No.2773/2024.10.22)で民間放送に触れたのは、今年になってからのNHKの二つのテレビ番組の内容に対する疑問または不満を書いておきたかったことの前振りのようなものだった。
 「NHKというものの考え方」というのも何やら大仰な表題だが、「〜というものの考え方」という記事をいずれ書きたいからで、以下はたんに番組批評にすぎない。宣伝広告がない点は、明らかにNHKの方がよい。
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 第一。NHKスペシャル/未解決事件—下山事件。
 2024年3月。同4月に再放送。どちらで観たのか忘れた。前者だとすると、2023年度の制作かつ放送。TVer とやらでもう一回観ないで、以下は書く。
 番組の終わりのエンディング・ロールに出てくる制作関係人名等の列の長さがすごい。多数の職員・人々がかかわったということだろう。
 登場する俳優陣もかなりすごい。大沢たかお、森山未来ら。
 しかし、これだけの俳優や制作人員、そして金をかけながら、相当に無駄に使った番組だと感じた。
 つぎの感想をたまたまネット上で見たが、<ゴマすり>論評ではないか。「『忖度ゼロ』番組レビュー」と銘打つのは恥ずかしい
 「感情を揺さぶられる人間ドラマに仕上がってい」た。
 「…脚本・演出は見事」、「脚本—さん、演出は—さんへの信頼感が一気に高まりました」。
 「つまり、…社会派作品にありがちなメッセージ性ありきのドラマではなく、最高レベルのエンタメ性があったのです」。
 以上、2024年4月、同一の書き手(木村隆志)による。
 こんな感想もあるのかと興味深かったたので、一部写しておいた。
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 私の感想は、つぎのとおり。
 第一。下山事件の<謎とき>としては、ほとんど新鮮味がない。
 新しい証言者の発見に新味があったのかもしれないが(不確認。「極秘資料」が何か分からない)、すでに1970年代には知られていた松本清張(番組内でも登場)等の「他殺説」の範囲内に収まっていると見える。なお、秋月は、この事件に関する、入手が容易に可能な本は、かつてたぶん全部読んだ。また、この説に立つたぶん別の放送局による番組(テレビドラマ)か映画も観たことがある。
 NHKのこの番組の制作責任者(不明)は、過去の関係文献、映画・ドラマ等を知っているのか?
 知った上でなら、この番組のどこに新鮮味、独特さがあったのだろうか。
 第二。主演者の一人の言葉またはナレーションとして繰り返されるものに、〈日本に(国家としての)主権があるのか〉という述懐がある。
 現在のアメリカへの「従属?」をふまえて、この点を強調したかったのかもしれないが、幼稚であり、何の迫力もない。
 2020年代の現在の問題には立ち入らない。
 下山事件発生の1949年、日本はGHQ(実質的に米軍)による「武力占領」のもとにあった。すでに日本国憲法は施行されていたのでまさかこの番組制作責任者は日本は「独立」していたと勘違いしていないことを望むが、形式的にせよ日本が「独立」したのは1951年だ。
 〈2.1スト〉もGHQによって潰されたが、当時の現行法だった法令にもとづく裁判所の判決・決定ですら、GHQによって覆されたことがある。その例を、秋月は知っている。
 立法府、司法府についてもそうなのだから、警察や検察の動きがGHQの意向の範囲内になることくらい、当たり前のことではないか。
 したがって、主演者等が<日本に主権はあるのか>と何やら神妙に、深刻ぶって述懐するのは、ほとんど<喜劇>だった。苦笑を禁じえなかった。そして、現実・史実と異なる方向への一種のイメージ操作になるから、危険でもある。
 ともあれ、長いエンドロールと俳優陣にしては、内容が幼稚すぎる。金と人がもったいない。二部に分けてあるというので少しは期待したが、大きなはずれだった。
 もう一つは別の回にする。
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