以下の一部ずつだけを読んだ。衝撃的に面白そうだ。
①小泉文夫・日本の音—世界のなかの日本音楽(平凡社文庫、1977)。
②小泉文夫・歌謡曲の構造(平凡社文庫、1996)。
小泉文夫、1927〜1983。元東京芸術大学教授(民族音楽)。
日本の音楽・音階についてこの欄に既に記述したことは、書き直しが必要になりそうだ。
→「2635/<平均律>はなぜ1オクターブ12音なのか②」で、日本の古歌も「西洋音楽」の楽譜で表記され得ることは「西洋音楽」の「広さ・深さを感じさせる」と書いたが、「西洋音楽」を高く評価しすぎかもしれない。
また、→「2652/私の音楽ライブラリー④」で1963年の「恋のバカンス」は「画期的だった」と(むろん主旋律だけでなく前奏・伴奏を含めての)素人的印象を語ったが、これも単純だったかもしれない。
すでにこの項の「③」で「律音階」に触れており、今回も「民謡音階」に言及するが、日本の伝統的音階が叙述の主対象ではない。このテーマは、別途、上の小泉文夫著等をふまえて扱いたい。
このテーマは、「日本音楽」とは何か、「日本民族」とは何か、「日本とは何か」という大きな問題に関連しそうだ。「日本語の成立」過程に関する問題とも、少しは類似性がある。
——
一 さて、この項の<「ドレミ…」はなぜ7音なのか>は「西洋音楽」での1オクターブ12音をふまえた「ドレミ…」の7音構造の背景に関心をもつものだ。
1オクターブ内での4/3と3/2の「発見」による1、4/3、3/2(、2)の3音構造の成立に続く9/8と27/16の設定による「5音」音階の成立まで、私ならばどのようにして音階を作るか、を叙述してきた。
だが、このように迂回しつつ、「西洋」の「ドレミ…」の音階が7音(最後のドを含めて8音)で構成されざるを得なかったことを、「証明」することができる可能性がある、という見通しをもっている。
---
二 「5音」からさらに数を増やすことを急がず、立ち止まってみよう。
前回に9/8と27/16を新たに加えたが、それは1×(9/8)と(3/2)×(9/8)の計算結果の採用による。1-(4/3)、(3/2)-2、といういずれも4/3または3対4という広い間差(周波数比)の間に、「小さい」方の数値に9/8を乗じたものだった。
だが、4/3および2という「大きい」方の数値から9/8だけ小さい数値を計算することによっても、新しい二つの数値が得られるはずだ。次もように、それぞれの「大きい」数値に8/9を掛けることでよい。
(4/3)×(8/9)=32/27。2×(8/9)=16/9。
これら二つを1、4/3、3/2、2という「3音」構造に挿入して小さい順に並べると、以下のようになる。
Z①1、②32/27、③4/3、④3/2、⑤16/9、⑥2。
これは、前回に記した「5音」(最後を含めて6音)音階の数値と異なっている。前回に記したのは、つぎだった。
X①1、②9/8、③4/3、④3/2、⑤27/16、⑥2。
このX は、前回に記したように、今日の〈十二平均律〉の場合に近い音を選んで1=ドとして表現すると、「ド・レ・ファ・ソ・ラ・ド」だ。そして、伝統的音階のうち雅楽に使われる「律音階」にきわめて類似している。
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三 上のZを、今日の〈十二平均律〉の場合に近い音を選んで1=ドとして表現し直すと、つぎのようになる。
「ド・ミ♭・ファ・ソ・シ♭・ド」。Xの②と⑤よりもこのZの②と⑤の方が数値が大きいこと(かつその割合は同じだろうこと)は、設定の仕方からして当然のことだ。
念のための確認すると、つぎのとおり。
Z②(32/27)÷X②(9/8)=256/243。(=ミ♭とレの間差)
Z⑤(16/9)÷X⑤(27/16)=256/243。(=シ♭とラの間差)
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四 ところで、興味深いことだが、Zの5音(6音)音階の「ド・ミ♭・ファ・ソ・シ♭・ド」=「C-E♭-F-G-B♭」は、日本の伝統的音階のうち、「民謡音階」に相当する、と見られる。
