秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

篠田正浩

0264/荒木和博・拉致-異常な国家の本質(2005)を読む。

 荒木和博・拉致-異常な国家の本質(勉誠出版、2005)は北朝鮮拉致被害者救出運動に密接に関与している人の本で、詳しい情報・当事者だからこその指摘・主張がある。
 それとともに興味を惹いたのは荒木の歴史観・戦争観だ(p.103-)。
 1.「20世紀の歴史に関する私の基本的見方」は同世紀の「最大の思想的害悪はマルクス・レーニン主義(科学的社会主義あるいは共産主義)であるということだ」。ずばり全く同感だ。
 荒木は根拠資料を示すことなく「この思想によって20世紀に命を失った人が億を下らないのは言うまでもない」と述べる(p.104)。いくつかの本に従って8000万~2億人と書いてきたようにが、<少なくとも1億人>以上というのは、おさらく確実なところだろう。
 2.敗戦の原因につき、私はきちんと整理して考えたことはないが、長らく、「悪い戦争」又は「侵略戦争」だったから負けたのではなく、結局は軍事力等を支える技術・科学を含めての「国力の差」だった、と感じてきたように思う。
 荒木はこう言う-「侵略戦争をやったから負けた」、「陸軍が暴走し勝算のない戦いに突入し物量の差で負けた」とかなのではなく、a「当時の政治家や軍の指導層の切迫感のなさ、無責任」と、b「それに乗じたゾルゲ・尾崎秀実などの謀略の成功」にあった(p.105)。
 また言う-「日本の最大の過ちは国家としての明確な戦争指導方針を欠いたこと」だ、あの戦争は「謀略に乗せられ、なし崩し的に突入せざるをえなくなった、失敗した自衛戦争」だった(p.107)。
 中西輝政等も言及しているが、中国国民党を同共産党と組ませて抗日に向かわせたコミンテルンの「戦略」(又は謀略)、米国ルーズベルト政権に入り込んでいた共産主義者たちの反日・親中姿勢等々が<日本敗戦>の大きな原因だったようだ。おそらくは上の荒木の認識は、教科書的な認識ではない。
 しかし、戦時中にもまた「共産主義という悪魔」の謀略があったことはたしかで、<情報戦争>に負けた、彼らの<情報謀略>に勝てなかった、という側面があったのは事実だろう。
 ソ連共産党のエージェント(スパイ)だったとされるゾルゲにつき、篠田正浩監督の映画<スパイ・ゾルゲ>(2003)は、観ていないのだが、彼と尾崎秀実らをドイツ・ナチスや日本軍国主義と闘った<ヒーロー>の如く描いているらしい(6/18の潮匡人氏に関する部分参照)。そのような映画の製作・上映もまた、今日の、一つの<情報謀略>ではないかと思われる。

