秋月瑛二の「憂国」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

篠田英朗

1895/小川榮太郎の「文学」・杉田水脈の「コミンテルン」①。

 2018年9月の新潮45<騒動>の出発点となったのは杉田水脈の文章で、それを大きくして決着をつけた?のは、小川榮太郎の文章。
 2年近く前の小林よしのり、ちょうど1年前の篠田英朗。タイミングを失して、この欄に書こうと思いつつ果たしていないテーマがある。
 新潮45問題に関して気になっていたことを、ようやく書く。時機に後れていることは、当欄の性格からして、何ら問題ではない。
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 原書・原紙で読んだわけではないが、杉田水脈はこう書いている。ネット上で今でも読める。
 産経新聞2016年7月4日付、杉田・なでしこリポート(8)。
 「保育所を義務化すべきだ」との主張の「背後に潜む大きな危険に誰も気づいていない」。
 「子供を家庭から引き離し、保育所などの施設で洗脳する。旧ソ連が共産主義体制の中で取り組み、失敗したモデルを21世紀の日本で実践しようとしている」。
 一部かと思っていたら「数年でここまで一般的な思想に変わってしまう」とは驚きだ。
 「旧ソ連崩壊後、弱体化したと思われていたコミンテルンは息を吹き返しつつあります。その活動の温床になっているのが日本であり、彼らの一番のターゲットが日本なのです」。
 「これまでも、夫婦別姓、ジェンダーフリー、LGBT支援-などの考えを広め、…『家族』を崩壊させようと仕掛けてきました。…保育所問題もその一環ではないでしょうか」。
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 2018年の「生産性」うんぬんの議論の芽は、ここにすでに見えている。
 この言葉とこれに直接に関係する論脈自体は別として、秋月瑛二は上のような議論の趣旨が分からなくはない。また、一方で、「保守」派はすぐに伝統的「家族」の擁護、<左翼>によるその破壊と言い出す、という<左>の側からの反発がすぐに出るだろうことも知っている。
 戦後日本の男女「対等」等の<平等>観念の肥大を、私は懸念はしている。
 しかし、上のようなかたちでしか国会議員が論述することができないということ自体ですでに、「知的」劣化を感じざるをえない。
 第一に、現在日本での「保育所」問題あるいはとくに女性の労働問題と「子供を家庭から引き離し、保育所などの施設で洗脳する。旧ソ連が共産主義体制の中で取り組み、失敗したモデル」とを、あまりに短絡に結びつけているだろう。
 百歩譲ってこの「直感」が当たっているとしても、その感覚の正当性をもっと論証するためには、幾十倍化の論述が必要だ。旧ソ連の「子育て」・労働法制(または仕組み・イデオロギー)と日本の現下の保育所を含む児童福祉・労働法制等の比較・検討が必要だ。
 そのかぎりで、杉田水脈は一定の「観念」にもとづいて、「思いつき」でこの文章を書いている。
 第二に、唐突に「コミンテルン」が出てくる。これはいったい何のことか。
 杉田水脈が「旧ソ連崩壊後、弱体化したと思われていたコミンテルンは息を吹き返しつつあります。その活動の温床になっているのが日本であり、彼らの一番のターゲットが日本なのです」と明記するには、それなりの根拠あるいは参照文献があるに違いない。
 いったい何を読んでいるのだろうか。また、その際の「コミンテルン」とはいかなる意味か。
 「コミンテルン」を表題に使う新書本に、この欄でまだ論及するつもりの、以下があった。
 江崎道朗・コミンテルンの謀略と日本の敗戦(PHP新書、2017.08)。
 この本で江崎は戦争中の「コミンテルンの謀略」を描きたかったようだが、そして中西輝政が本当に読んだのかが決定的に疑われるほどに(オビで)絶賛しているが、江崎自身が中で明記しているように、「コミンテルンの謀略」とはつまるところ「共産主義(・マルクス主義)の影響」の意味でしかない。タイトルは不当・不正な表示だ。
 「謀略」としてはせいぜいスパイ・ゾルゲや尾崎秀実の「工作」が挙げられる程度で、江崎自身が、無意識にせよ、客観的にはソ連・共産党を助けることとなった言論等々を含むときちんと?明記している。
 上の本は正式には<共産主義と日本の敗戦>という程度のものだ。しかも、延々と明治期からの叙述、聖徳太子に関する叙述等々があって、コミンテルンを含むソ連の「共産主義者」に関する叙述は三分の一すらない。
 さて、杉田水脈における「コミンテルン」も、何を表示したいのだろうか。
 しかも、これは「弱体化したと思われていた」が「息を吹き返しつつあ」るもので、しかも、「一番のターゲットが日本」なのだとすると、本拠?は日本以外にあり、かつ日本以外にも攻撃対象になっている国はある、ということのようだ。本部は中国・ペキンか、それともロシア・モスクワか。ひょっとしてアメリカ・ニューヨークにあるのか。
 これは、「コミンテルン」=共産主義インターナショナルという言葉に限ると、<デマ>宣伝にすぎない。この人の「頭の中」には存在するのだろう。
 左にも右にもよくある、<陰謀>論もどきだ。
 ロシア革命が「原因」でヒトラー・ナツィスの政権奪取があったとする説がある。なお、レーニン・十月革命(10月蜂起成功)ー1917年、ヒトラー・ミュンヘン蜂起失敗ー1923年。
 両者の<因果関係>は、間違いなくある。ほんの少し立ち入ると、両者をつなぐものとしてリチャード・パイプス(Richard Pipes)もかなり言及していたのは<シオン賢人の議定書>だ。記憶に頼って大まかにしか書けないが、これは当時に刊行のもので、ロシア・十月革命の原因・主導力を「ユダヤの陰謀」に求める。又はそのような解釈を積極的に許す。かつ、その影響を受けたドイツを含む欧州人は「反ユダヤ人」意識を従来以上に強くもつに至り、ヒトラーもこれを利用した、また実践した、とされる(なお、いつぞや目にした中川八洋ブログも、この議定書(プロトコル)に言及していた)。
 理屈・理性ではない感情・情念の力を無視することはできないのであり、中世の<魔女狩り>もまた、理性・理屈を超えた「情念」あるいは「思い込み」の恐ろしさの表れかもしれない。
 現在の日本の悪弊または消極的に評価する点の全てまたは基本的な原因を、存在してはいない「コミンテルン」なるものに求めてはいけない。もっときちんと、背景・原因を、そして戦後日本の政治史と社会史等々を論述すべきだ。
 <左翼>は右翼・ファシスト・軍国主義者の策謀(ときにはアメリカ・CIAも出てくる)を怖れて警戒の言葉を発し、<右翼・保守>は左翼の「陰謀」に原因を求めて警戒と非難の言葉を繰り返す。
 要するに、そういう<保守と左翼>の二項対立的な発想の中で、左翼またはその中の社会主義・共産主義「思想」を代言するものとして、おそらく杉田水脈は(まだ好意的に解釈したとしてだが)、「コミンテルン」が息を吹き返しつつある、などと書いたのだろう。
 産経新聞編集部もまた、これを簡単にスルーしたと思われる。産経新聞社もまた、江崎道朗と同様に?、「コミンテルンの陰謀」史観に立っているとするならば、当然のことだ。
 共産主義あるいはマルクス主義・社会主義に関心を寄せるのは結構なことだが、簡単にこれらを「観念」化、「符号」化してはならない。
 歴史と政治は多様で、その因果関係もまた複雑多岐で、「程度・範囲・濃度」が様々にある。
 幼稚な戦後および現在の「知的」議論の実態を、杉田水脈の文章も、示しているように思われる。