日本の伝統的音階として四つを挙げること、そして各音階をどう説明するかには、あるいは一致がないのかもしれない。
ここでは、ネット上で前回に触れた「律音階」とともに「民謡音階」についても以上の叙述と同じ説明をしているサイトを挙げ、その説明を一部抜粋引用しておく。冒頭で記した小泉文夫の著も結局は同様なのだが(というより、小泉の説の影響を受けているように見られるが)、今回は小泉著には直接には触れない。
→「文化デジタルライブラリー」。
民謡音階—「わらべ歌や物売りの声、日本民謡の中でよく使われている…」。「楽譜の通り、…『ド—♭ミ—ファ—ソ—♭シ—ド』で構成されます」。
律音階—「『律』という言葉は、中国から入ってきました」。「楽譜の通り、…『ド—レ—ファ—ソ—ラ—ド』で構成されます」。
→「メリー先生の音楽準備室」。
「民謡音階の構成音は、ド、ミ♭、ファ、ソ、シ♭の5音。わらべ歌や日本の民謡の多くで、この音階が使われています。」
「律音階で使われている5つの音は、ド、レ、ファ、ソ、ラです。中国から伝来した音楽の基本的な音階で、雅楽にも用いられています。」
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さらに追記すると、「ド・ミ♭・ファ・ソ・シ♭・ド」=「C-E♭-F-G-B♭-C」をド→その下のラ、C→その下のAへとそのまま「移調」すると、つぎのようになり、「♭」記号は消える。
「ラ・ド・レ・ミ・ソ・ラ」=「A-C-D-E-G-A」。
「ラ」を主音とする、今日にいう7音(8音)の<短調音階>のうち、「ファ」と「シ」が欠けている。
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五 こうして、二種の「5音」音階を作ることができた。
次回に、「7音」音階に接近してみよう。
①小泉文夫・日本の音—世界のなかの日本音楽(平凡社文庫、1977)。
②小泉文夫・歌謡曲の構造(平凡社文庫、1996)。
小泉文夫、1927〜1983。元東京芸術大学教授(民族音楽)。
日本の音楽・音階についてこの欄に既に記述したことは、書き直しが必要になりそうだ。
→「2635/<平均律>はなぜ1オクターブ12音なのか②」で、日本の古歌も「西洋音楽」の楽譜で表記され得ることは「西洋音楽」の「広さ・深さを感じさせる」と書いたが、「西洋音楽」を高く評価しすぎかもしれない。
また、→「2652/私の音楽ライブラリー④」で1963年の「恋のバカンス」は「画期的だった」と(むろん主旋律だけでなく前奏・伴奏を含めての)素人的印象を語ったが、これも単純だったかもしれない。
すでにこの項の「③」で「律音階」に触れており、今回も「民謡音階」に言及するが、日本の伝統的音階が叙述の主対象ではない。このテーマは、別途、上の小泉文夫著等をふまえて扱いたい。
このテーマは、「日本音楽」とは何か、「日本民族」とは何か、「日本とは何か」という大きな問題に関連しそうだ。「日本語の成立」過程に関する問題とも、少しは類似性がある。
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一 さて、この項の<「ドレミ…」はなぜ7音なのか>は「西洋音楽」での1オクターブ12音をふまえた「ドレミ…」の7音構造の背景に関心をもつものだ。
1オクターブ内での4/3と3/2の「発見」による1、4/3、3/2(、2)の3音構造の成立に続く9/8と27/16の設定による「5音」音階の成立まで、私ならばどのようにして音階を作るか、を叙述してきた。
だが、このように迂回しつつ、「西洋」の「ドレミ…」の音階が7音(最後のドを含めて8音)で構成されざるを得なかったことを、「証明」することができる可能性がある、という見通しをもっている。
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二 「5音」からさらに数を増やすことを急がず、立ち止まってみよう。
