秋月瑛二の「自由」つぶやき日記

政治・社会・思想-反日本共産党・反共産主義

宮中三殿

0492/天皇の祭祀行為は宮中や宮中三殿に限られない。

 伊勢神宮式年遷宮広報本部・日本の源郷-伊勢神宮(2007.07)という計22頁の小冊子のp.3の冒頭の言葉は次のとおり。
 「神宮のおまつりは天皇陛下の祭祀です」。こうまで明記してあるのはむしろ珍しいように思う。
 既述だが、式年遷宮の準備に今上天皇陛下の「聴許」があったことを宮内庁長官が(伊勢)神宮に公文書で伝えたり、<勅祭社>という、天皇(・皇室)の「勅使」が祭祀者(祭祀主宰者)となるとみられる神社(・大社・神宮)があることも、少なくともいくつかの重要な祭祀は個々の神社(・大社・神宮)ではなく天皇(・皇室)自身の行為であることを示しているだろう。
 また、かりに天皇(・皇室)が形式的には祭祀者(祭祀主宰者)にならなくとも、皇祖・天照皇大神を祀り国家(・国民)の弥栄を祈る神社等の祭祀は、天皇(・皇室)に「代わって」行われている、という性格・位置づけのものも多くあると考えられる。
 以上で言いたいのは、天皇(・皇室)の祭祀は宮中でのみ行われるのではない、ということだ。
 また、皇居での祭祀は「宮中三殿」で行われるものに限らない。例えば、皇居内には稲を栽培・耕作する「御田」があるようであり、天皇陛下ご自身がそこでの稲作にかかわり、その「御初穂」は、伊勢神宮の「御正宮」の「玉垣」(唯一神明造の正殿を囲む板塀のことと推察される)に懸けられる(上記小冊子p.4-「懸税」というらしい)。
 ここで言いたいのは、皇居内での祭祀は「宮中三殿」という意味での「宮中」祭祀に限られない、ということだ。
 原武史は<宮中祭祀廃止>を(主観的には皇室のために?)主張しているようだが、天皇(・皇室)に関する本を数冊も書いているなら、以上のことくらいは知っているだろう。しかして、<宮中祭祀>の廃止だけで問題は解決するのか? 皇居以外で行われ続けている天皇(・皇室)主宰の祭祀はいったいどうなるのか? どのようにすべきと考えているのか? 東京=皇居で行われる祭祀は「宮中三殿」以外の場所で行われるものもあるが、<宮中祭祀廃止>論はそれらをどう考えているのか?
 簡単にあるいは単純に<宮中祭祀廃止>を主張できないのではないか。簡単・単純な<天皇制度>解体論者でないかぎりは。
 なお、伊勢神宮での祭祀が「天皇陛下の祭祀」だとして、そのような行為もまた、現行法制上は天皇の<私的行為>とされる。(神道も<宗教>だとかりにして、の話だが)宗教的性格を帯びている物・施設の所有権が天皇(・皇室)にある=天皇(・皇室)の「私有財産」とされているのと同じく、<宗教>性を帯びていれば全て<私的行為>とされているのだ。
 既述のように奇妙だと思うが、園部逸夫・皇室制度を考える(中央公論新社)等を素材にして、遅れているが別の回で、天皇(・皇室)の「行為」について整理しておくつもりだ。