1880/森下敏男「わが国におけるマルクス主義法学の終焉」(神戸法学雑誌)。

 アゴラなどで篠田英朗が長谷部恭男や木村草太らを批判しているらしいのは、あるいは篠田が「戦後憲法学」を批判しているらしいのは別の専門分野(国際法学)からする的はずれのもので、結局は同じグループ内の仲間うちの喧嘩のような印象を持ってきた(この欄でこの論争を取りあげたことがないのは興味を惹かなかったからだ)。
 篠田が批判し攻撃しているのが典型的に長谷部恭男だとすれば、長谷部は日本共産党員学者ではなく、自衛隊自体の合憲性まで否定してはいない。木村草太もまた日本共産党員学者ではない。
 闘うべきは、日本共産党員の、少し緩めれば日本共産党系の法学であり法学者だ。篠田は真の敵を知らなければならない。
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 ほんの最近に知って、一部は読んだ。以下に、注目が向けられてよい。
 森下敏夫「わが国におけるマルクス主義法学の終焉-そして民主主義法学の敗北-」。
 ネット上では、5部ほどに分けて、pdfファイル化されている。
 ①森下敏夫「…マルクス主義法学の終焉/上」(神戸法学雑誌64巻2号、2014.09)。
 www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/81000695.pdf
 ②森下敏夫「…マルクス主義法学の終焉/中」(神戸法学雑誌65巻1号、2015.06)。
 www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/81009060.pdf
 ③森下敏夫「…マルクス主義法学の終焉/下Ⅰ」(神戸法学雑誌65巻2号、2015.09)。
 www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/81009203.pdf
 ④森下敏夫「…マルクス主義法学の終焉/下Ⅱ」(神戸法学雑誌65巻4号、2016.03)。
 www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/81009465.pdf
 ⑤森下敏夫「…マルクス主義法学の終焉/下Ⅲ完」(神戸法学雑誌66巻1号、2016.06)。
 www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/81009556.pdf
 森下敏男、元神戸大学大学院法学研究科教授。
 私、秋月よりも、日本の「マルクス主義法学」について詳しそうだ。日本のこれが「民科法律部会」の会員たち(とくにその幹部たち)によって担われてきていること、かつまた日本共産党系の「マルクス主義」であることも、あっけらかんと前提として批判的分析がなされており、かつまた、マルクスの用語・議論を利用しての自説も展開されている。
 日本で<マルクス主義法学の終焉>がすでにあったのかどうかはまだ怪しいが、副題にいう「民主主義法学の敗北」だけは間違いないだろう。
 存在を知って原文を読みたいと感じていたが、ネット上で読めることを知った。
 これの内容を紹介するだけでも、多少の意味はある。今日までの日本の「マルクス主義」法学者=ほぼ日本共産党員=ほぼ「民主主義法学」を謳う者<民科法律部会の会員、の氏名だけでも、相当の数が言及されているようだ。