0232/潮匡人・司馬史観と太平洋戦争(PHP新書、2007)をほんの少し読む。

 潮匡人・司馬史観と太平洋戦争(PHP新書、2007.07)を一昨日に買って第二章「「昭和」に通底する司馬史観の陰影」の最初の方だけをとりあえず読んだ。
 <司馬史観>を問題にする前に半藤一利らの<歴史観>を批判している。叙述の順序どおりに辿るとこうだ。
 1.2005年7/18テレビ東京の戦後60年特別企画番組(企画協力・半藤一利)には新鮮さはなく、「陸軍悪玉・海軍善玉という通俗的歴史観に彩られ」、「反戦平和教」の健在を示す「一般人の声」の紹介もあった。
 2.昨2006年8/15民放各局は早朝からヘリを飛ばして小泉首相の靖国神社参拝を報道した。しかし、何故、正午からの政府主催・全国戦没者追悼式、すなわち「両陛下も頭を垂れた厳粛な黙祷の模様」は中継しなかったのか。「戦没者の冥福を祈る」姿勢のないテレビ人が首相靖国参拝を批判するとは「不公正を通り越して不潔」だ。
 3.昨2006年8/07NHK「硫黄島玉砕戦」は「戦争の惨たらしさ」だけを強調。
 4.昨2006年8/12NHK週刊こどもニュースは戦争の原因についての質問に「資源の乏しい日本…が、資源のある中国に攻め込み、そして戦争に」なった、と「古びた帝国主義戦争史観」による「史実からも遠い」回答をした。
 5.昨2006年8/13NHK「日中戦争」は南京事件に触れたが「便衣兵自体が国際法違反」で「ハーグ条約の保護を受ける資格がない」ことを述べず、取材協力者リストには笠原十九司吉田裕各氏などの<大虐殺派>と秦郁彦氏らの<中間派>しか名前がなかった。
 6.篠田正浩監督の映画「スパイ・ゾルゲ」を観たが、篠田の「希望」とは「この世に国家なんか存在しない」状態で、「二〇世紀が生んだ夢と理想」とはゾルゲの最後の言葉「国際共産主義万歳!」にある「国際共産主義」を指すようだ。佐藤忠男執筆の映画パンフ中の文には、ゾルゲは「ドイツのナチズムと日本の軍国主義の打倒のために行動」した、とある。この作品の「バランス感覚には疑問を禁じ得ない」。
 7.加藤周一は「欲しがりません勝つまでは」や「撃ちてし止まん」の戦時中の標語を日本政府が作ったと書いているが、これらは朝日新聞等による「国民決意の標語」募集の入選作だ。
 8.中央公論2005年9・10・11月号は「戦争責任」という視点による連続特集企画だが、この視点自体が「一定の立場に偏して」はいないか。
 9.文藝春秋2005年11月号も大座談会「日本敗れたり-あの戦争になぜ負けたのか」で対抗した。発言者は半藤一利・保阪正康・中西輝政・加藤陽子・福田和也・戸高一成の6名(のち文春新書化)だが、この座談会も陸軍悪玉史観
で、また、軍事学的知識が不十分。
 福田和也は「海軍の草鹿任一」を揶揄している。また、「どこか別の国の戦争を語るかのような彼らの姿勢」に違和感を覚えた

 10.半藤一利・昭和史(平凡社)は、ア.「広田内閣がやったことは全部とんでもないことばかり」等と広田弘毅内閣を断罪するが、昭和20年までの「昭和史」で広田内閣のみを批判するのは妥当でなく、「公正さを欠いている」。仮に一人挙げるなら、近衛文麿だろう。
 イ.南京事件につき30万という「大虐殺説」は否定するが、「南京で日本軍による大量の「虐殺」と各種の非行事件の起きたことは動かせない事実であり、私は日本人のひとりとして、中国国民に心からお詫びしたい」、「三万人強ということになりましょうか」・「だんだん自己嫌悪に陥ります」と書く。だが根拠とする陸軍関係者の文献は「不当」な行為だったと認めてはいないし、上の後半は「文字通り、自虐史観」だ。
 ウ.ミッドウェー海戦に関する「運命の五分間」は定説なのに勝手に否定し、さらに、草鹿龍之介元海軍中将を誹謗・罵倒している。半藤の理解が正しいならば、文藝春秋発行の別の昭和史に関する本の中の叙述と矛盾し、後者も訂正すべきだ。
 エ.「何とアホな戦争をしたものか」との締め括りには、「どこか別の国の歴史を振り返っているかのようだ。同胞の歩みを想う姿勢は微塵も感じられない」。
 このあと、潮氏は憲法九条に関する岩波冊子上の半藤氏の文章を批判しているが、別に扱う。
 11.保阪正康・あの戦争は何だったのか(新潮新書)も半藤の本と同じ認識が多いし、「通信傍受や暗号」に関する「基礎知識」もない。「原爆を落とされ、負けた。…アメリカに占領されてよかったという見方もできる」と書く、この本がなぜベストセラーになるのか。大東亜戦争肯定論者に「戦後、日本で安穏と暮らしながら、臆面もなくよく言うよ」と書いているが、保阪自身もまた「日本で安穏と暮らし」てきたのでないか。
 このあと「司馬史観」に論及していっているが、別に扱うことにしよう。
 わずか30頁分の紹介に長文を費やしたが、
NHKを含むマスコミのいいかげんさを批判したくなるのも分かる。
 また、昭和史(戦前)の細かなことや議論は知らないが、私は半藤一利と保阪正康を信用していないので、どちらの本も読んでいないが、潮の批判的指摘を快く感じる。また、おそらくは当たっているのではないかと思われる(なお、草鹿任一、草鹿龍之介
両氏は従兄弟の関係で、いずれも著者・潮氏の母方の親戚らしい)。
 なぜか半藤一利に関連する書き込みが続いた。
ギャラリー
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