中川剛・日本国憲法への質問状(PHP、1986)から一部抜粋して紹介する。
 中川剛-京都大学法学部卒、広島大学法学部教授。専攻-憲法・行政法・行政学(上掲書による。1986年時点)。
 憲法の素人ではなく、専門家・憲法研究者の一人だ。
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 一 プロローグ
 ・「その限りで」日本国民が新憲法を受け入れたのも当然だが「問題がなかったわけではない」。第一に「基本法である憲法が、継受法である点では〔大日本帝国憲法と〕少しも変わらない」。範が「ヨーロッパの周辺からアメリカの周辺に変転しただけ」で、「日本の固有の法感覚が発展するにはいたっていない」。さらに、「法典自体の問題としては、戦勝国の価値観と都合が色濃く反映されている」。それが妨げになって「日本人固有の知性・感性が発揮されにくくなっている」(p.9)。
 ・「欧米が普遍的な尺度とならなくなった現在では、もはや継受法から固有法への長い歩みのなかで憲法をとらえる視点が不可欠」ではないか(p.10)。
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 まだほんの一部。だが、依然として「欧米」を「普遍的な尺度」としているかに見える現在の日本の憲法学界からすると、中川剛は、相当に勇気のある、独自の見解の主張者ではないか。