昨日28日の夕方のTBS/毎日系のローカルニュースを偶々観ていたら、「年金問題と政治とカネを最大の争点とする参議院選挙が…」とアナウンサーが語りはじめた。
 「年金問題と政治とカネを最大の争点」とは、いったい誰が決めたのだろう。原稿を書いた放送記者は、何を根拠にこんなことを書けるのだろう。
 世論調査によると、国民の関心あるテーマは…と回答するかもしれない。しかし、<年金問題>や<政治とカネ>に国民の関心が向くように誘導する記事を書き放送をして、これらが<最大の争点>であるかのごとく感じさせたのは新聞社・放送局というマスコミそのものではないか(正確にはたぶん一部を除く)。
 自分たちで煽っておいて、平然と「年金問題と政治とカネを最大の争点とする…」とさも客観的な報道であるかの如く装う。ほとんどのマスコミは<犯罪的>で、国家・国民に対して<弊害>を撒き散らしている。
 今日29日の朝日新聞社説をウェブ上で読んだ。むろん、ひどいものだ。朝日新聞は、投票前の最後の戦術として、若者たちに投票させる、という主張をすることにしたようだ。見出しは、「若者たちへ―その1票に未来がかかる」。
 若者たちに投票を呼びかけることは悪いことではない。問題は、その投票の際に「二つの視点」から考えてほしいとする、その二つの視点だ。
 朝日社説によれば、第一は、「世の中に広がる格差社会の波を、若い世代こそが大きくかぶっている」こと、第二は「年金問題」だ。
 自民党に投票するな、民主党に投票しろ、とはどこにも書いていない。しかし、<年金>問題や<格差>問題を最も取り上げて自民党を批判していたのはどの政党だったのか。
 この社説は、民主党への投票を「若者たち」に呼びかけているにほとんど等しい。自民党の劣勢ぶりをさらに決定的にするためには、前回は30%台にとどまった20歳代の投票率を上げる必要がある、と<政略会議>で決めたのだろうか。
 年金問題についてもうあえて触れないが、「世の中に広がる格差社会の波」という現象の存在の客観さとそれが社会・歴史全体から見て消極的に評価されるべきであるとの価値判断の正しさ、およびその現象がかりにあるとして、それが安倍晋三・自民党与党内閣の政策に原因があるということの根拠づけ、を朝日はきちんと報道してきたのか。あるいは、社説子は自信を持って説明できるのか
 「若者たち」むけとはいえ、投票当日の社説に、基本的な安全保障問題、憲法問題、経済・財政問題に何ら触れることができない朝日新聞。日本国民を安易で適当な思考へと導いて自分たちの<政略>に利用しようとしているマスコミの筆頭が、じつはマスコミではなく候補者を立てない「政治団体」に他ならない朝日新聞だ。恥を知れ、と何度も言いたい
 大嶽秀夫・日本政治の対立軸(中公新書)p.30によると、日本国民にはかつて既成の政治(家)に反発する非・反政治性と<政治を「あそび」の一つとみなす…無責任な態度>があった。こうした風潮は現在でもなくなっていないだろう。
 そしてこのような風潮を醸成したのは、既成の政治(家)を批判し、ときどきの<ジャーナリスティックな>国民多数の関心を惹きそうな話題ばかりを選んで報道してきた日本のマスコミだった、と考えられる。若者たちに限られない、先進国では異例の投票率の低さは、そもそも日本のマスコミの政治に対するスタンス、政治に関する報道ぶりによるところが大きい、というのが私見だ。
 そのいいかげんさ、無責任ぶりを、今朝の朝日新聞もまごうことなく示している。