0480/天皇・神道・政教分離-つづき4。園部逸夫・皇室制度(2007)。

 皇室・神道・政教分離の関係の問題(・現況)のいくつかにつき、以下、園部逸夫・皇室制度を考える(中央公論新社、2007)による。園部逸夫(1929~)は元大学(法学部)教授・下級裁判所裁判官・大学教授・最高裁裁判官・大学教授といった経歴で、女系天皇容認の旨の<皇室典範有識者会議>の重要メンバーだったことで評判を悪くした面はあるが、皇室にかかわる現行(法)制度の説明や関係議論・学説の整理という点では少なくとも信頼できると考えられる。
 〇皇室の「財産」 敗戦前又は新憲法以前には天皇(・皇族)は皇居も含めて広く<私有財産>を有していたようだが、GHQの方針や新憲法施行の結果、天皇(・皇室)の①「公的活動」にかかわる財産や②「生活」にかかわる財産、③「皇室とともに伝えられてきた」財産はほとんど国有財産とされる。より正確には、国有財産は「行政財産」と「普通財産」に二分されるが、前者「行政財産」の一種としての「皇室用財産」として、天皇・皇室の利用に供されている(国有財産法による。「行政財産」には他に「公共用財産」・「公用財産」等の種別がある)。
 園部によると、①・②として皇居・御所・御用邸・御用地があり、「宮殿」は①に、「京都御所、桂離宮・修学院離宮、正倉院、陵墓」等は③に位置づけられる。天皇・皇室の利用の仕方に制限がない、という訳ではもちろん、ない。
 一方、天皇又は皇族の「純然たる私産」がなおある。①「ご由緒物」と②「お身の廻り品」だ(他に③現金もある)。前者の①に、「三種の神器、壺切りの御剣、宮中三殿、東山御文庫、皇后陛下のの宝冠類、…ご肖像画、屏風類」等がある。処分(とくに①についてだろう)には憲法8条による法的制約がある(以上、園部p.277-281、p.274)。
 ここでコメントを挿む。「三種の神器」と「宮中三殿」、とくに後者が天皇(等?)の<私有財産>とされていることは重要なポイントだ。「宮中三殿」の三殿の再述はしないが、いずれも<ご神体>が存置された<祭祀>の場所だ。そしてこれが国有財産(>皇室用財産)とされていないのは、その<宗教的>性格によるものと推察される(園部による明記はない)。政教分離原則により、神道(という<宗教>)関係施設を直接に国有にはできない、ということなのだろう。
 だが、仔細は知らないが、皇居の中に、そして「宮殿」の内部又は直近に「宮中三殿」はある筈だ(だからこそ「宮中…」と称するのだろう)。だとすれば、国有財産に囲まれて、それに保護されるように天皇(等?)の<私有財産>があることになる。
 さらに厳密に考えると「宮中三殿」の敷地(土地)は国有財産なのか「私産」なのか不明なのだが、敷地(土地)も<私有財産>だとすると、そのような<宗教用>の土地が戦後に天皇(・皇室)に無償で払い下げられたことになるが、それは特定の<宗教>を優遇したことにならないのか?
 また、「宮中三殿」の敷地(土地)は国有財産で建造物(上物)だけが<私有財産>なのだとすると、天皇(・皇室)は何らかの権原がなければその敷地(土地)を利用できない筈で、国有財産たる土地を無償で利用できる権利(無償の借地権(賃借権又は地上権))??、それとも国有財産の「占用(又は使用)許可」??)が国から付与されていることになる。その利用が<宗教>儀礼(=祭祀)だとすると、そのような優遇は、やはり特定の<宗教>を優遇していることになり、政教分離原則に反しないのか?
 <大ウソ>が基本にあると<細かなウソ>に分解されていくもので、「宮中三殿」(かりに建造物だけでも)は天皇(・皇室)の私有財産だと割り切ることによって、政教分離原則との抵触をすっきりと回避できるとは、とても考えられない。やはり、現憲法では国家・国民統合の象徴とされる天皇(・皇室)が歴史的・伝統的に10数世紀を超えて長らく行ってきた祭祀のための施設だ、という点を考慮し、強調しないかぎりは、圧倒的に広い国有財産たる区域の中に私有財産の存在を認める根拠を、あるいは(土地も国有財産の場合は)国有財産たる土地を「特権」的に利用して、その上に建つ<宗教>施設で祭祀を行えることの根拠を、説明できないのではないか。
 どこかにウソ(あるいは「無理」)がある。現行の制度・考え方はどこか奇妙だ、と感じるのだが…。なおも、別の回に続ける。<4/28に一部加筆・修正した。>
ギャラリー
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  • 2085/平川祐弘・新潮45/2017年8月号②。
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  • 2081/A・ダマシオ・デカルトの誤り(1994, 2005)②。
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  • 1982/日本会議・「右翼」と日本・天皇の歴史05⑤。
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  • 1920/L・コワコフスキ著第三巻第四章第5節。
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