前回に9/8と27/16を新たに加えたが、それは1×(9/8)と(3/2)×(9/8)の計算結果の採用による。1-(4/3)、(3/2)-2、といういずれも4/3または3対4という広い間差(周波数比)の間に、「小さい」方の数値に9/8を乗じたものだった。
だが、4/3および2という「大きい」方の数値から9/8だけ小さい数値を計算することによっても、新しい二つの数値が得られるはずだ。次もように、それぞれの「大きい」数値に8/9を掛けることでよい。
(4/3)×(8/9)=32/27。2×(8/9)=16/9。
これら二つを1、4/3、3/2、2という「3音」構造に挿入して小さい順に並べると、以下のようになる。
Z①1、②32/27、③4/3、④3/2、⑤16/9、⑥2。
これは、前回に記した「5音」(最後を含めて6音)音階の数値と異なっている。前回に記したのは、つぎだった。
X①1、②9/8、③4/3、④3/2、⑤27/16、⑥2。
このX は、前回に記したように、今日の〈十二平均律〉の場合に近い音を選んで1=ドとして表現すると、「ド・レ・ファ・ソ・ラ・ド」だ。そして、伝統的音階のうち雅楽に使われる「律音階」にきわめて類似している。
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三 上のZを、今日の〈十二平均律〉の場合に近い音を選んで1=ドとして表現し直すと、つぎのようになる。
「ド・ミ♭・ファ・ソ・シ♭・ド」。Xの②と⑤よりもこのZの②と⑤の方が数値が大きいこと(かつその割合は同じだろうこと)は、設定の仕方からして当然のことだ。
念のための確認すると、つぎのとおり。
Z②(32/27)÷X②(9/8)=256/243。(=ミ♭とレの間差)
Z⑤(16/9)÷X⑤(27/16)=256/243。(=シ♭とラの間差)
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四 ところで、興味深いことだが、Zの5音(6音)音階の「ド・ミ♭・ファ・ソ・シ♭・ド」=「C-E♭-F-G-B♭」は、日本の伝統的音階のうち、「民謡音階」に相当する、と見られる。
日本の伝統的音階として四つを挙げること、そして各音階をどう説明するかには、あるいは一致がないのかもしれない。
ここでは、ネット上で前回に触れた「律音階」とともに「民謡音階」についても以上の叙述と同じ説明をしているサイトを挙げ、その説明を一部抜粋引用しておく。冒頭で記した小泉文夫の著も結局は同様なのだが(というより、小泉の説の影響を受けているように見られるが)、今回は小泉著には直接には触れない。
→「文化デジタルライブラリー」。
民謡音階—「わらべ歌や物売りの声、日本民謡の中でよく使われている…」。「楽譜の通り、…『ド—♭ミ—ファ—ソ—♭シ—ド』で構成されます」。
律音階—「『律』という言葉は、中国から入ってきました」。「楽譜の通り、…『ド—レ—ファ—ソ—ラ—ド』で構成されます」。
→「メリー先生の音楽準備室」。
「民謡音階の構成音は、ド、ミ♭、ファ、ソ、シ♭の5音。わらべ歌や日本の民謡の多くで、この音階が使われています。」
「律音階で使われている5つの音は、ド、レ、ファ、ソ、ラです。中国から伝来した音楽の基本的な音階で、雅楽にも用いられています。」
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さらに追記すると、「ド・ミ♭・ファ・ソ・シ♭・ド」=「C-E♭-F-G-B♭-C」をド→その下のラ、C→その下のAへとそのまま「移調」すると、つぎのようになり、「♭」記号は消える。
「ラ・ド・レ・ミ・ソ・ラ」=「A-C-D-E-G-A」。
「ラ」を主音とする、今日にいう7音(8音)の<短調音階>のうち、「ファ」と「シ」が欠けている。
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五 こうして、二種の「5音」音階を作ることができた。
次回に、「7音」音階に接近してみよう。