〇今月6/05(金)~6/07(日)に、小林よしのり・天皇論(小学館、2009)を全読了。為備忘。
 〇辻村みよ子・フランス革命の憲法原理―近代憲法とジャコバン主義日本評論社、1989.07)はずっと以前に入手しているが、読むに至っていない。副題に見られるように「ジャコバン主義」=「モンターニュ派」・ロベスピエールの「主義」を中心とする研究書のはずで、(未施行の)フランス1793年憲法=「ジャコバン」憲法を主対象とする。
 出版年月の1989.07というのは微妙な年月だ。翌年のドイツ再統一(「社会主義」東独の消滅)、翌々年の「社会主義」ソ連解体のあとであれば、こんな副題をもつ研究書を<恥ずかしげもなく>刊行できたかどうか。いわゆる<フランス革命>の過程中の「ジャコバン主義」時代こそ、「人民主権」=「人民民主主義」=「プロレタリア独裁」の実験時で、<早すぎた>がゆえに失敗した、という説明もある(マルクス主義に立つ河野健二ほか)からだ。
 巻末の「主要参考文献一覧」を見て気づくことはルソーやロベスピエールの著作の原典を直接には読んでいないようであることだ。そもそもロベスピエールには知られた著書はないのかもしれないが、ルソーについても、桑原武夫他訳の岩波文庫「社会契約論」が挙げられているだけで、ルソー「人間不平等起源論」は邦訳書であっても上の「一覧」にはない。素人ながら、「ジャコバン主義」の理解に当たって、マルクスの<原始共産制>の叙述を想起させるような(「自然」=「未開」状態の叙述・理解がルソーとマルクスとで全く同様だとの趣旨ではない)「人間不平等起源論」の内容の理解は重要だと思われるのだが。
 また、「反共」主義であっても、ハイエクの著作が挙げられていないことは仕方がないとしても、ハンナ・アレントの著作が何ら挙げられていないことは気になる。
 ハンナ・アレントは「革命について」、「全体主義の起源」といった著作をすでに刊行していて、邦訳書もあった。前者に限れば、1968年(合同出版)、1975年(中央公論社)に邦訳書が出ている。
 そして、上の後者を基礎にしたアレント・革命について(ちくま学芸文庫、1995。志水速雄訳)の「解説」者・川崎修によると、この本は「アメリカ独立革命とフランス革命との比較史的研究」であり、アレントはマルクス主義によるフランス革命解釈(「逆算」)から「解放」したのではなく、マルクス主義によるフランス革命解釈=後からの「逆算」的解釈を「転倒」させただけの、「かなりの程度マルクス主義的に理解されたフランス革命への批判」をした、とある程度は批判的なコメントもある。
 アレントのフランス革命論又は川崎修のその「解釈」の当否はともあれ、フランス革命理解にとって、ハンナ・アレントの著作は1980年以前においてすでに看過できないものになっていたのではないのだろうか。
 「修正主義」への言及も冒頭にはあり、F・フュレの原著も参考文献に挙げられてはいるが、辻村みよ子の上の著は、所詮は<主流派>=マルクス主義的解釈によるフランス革命・「ジャコバン主義」論を土台にし、かつそれを支持したうえでのもののような気がしてならない。
 〇西村幸祐責任編集・世界を愛した日本(オークラ出版・撃論ムック、2009)も、「中学歴史教科書2009年度版徹底比較」(全読了)を含めてすでにある程度は読了。
 表紙に「『諸君!』さらばと言おう。」と大きくあるが、中身には、雑誌「諸君!」に関する記事・論考が一つもないのはどういうわけか。あまり遊んでもらっても困る。