L・コワコフスキ(Leszek Kolakowski)が二人の編者のうちの一人となっていた書物に以下がある。当然に?、邦訳書はない(はずだ)。
Leszek Kolakowski & Stuart Hampshire, ed, The Socialist Idea - A Reappraisal.(Basic Books, Inc. Publishers, New York, printed in Great Britain, 1974).
L・コワコフスキ=S. Hampshire 編・社会主義思想-再評価(New York、1974)。
L・コワコフスキが前記または序文を書いていて、それによると、じかの邦訳にはしないが、途中までの原文の内容は、ほぼつぎのとおり。
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1973年4月にイギリスのレディング(Reading)でレディング大学等々が支援する国際的な会合・シンポジウム(meeting)が開かれ、この書物はほぼその記録だ。
上の編者二人とあと二人(Robert Cecil とG. Weidenfeld)の四人で構成した組織委員会が最初に企画したテーマは、つぎだった。
<社会主義思想の何が間違っているのか?>
これでは実際に社会主義が間違っていることを前提にしていると見られるので、つぎの穏やかなものに変えた。
<社会主義思想には何か間違っているものがあるか?>
しかし、明らかな全員一致ではないとしても、この会合の出席者たちは、圧倒的につぎのように考えていた。
今日〔当時〕の社会主義思想と社会主義運動に両方に影響を与えている深刻な危機の原因は、元々の歴史的事情のみではない。そうではなく、不明瞭で矛盾している、社会主義思想が含む原理そのものに起因している。
この会合の目的は現存する〔当時の〕社会主義国や社会主義運動を批判することではなく、第一に、社会主義思想を成り立たせている根本的で伝統的な観念や価値をあらためて分析すること、第二に、歴史上の経験と理論上の批判の双方に照らして、社会主義思想の有効性に疑問を投げかけること、だった。
議論がいわゆる社会主義諸国の経験を無視することができないのは明らかだが、批判するとしてもそれは、直接に政治的態度を表明するためにでは全くなく、社会主義思想それ自体の分析を助けるためだった。
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以下は一部の紹介になる。以下の各テーマ(topics)についてかなり詳しい内容または問題意識が書かれているが、テーマ名以外は省略する。
***
最初の企画案は<中略>というもので、大きくはつぎの12点をより具体的なテーマとした。
①経済の自主管理の観念と社会的な生産管理。
②社会主義に対する現代的技術の示唆(意味)。
③社会主義計画と市場経済。
④社会主義と所有制度。
⑤社会主義と民族(nation)。
⑥社会主義と労働者階級。
⑦性質(quality)の意味。
⑧社会主義、革命および暴力(violence)。
⑨市民社会と政治社会の統合という理想。
⑩社会主義と世界観(Weltanschauung)。
⑪教育と「社会主義的人間」。
⑫社会主義と伝統という価値。
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以下は、原文を眺めながらの秋月の文章になる。
このような企画の(趣旨・)具体的テーマは、全てが達成されたのではなかったようだ。
いくつかについては発表(・報告)自体が欠落し、いくつかの報告は企画の趣旨・テーマと必ずしも合致しなかった。
(「日本」が出てくるあたりのここで止めて、次回へとつづく。)
***
なお、この書物の契機となった1973年のレディング(Reading)での会合というのは、つぎの会合を指しているように思われる。
L・コワコフスキがこの欄では「左翼の君へ」と題してかつて試訳を紹介した、かなり長い、E・トムソンに対する反論・批判の公開書簡の中で、E・トムソンが招聘状が自分には送られてこなかったと不満を述べている(とL・コワコフスキが書いている)会合。
My Correct Views on Everything, 1974, in: Leszek Kolakovski, Is God Happy ?(2012) 。
本欄№1526/「左翼の君へ」-レシェク・コワコフスキの手紙①(2017/05/02付)参照。
Leszek Kolakowski & Stuart Hampshire, ed, The Socialist Idea - A Reappraisal.(Basic Books, Inc. Publishers, New York, printed in Great Britain, 1974).
L・コワコフスキ=S. Hampshire 編・社会主義思想-再評価(New York、1974)。
L・コワコフスキが前記または序文を書いていて、それによると、じかの邦訳にはしないが、途中までの原文の内容は、ほぼつぎのとおり。
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1973年4月にイギリスのレディング(Reading)でレディング大学等々が支援する国際的な会合・シンポジウム(meeting)が開かれ、この書物はほぼその記録だ。
上の編者二人とあと二人(Robert Cecil とG. Weidenfeld)の四人で構成した組織委員会が最初に企画したテーマは、つぎだった。
<社会主義思想の何が間違っているのか?>
これでは実際に社会主義が間違っていることを前提にしていると見られるので、つぎの穏やかなものに変えた。
<社会主義思想には何か間違っているものがあるか?>
しかし、明らかな全員一致ではないとしても、この会合の出席者たちは、圧倒的につぎのように考えていた。
今日〔当時〕の社会主義思想と社会主義運動に両方に影響を与えている深刻な危機の原因は、元々の歴史的事情のみではない。そうではなく、不明瞭で矛盾している、社会主義思想が含む原理そのものに起因している。
この会合の目的は現存する〔当時の〕社会主義国や社会主義運動を批判することではなく、第一に、社会主義思想を成り立たせている根本的で伝統的な観念や価値をあらためて分析すること、第二に、歴史上の経験と理論上の批判の双方に照らして、社会主義思想の有効性に疑問を投げかけること、だった。
議論がいわゆる社会主義諸国の経験を無視することができないのは明らかだが、批判するとしてもそれは、直接に政治的態度を表明するためにでは全くなく、社会主義思想それ自体の分析を助けるためだった。
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以下は一部の紹介になる。以下の各テーマ(topics)についてかなり詳しい内容または問題意識が書かれているが、テーマ名以外は省略する。
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最初の企画案は<中略>というもので、大きくはつぎの12点をより具体的なテーマとした。
①経済の自主管理の観念と社会的な生産管理。
②社会主義に対する現代的技術の示唆(意味)。
③社会主義計画と市場経済。
④社会主義と所有制度。
⑤社会主義と民族(nation)。
⑥社会主義と労働者階級。
⑦性質(quality)の意味。
⑧社会主義、革命および暴力(violence)。
⑨市民社会と政治社会の統合という理想。
⑩社会主義と世界観(Weltanschauung)。
⑪教育と「社会主義的人間」。
⑫社会主義と伝統という価値。
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以下は、原文を眺めながらの秋月の文章になる。
このような企画の(趣旨・)具体的テーマは、全てが達成されたのではなかったようだ。
いくつかについては発表(・報告)自体が欠落し、いくつかの報告は企画の趣旨・テーマと必ずしも合致しなかった。
(「日本」が出てくるあたりのここで止めて、次回へとつづく。)
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なお、この書物の契機となった1973年のレディング(Reading)での会合というのは、つぎの会合を指しているように思われる。
L・コワコフスキがこの欄では「左翼の君へ」と題してかつて試訳を紹介した、かなり長い、E・トムソンに対する反論・批判の公開書簡の中で、E・トムソンが招聘状が自分には送られてこなかったと不満を述べている(とL・コワコフスキが書いている)会合。
My Correct Views on Everything, 1974, in: Leszek Kolakovski, Is God Happy ?(2012) 。
本欄№1526/「左翼の君へ」-レシェク・コワコフスキの手紙①(2017/05/02付)参照。