秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

道徳心

0447/朝日新聞社説と「愛国心」教育と佐伯啓思の新著。

 月刊正論5月号(産経新聞社)の石川水穂「マスコミ照魔鏡」によると、朝日新聞は新学習指導要領発表翌日の2/16社説で、「道徳心を子どもに教えることは必要だが、特定の価値観を画一的に押しつけるようになっては困る」と書いたらしい(p.188)。毎日新聞も同旨だったようだ。
 この問題はむろん、改正教育基本法が「我が国と郷土を愛する」態度の涵養を教育目標として掲げたことに関係している。
 朝日新聞社説は、やはりおかしい。というのは、簡単にいって<愛国心>教育を「特定の価値観」というのなら、朝日新聞もそれに反対する<特定の価値観>をもっている筈だろう。何度も言及するが、先日までの論説主幹・若宮啓文は<ナショナリズムに反対>という<特定の価値観>をもっていることを公言していたのだ。
 自らは「特定の価値観」をもち、それに基づいて社説や記事等を書きながら、「特定の価値観」(の「画一的…押しつけ」)に反対するのは論理一貫しているだろうか。何らかの「特定の価値観」に反対しているだけで、自らが支持する「特定の価値観」についてならば、<積極的に教育することが大切だ>などと平然とのたまうのが朝日新聞ではないか(「ご都合主義」、ダブル・スタンダード)。
 上の点を、前回に言及した、佐伯啓思・日本の愛国心(NTT出版、2008)は明瞭かつ見事に述べて、「愛国心教育」を批判する「左翼・進歩派」の論拠のなさを衝いている。以下のとおり。
 「左翼・進歩派」の批判の主眼(第一)は<「心」を教育できないし、すべきでもない>ということにあるが、この批判は「あまり意味がない」。①「改正基本法が唱えている」のは<「心」の教育>ではなく、<「国や郷土を思う心の大切さ」を教えること>だ。②<「左翼・進歩派」も「自由や民主主義の精神」の涵養は教育の役割と主張してきた。まさに「自由や民主主義を大切に思う心」を教育せよ、と言ってきたのだ。「…心」は教育できない、というのでは「筋が通らない」。(p.112-3)
 「左翼・進歩派」の主張の第二は<「愛国心を上から押し付ける」のは間違い、ということだ。だが、彼らも「自由・民主主義・平和主義といった普遍的価値の押し付け」は「正しい」と考えてきたのではないか。だとすると「愛国心という価値の押し付け」間違い論が成立するのは「それほど容易ではない」。(p.114-5) 
 上の朝日新聞社説でも「特定の価値観を画一的に押しつけるようにな」ることに反対していた。上の二点はいずれも、この社説に対する批判・反駁にもなっているだろう。
 こんな論理的な分析も、朝日新聞の社説執筆者は理解できないのかもしれない。「国家」というものを無視したい、又は悪者視したい彼らにとって、「愛国心」やその教育に対して、理屈抜きで、感覚的に嫌悪を覚えているだけの可能性もある。<論理的思考の停止>状態にあるのだ。
 あるいは、「自由・民主主義・平和主義」と「愛国(または愛郷)主義」とは異質で同列に論じられない、とでも主張するだろうか。だが、「愛国(または愛郷)主義」を異質だと感じるその感覚こそが、「特定の価値観」にもとづいていることを知らなければならない。

0397/朝日新聞2/16社説と新学習指導要領。

 新学習指導要領の内容が発表された。よりよき方向への改正であり、多くの教師たちの努力によって現実化してもらいたいと思う。
 関連していえば、かかる改正の契機の重要な一つは前安倍晋三内閣による教育基本法の抜本改正(の提案と国会による議決)だった。
 マスメディア・論壇の一部にすでに<安倍政治>の全面否定(その証左又は援用材料としての2007参院選の自民党敗北)を当然視する論調もあるが、彼のしたことの意味・評価は、少なくとも将来の歴史的判断に俟つべきだろう。
 朝日新聞2/16社説はいう-「忘れてならないのは、教育基本法が改正されて初めての改訂だということだ。改正基本法に「愛国
心」が盛り込まれ、今回の指導要領には道徳教育の充実が定められた。/教育再生会議が強く求めていた道徳の教科化はさすがに見送られたが、道徳教育推進教師が学校ごとに指定され、全教科を通じて道徳心を教えることになった。武道の必修化もその流れにある。/道徳心を子どもに教えることは必要だが、特定の価値観を画一的に押しつけるようになっては困る。どのように教えるかは教師たちにまかせた方がいい。
 改正基本法上の「愛国心」(正確にはかかる語ではない)涵養を批判する観点から、「道徳教育推進教師」「学校ごと」「指定」を批判し、「武道の必修化もその流れにある」という。さすがに<朝日>らしい、で済ませておくが、「道徳心を子どもに教えることは必要だが、特定の価値観を画一的に押しつけるようになっては困る。どのように教えるかは教師たちにまかせた方がいい」の部分は、いちゃもんを付けるに値するだろう。
 これまでの公教育は「
特定の価値観を画一的に押しつける」ことはなかったのか?。朝日新聞の虚報・誤報・捏造記事が、「特定の価値観を画一的に押しつける」公教育を推進したことはなかったのか。このことに反省の気持ちを示すことなく「特定の価値観を画一的に押しつける」ことを批判するのは欺瞞だ。
 有り体に言ってしまえば、朝日新聞が支持する「特定の価値観」は画一的に広く教えられる(=押しつける)べきだが、「愛国心」・「道徳心」といった朝日新聞が支持しない「特定の価値観」の画一的押しつけには反対だ、と主張しているのだ。
 朝日新聞において珍しくも何ともない。これをダブル・スタンダード(二重基準)とか「ご都合主義」という。

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