雑多な報道に反応していると、キリがない。しかし、2021年9月18日頃のつぎのニュースは興味深いものがあった。
 日本のいくつかの大学の研究チームが国内発見の人骨12体の「遺伝情報」を解析した結果によると、現代の日本人の祖先には①縄文祖先、②北東アジア(中国東北部)祖先、③東アジア祖先の三種があり、当時の①が「縄文人」だとすると、①と②で「弥生人」が、①・②・③で「古墳時代人」および現代人ができている、という。「縄文人」が渡来人と混血した「弥生人」が現代日本人の祖先だとする従来の有力説と異なる結論らしい。
 いくつかが興味深い。
 第一。従来の有力説によっても、「縄文人」は現代人の直接の祖ではない。「弥生人」が祖なのだとしても、この「弥生人」には、「縄文人」由来の者と北東アジア(中国東北部)由来の者とがいる。
 第二。「古墳時代」とは紀元後3世紀頃から続いた時代だが、その時代に、「弥生人」とは別の、東アジア由来の人々が流入してきて、合わせて「古墳時代人」となり、これが基本的に現在まで続く。
 第三。もともと従来の有力説によっても「縄文人」→現代日本人ではなく「弥生人」→現代日本人なのだが、上によると、「古墳時代人」→現代人(本州)だ。
 これが何を意味するかというと、現代の日本人(のほとんど)の祖先をさかのぼっていくと、「古墳時代人」の由来となっていた①日本列島上の「縄文人」、②「北東アジア」・③「東アジア」の各人々のいずれかにたどりつくのであり(もちろん種々の混血はある)、①「縄文人」だけではない、ということだ。
 第四。読売オンラインは、「縄文人」→「弥生人」→「古墳時代人」→現代日本人という(「直系」と称してよいかどうか)血統にあるのは約15%かそれ以下、という数字を明記している。残余は全て、すでに古墳時代までに「北東アジア」・「東アジア」の人々の血統につながっている。
 ついでに。西尾幹二・国民の歴史(1999年)は、われわれ日本人の祖先は「縄文人」だ、という素朴な理解に立っているように見える。外国?との混血のあった「弥生人」も、日本列島的?純粋性を維持していた、というイメージだろうか。なお、日本列島は1.2〜2万年前に大陸から切り離されてでき、長い「縄文」時代があったのだが、その「縄文人」自体もまた、切り離される前の大陸・半島人と共通の祖先を持っていただろうことは言うまでもない。
 古墳時代よりあと、西暦800年をまたいで生きた桓武天皇の生母は記録上明確に「百済人」、またはより広く「朝鮮半島人」だった、というようなことを書き出すのはやめる。