ピタゴラス音律での1オクターブ内12音の設定方法の第二は、3で割り続け、2の自乗数を乗じるという計算を12回行うことだ。
 これを論理的には後からできた「五度圏(表)」を使って表現すると、「反時計(左)まわり」の12音設定方法と称することができる。あるいは、螺旋上に巻いたコイルを真上(・真下)から見た場合の「下旋回」・「下行」方式とも言える。さらに、論理的には後から生まれた表示方法を用いると、「下降」系の意味での「フラット(♭)系」の12音の設定方法だ。以下、「第二方式」とも呼ぶ。
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  計算結果を示すと、つぎのとおり。基音を⓪とする。①〜⑫が何回めの計算かを示す。関係資料を見てはいるが、過半は秋月瑛二が自ら行なって確認している。
 ⓪1
 ①1x1/3x4=4/3。
 ②4/3x1/3x4=16/9。
 ③16/9x1/3x2=32/27。
 ④32/27x1/3x4=128/81。
 ⑤128/81x1/3x2=256/243。
 ⑥256/243x1/3x4=1024/729。
 ⑦1024/729x1/3x4=4096/2187。
 ⑧4096/2187x1/3x2=8192/6561。
 ⑨8192/6561x1/3x4=32768/19683。
 ⑩32768/19683x1/3x2=65536/59049。
 ⑪65536/59049x1/3x4=262144/177147。
 ⑫262144/177147x1/3x4=1048576/531441
  =2の20乗/3の12乗
 この⑫を小数で表現すると、1.97308073709…となる。2とこの数値の差異で<マイナスのピタゴラス・コンマ>が生じる。1に対する比率は、0.9865036854…だ。「プラス」・「マイナス」は一般には用いられず、秋月の言葉。
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  上の12音(基音を加えて13音)を小さい(周波数比の小さい=高さの低い)順にならべると、つぎのとおり。小数はほとんどに「約」がつく。
 先立ってしまうが、便宜のために、基音1=Cとして、C〜C'の12音階の今日的表示を、右に付す。「第一方式」、純正律、十二平均律の場合と、基音以外の数値は一部を除いて異なる。「第一方式」とはGもFも異なる。また、C♯=D♭等々が成り立たない。
 ⓪1。C。
 ①(上の⑤)256/243=1.053497。D♭。
 ②(上の⑩)65536/59049=1.109857。D。
 ③(上の③)32/27=1.185185。E♭。
 ④(上の⑧)8192/6561=1.248590 。E。
 ⑤(上の①)4/3=1.333333。F 。
 ⑥(上の⑥)1024/729=1.404663。G♭。
 ⑦(上の⑪)262144/177147=1.479810。G 。
 ⑧(上の④)128/81=1.580246。A♭。
 ⑨(上の⑨)32768/19683=1.664786。A。。
 ⑩(上の②)16/9=1.777777。B♭。
 ⑪(上の⑦)4096/2187=1.872885。B 。
 ⑫(上の⑫)1048576/531441=1.973080。C’ 。
 繰り返しになるが、⑫の小数はより正確には1.97308073709…で、1に対する比率は0.98654036854…だ。1とこの数値の差異を<マイナスのピタゴラス・コンマ>と言う。「プラス」・「マイナス」は一般には用いられず、秋月の言葉だ。
 <プラスのピタゴラス・コンマ>は約0.0136であり、<マイナスのピタゴラス・コンマ>は約0.0135だ。
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