」ではない。外国人参政権を認めれば「国民の自己決定の原則に反することにもなるという原理的な問題を抱え込む」だろう。>
このあと、選挙権・被選挙権者を国民に限る公職選挙法が違憲だとは考え難い旨を述べ、地方参政権に関する最高裁平成07.02.28判決等を参照要求している。
「国民の自己決定の原則」に言及していることが関心を惹く。また、上の後半からは、いわゆる<要請説>を支持していないことが明らかで、辻村みよ子や浦部法穂とは異なる。但し、<許容説>をどう評価しているかは明瞭でない(上の本の新版があるのかもしれないが、所持していない)。
大石眞(京都大学、58歳)は読売新聞5/3付の「憲法記念日座談会」で、対談者三名の一人として「外国人参政権」問題については、こう発言している。
・最高裁平成07.02.28判決の「傍論では消極的言及にとどま」る。「そこが一つの根拠になって物事が進むのは、あまり良くない」。「国籍問題を軽く考える」のにも「違和感を持つ」。「帰化という正当な道があるのだから、正論で行くべきだ」。憲法95条は外国人地方参政権肯定との議論に直結しない。現在は「地方の権限を強める方向でもあり、そこに国籍を持たない者が大勢参加することになっていいのか、根本的な疑問がある」。
所謂<許容説>に対する理論的(憲法解釈論的)立場は明確ではなおないと言えるが、少なくとも立法政策論(法律レベルでの政策的議論)としては外国人地方参政権付与に否定的であることは明らかだ。読売紙上で、こう明確に断じている現役の憲法学者がいることは大いなる救いで、少しは憲法学界の現況に安心しもする。
大石眞は、上の論点以外に次のようなことも言っている。
・「日本国憲法は1920年代のモデルで、色々なところに限界がきている…」。
・9条は「個別的自衛権のことを規定」している。「集団的自衛権」は国連憲章・日米安保条約という、現行憲法とは「違う位相」で、「観念ができている」。政府が「個別的自衛権」を持ち出して「集団的自衛権」を否定するのは「議論にはズレがある」。また、「集団的自衛権を認めることとそれを行使するかは別問題」で、「本当に行使するべきかどうかは政治判断そのもの」なので「内閣、国会で大いに議論すればよい」。
他にもあるが省略。
日本共産党および同党シンパ憲法学者は、九条をめぐる問題のうち、文言・条文の改正問題よりも焦眉の課題は<集団的自衛権肯定>への解釈変更を阻止することだと考えているようでもあるので、上の大石眞発言はそれに対抗するものでもあり、この人が日本共産党シンパでないことはおそらく歴然としている。少しは憲法学界の現況に安心しもする。
人気記事(30日間)
アーカイブ
記事検索
リンク集
最新記事
タグクラウド
- 2007参院選
- L・コワコフスキ
- NHK
- O・ファイジズ
- PHP
- R・パイプス
- カーメネフ
- ケレンスキー
- コミンテルン
- ジノヴィエフ
- スターリン
- ソヴェト
- ソ連
- ソ連解体
- トロツキー
- ドイツ
- ニーチェ
- ネップ
- ヒトラー
- ファシズム
- フランス革命
- ブハーリン
- ボルシェヴィキ
- ポーランド
- マルクス
- マルクス主義
- メンシェヴィキ
- ルソー
- レシェク・コワコフスキ
- レーニン
- ロシア革命
- ワック
- 不破哲三
- 中国
- 中国共産党
- 中川八洋
- 中西輝政
- 丸山真男
- 九条二項
- 佐伯啓思
- 保守
- 全体主義
- 八木秀次
- 共産主義
- 北朝鮮
- 大江健三郎
- 天皇
- 安倍内閣
- 安倍晋三
- 安倍首相
- 小学館
- 小林よしのり
- 小沢一郎
- 屋山太郎
- 岩波
- 左翼
- 慰安婦
- 憲法九条
- 憲法学界
- 憲法改正
- 文藝春秋
- 新潮社
- 日本会議
- 日本共産党
- 日本国憲法
- 月刊WiLL
- 月刊正論
- 朝日新聞
- 桑原聡
- 樋口陽一
- 橋下徹
- 櫻井よしこ
- 民主主義
- 民主党
- 江崎道朗
- 池田信夫
- 渡部昇一
- 産経
- 百地章
- 皇室
- 石原慎太郎
- 社会主義
- 神道
- 立花隆
- 竹内洋
- 自民党
- 自衛隊
- 花田紀凱
- 若宮啓文
- 菅直人
- 西尾幹二
- 西部邁
- 読売
- 諸君!
- 講談社
- 辻村みよ子
- 週刊新潮
- 遠藤浩一
- 阪本昌成
- 鳩山由紀夫
カテゴリー