一 産経新聞や月刊正論(産経)等々の(少なくとも自称)保守派(的な)メディア・雑誌類が、月刊WiLL(ワック)も含めて、中国や韓国(・北朝鮮)に対する、警戒的または批判的な論調でいたり、そのような特集を組むことに反対はしないが(但し、中国と韓国は同じではない。後者については歴史認識や竹島問題にほぼ限られるだろう)、たび重なる類似の特集類の中には、少なくとも私には、もう読むまでもない、またかと思わせるものも少なくない。
 両国に共通するところもある歴史認識等の問題についての正確な情報・見解を発信し続けていくことも重要だが、第三の(または北朝鮮を含めると第四の)「反日」国家とも言われているのは日本そのものであり、日本の中にいる(ある)「反日」勢力・「反日」マスメディア、「反日」人士の言動を読者ができるだけ正確に把握できるできるように報道し、また執拗にと言ってもよいほどに的確かつ迅速に批判または反論していくこともまた(少なくとも自称)保守派(的な)メディア・雑誌類の重要な役割だろう。少なくとも、広い意味での(例えば現憲法九条2項削除・軍の保持の明記に賛成するような)「保守」派の中に分裂・対立を持ち込むような、あるいはそのような対立を過大に重視して、主観的には「真の」保守派であるつもりで「真正保守」ではないと見なす論者・政治家等を批判・攻撃することに情熱を傾注するような編集方針は、<広く>保守派(例えば憲法改正賛成派)を結集させたいならば、採用すべきではないだう。

 二 月刊WiLL2月号(ワック)には、重要なまたは興味を惹く論考類が含まれているが、上のような観点からすると、西村幸祐の新連載らしい「メディア・スクランブル」の中の次の二つの指摘は、あえてここにも記しておきたい。これによると、次のようだ(p.29)。

 ①東京新聞は、「十月に実施した憲法九条の世論調査で、改憲派が護憲派を一〇%以上、上回っていたことをできるだけ隠していた」。韓国・朝鮮日報の「慌てふため」いた報道によって多くの日本人が自国の有力紙の世論調査結果を知った。

 ②テレビ朝日が番組「モニングバ-ド」で、「安倍総裁の経済政策を批判するように経済学者に強要していた」。これを当の学者飯田泰之がBSフジの生放送の連携動画で明らかにした。

 これらをいずれも私は(読むまで)知らなかった。東京新聞(親会社の中日新聞)やテレビ朝日の、たんに政治的立場の違いにすぎないとは言えない<偏向ぶり>、マスコミとしての<異常さ>を、できるだけ多くの国民が(ますます)気づいていくようにしなければいけない。

 そして、別の機会に(も)書きたいが、朝日新聞も含めて、そんな媒体に広告を出していれば、その企業自体が「まっとうな」企業ではないという印象を読者・視聴者に与えるに至るまでに、同業?か同業に近い報道機関・マスメディアであっても、まっとうな人々やマスコミ・雑誌等は(産経新聞社も含めて)、勇気をもって<偏向ぶり>や<異常さ>を指弾し続けるべきだ。
 前後するが、同じことは指弾されるべき者が評論家・学者という「個人」であっても言える。日本人らしい、または日本的でもあるのだろうか、個人名を出しての(とくに現役の者に対する)批判は遠慮しがちなのが、日本の論者、評論家等の傾向ではないだろうか。主張・見解に対する批判と人物・人格全体の批判・攻撃とは同じではないはずなのだが。

 三 撃論プラス第4号(オ-クラ出版、2013)の中には、大室久志「朝日新聞の偏向報道を暴く/紙面徹底検証!朝日が殺そうとした安倍晋三」もある(p.52-)。
 新しい、最近についての有益な具体的な指摘はじつはあまりないのだが、一般論として、「仮に、朝日新聞の意向に従わない政権が存在した場合、あらゆる手段を用いてその政権を潰そうとするのが朝日新聞なのだ。全く事実に基づかない印象操作、誹謗中傷、有識者を騙る似非知識人によるプロパガンダ、『声』欄を利用した読者投稿による印象操作…」(p.56)、ということは、広く国民多数の「常識」にしなければならない。そして、そのような卑劣な新聞は広告出稿企業を失い、読者も失う(経営的・財政的に朝日新聞的メディアを消失させる)ようにしなければならないだろう。「朝日新聞とは、報道機関ではない。政治結社なのである」(p.63)。

 同誌の小川榮太郎「すでに始まっている安倍バッシング」(p.81-)の方が、昨秋以降の<安倍たたき>のマスコミの実際についてはるかに具体的で詳しい。つぎに触れる無署名「…報道分析」の方が詳細だが、フジテレビ系の小倉智弘の安倍からかい発言と安倍による批判と小倉の謝罪についても触れている(こういうのは、よほど熱心な視聴者でないと知らないままだろう)。また、とくに、週刊朝日10/16号の経済関係記事の(安倍を批判したいがための)杜撰さの指摘は長くて具体的だ。

 同誌編集部によるのか、無署名の「2012年度/テレビメディアの報道分析」(p.87-)には、「偏向」発言者等の具体的氏名が記載されている。以下、これに依拠して列挙しておく。

 まず、TBS系番組の中での、みのもんた、金井辰樹、北川正恭、テレビ朝日系番組の中での、愛川欽也、川村晃司、早野透(元朝日新聞)、前北美弥子、テレビ朝日番組等の中での、青木理。
 また、「異様なまでに安倍氏に対して『敵視政策』を続けるTBSは今も健在である」、らしい。先に少し言及したフジテレビ系番組内での小倉智弘、田中雅子。見ていないが、安倍晋三は橋下徹と同様に?、自身の「フェイスブック」10/23付で「痛烈に批判した」らしい。

 日本テレビ番組の中での、テリ-伊藤、加藤浩次。テレビ朝日系ケ-ブル局番組の中での、辛淑玉、永六輔、中山千夏、石坂啓、福島瑞穂(この5名は堂々たる「左翼」だ)。TBSラジオの中での、永六輔、外山恵理、久米宏、大橋巨泉、田中均、青木理、宮台真司。NHK深夜双方向番組の、津田大介、速見健朗、古市憲寿。この古市は、上野千鶴子の「教え子」らしい(p.96)。

 四 朝日新聞の、今年になってからの安倍晋三関係社説の「異様さ」、そもそも民間テレビ放送局は「報道機関」といえるような存在では本質的になく、戦後日本を腐らせた元凶とすらいえること(まさに大宅壮一の言葉どおり、「一億総白痴化」をもたらす最大の道具になったこと)、同じことだが民間テレビ放送局の番組制作関係者が「ジャ-ナリスト」であるなどとは大笑いの戯言であること、佐伯啓思の乱調ぶり、等々、書きたいことは他にも多いが、時間の余裕がないのは残念だ。