1697/篠田英朗・ほんとうの憲法(ちくま新書、2017)①。

 篠田英朗の「もし…明確化する」ならばという加憲条項案も問題が多い。
 篠田英朗・ほんとうの憲法(ちくま新書、2017)。
 「おわりに-9条改正に向けて」の最終行=「あとがき」の直前。
 「前二項の規定は、本条の目的にそった軍隊を含む組織の活動を禁止しない」。
 これが、著者・篠田英朗の、「かりに」九条三項を創設するとすればの案だ。おかしい。
 第一に、これでは、篠田のいう「自衛隊の合憲性を明確にするのであれば」という前提目的を達することができない。
 なぜならば、現在の・いまの自衛隊が「本条の目的にそった軍隊を含む組織」でありその活動が上にいう「…活動」であることの確証は何もない。
 むろん、篠田英朗によれば、現在の・いまの自衛隊はそのようなものなのだろう。私もまた、そうだと<解釈>する(但し、「軍隊を含む」との部分には大きな留保がつく)。
 しかし、そのように認識または<憲法解釈>をしない人たち・活動家・政治家等々がいるからこそ、問題なのだ。
 つまり、彼らは、現在の・いまの自衛隊は、「本条の目的にそった軍隊を含む組織」であるとは(おそらく絶対に)主張しない、容認しないのだ。
 かりにだが、上の条文案で本当に「加憲」されたとする場合、日本共産党や同党員憲法学者たちは、現在の・いまの自衛隊とその活動は「本条の目的にそった…組織」・「活動」ではないと、主張するに違いない。
 そもそもが、<九条の目的>の理解・認識・<憲法解釈>が異なるのだから、上のような条項ができたからといって、現在の・いまの自衛隊の合憲・違憲の問題が解消されるはずはないのだ。
 「自衛隊」という語・概念を用いないのは優れている?のかもしれないが、せっかくの篠田英朗の案は、現状を解決することには絶対にならない
 <憲法解釈>上の(かつ政治的な)論争を、さらに複雑にするだけだ。「戦力」不保持の明文条項を残したままでの、現在の・いまの自衛隊の合憲化という試みは、三浦瑠璃の言葉によれば、却って、<頓珍漢な議論を温存>することになる。
 全体として、篠田英朗の叙述、主張に反対しているのではない。
 現憲法の現状のままでの自衛隊合憲論、かつ九条二項削除論は、十分に読むに値するのだろうと思われる。そのかぎりで、勉強にもなるし、多くの人が読めばよいとも思われる。
 しかし、たまたま出版が5月安倍晋三発言の直後(しかもまだ校正中で追記可能?)だったためかもしれないが、上の案は、採用できない。
 他にも、「軍」概念をめぐって等々、憲法解釈論の観点からすれば、大いに疑問もある。第二以下を、さらに別に記す。

ギャラリー
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  • 1980/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史05④。
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  • 1978/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史05②。
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  • 1920/L・コワコフスキ著第三巻第四章第5節。
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  • 1916/S・フィツパトリク・ロシア革命(2017)⑳完。
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  • 1906/NYタイムズ2009.07.20の訃報-L・コワコフスキ。
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  • 1901/Leszek Kolakowski-初代クルーゲ賞受賞者。
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  • 1900/Leszek Kolakowski の写真。
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  • 1811/リチャード・パイプス逝去。
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  • 1734/独裁とトロツキー②-L・コワコフスキ著18章7節。
  • 1723/2017年秋-兵庫県西脇市/大島みち子の故郷。
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